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17話 話は転がり

 わなわなと震えるメリュジアに、あんぐりと顔をあげるキリト、天を仰ぐゼータと三者三様のまま沈黙が続く。……そんなに変なこと言ったかしら。


「……………ええと、クリス」


「なに?ゼータ」


 空から私へと視線を移したゼータ。

 ……最初に会ったときみたいな声の硬さね。これはきっと怒ってるわ。でも何に怒る必要があるのかしら。


「彼女が、君を、閉じ込めた?」


「あっ。そこ?いやそこは大した話じゃなくて」

「「大した話じゃない!?」」


 本題じゃないところに引っかかられてしまった。慌てて手を振って話を戻そうとしたら、今度はゼータとキリトが身を乗り出してくる。

 ……ここ、食堂なんだけど。


「大したことじゃないわよ。どうせ取り巻きの子にお願いして、物理的に鍵をかけるだけしかできないんだから。私が言いたかったのは、ゼータのことを悪く言えるような腕前じゃないんだから放っとけって話」


 ようやく本題に戻れた。そう、私が気に食わないのはそこだけだ。

 もちろん魔法を使えれば人を悪く言っていいわけじゃないのは分かってるけど、()()()を悪く言われて右から左に聞き流したくなかっただけだ。


 ……でも確かに閉じ込めた話は一言よけいだったかしら。

 いや、でもそれを言わないと私がただ向こうの方が弱いから放っておけっていう性格の悪い人間になっちゃうしなぁ……。どういえばよかったのかしら。



 更にその状況に火種を放り込む男がいた。

 半笑いの顔をしたキリトはわざとらしく肩を落として見せる。


「おお、まさか親愛なるメリュジア嬢が同学の少女を閉じ込めるなんて……」


「っ!!そ、そんな……!キリト様、私そんなことしてません。彼女が嘘をついているんです!」


 涙を瞳にたたえながら、メリュジアが私を指差してくる。


「まあ、嘘にしたいっていうなら閉じ込めたは私の嘘ってことにしてもいいけど」


 別に今さらの話だ。孤児院で何か起きるたびに原因をなすりつけられてきたのよこっちは。


 言いたいことを言い終えてさて食事に戻ろうかと思ったところで、フォークの手を止めさせたのは今度はゼータの方だった。


「ところでクリス」

「なに?」


「君がその気になれば僕にしたように彼女の魔法を高めることもできるのかい?」



「……どうかしら。前にあなたにやったようなつまりの解消以外にもいくつかやりかたは知ってるけど」


 ティターンは私が一人でも生きていけるように、色々なことを教えてくれた。


 魔力が弱った時に飲んだ方がいい薬草とか、光と闇の魔力の調和を保つ方法とか。

 果たして聞くかはわからないが聞きかじった知識はまだあった。


「なら、彼女にもそれを教えてあげればどうだ?」


「私は別に構わないけど……」


 彼女の方が首を縦に振らないんじゃないだろうか。ちらりとメリュジアの方を見れば案の定唇をわなわなと震わせて、かと思えば目を真っ赤にさせてハンカチを押し当てた。


「っ!ずいぶんと残酷なことをおっしゃいますのね。私に対して流布を振り撒くような方に頭を下げろなんて。あなたに人の心というのはないのかしら?」


「落ちこぼれとか言ってのけた人がそれを言うのも人の心がないと思うけど……っと」


 しまった。思わず口に出してしまった。

 さすがにこれは私が悪い。じろりとにらみつけられて目をそらす。


「そもそも、まだ学園に入ってまもない生徒が他人の魔力を伸ばせるなどと!!そんなことあるわけないでしょう!」


「いや、それはどうかな」


 反論をしたのはキリトだった。

 気がつけばこのテーブルだけでなく、他の席からもちらほらと視線が集まっている。……これだけ騒げば当然か。


 そしてその視線をすべて受け止めながら、キリトは仮面奥でウィンクをした。


「なぁに。俺はクリス嬢とキリトの言葉を信じるからさ。……疑うっていうなら証明すればいいかい?」


「証明って……何をでしょうか、キリトさま?」


「そんなの決まっているだろう?」


 ちらりと彼の目線が私の方へと向き、そのまま大勢の前で高らかに宣言をされた。


「クリス嬢の力が本物で、ゼータが落ちこぼれでなければ君の憂いは解消されるだろう?ならそれをメリュジア嬢に証明してみせよう!……今度の中間試験でね!」


 …………。

 …………これもしかして、私も巻き込まれてるわね?

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