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16話 乱入者と無礼な言葉


「と、と、友だち?私とゼータが?」


 間違いなく周りが見たら不審者だろう。


 人の目が多い食堂だというのに、そわそわ、キョロキョロと辺りを見ては目線をもどして、そらして。


「そ、そうだが……ごめん、迷惑だったか」

「そんなことない!」


 とっさに出た声は大きすぎて、食堂のあちこちからちらほらと人の目が集まってくる。ようやく少し我にかえって、私は浮かしかけていた腰を椅子にもどした。



「……そんなことないわ。ええと、私友だちなんて十年以上出来てなかったから、分からなくて……その、ありがとう」


「う、うん。どういたしまして……でいいのかな」



「うっわ、甘酸っぱーい」

「「キリト!!」」


 ゼータと重なった声に、キリトはけらけらと笑いを隠さない。


「だって今時プライマリースクールでもそんなやりとりしないだろ」


「うぐ……」


 反論ができず言葉をつまらせているところで。


「あらあら、どなたかと思えばキリト様じゃございませんこと!?」


 とはつらつとした声が響いてくる。



 名前を呼ばれたキリトはといえば、一瞬大きく顔をしかめてから笑みを浮かべてそちらを見た。


「おや、これはこれは。麗しきメリュジア嬢ではありませんか!」


 メリュジアと呼ばれた少女は私と同じ緑色の宝石を仮面につけている。


 同じクラスだがちゃんと言葉を交わしたことはないが、よく女子生徒を取り巻きに何人か連れている……おそらくは貴族生まれの女子生徒だった。


「この広い食堂でお会いできるなんてなんて幸運なんでしょう。よろしければこちらでわたくしたちとご一緒しませんこと?」


「嬉しい申し出だけれどね、あいにく今日は友人たちと食事をしているもので。またの機会を得てもよろしいでしょうか?レディ」


 …………。

 別にそっちに行ってもいいけど。


 あ、でもそれだとゼータも行かなきゃいけないか。


 そう思ってゼータの方を見れば、居心地が悪そうにしている顔がちょうどこちらを見ていた。そうしている間にもメリュジアとキリトのやり取りは続く。



「あら、キリト様はお心が広いのね。そんな魔法をろくに扱えない落ちこぼれを、友だちと呼ぶなんて」


 …………。

 ………………は?


「……やめてください。メリュジア嬢。彼は私にとってよき友人です」

「でも才能があるとは言わないのね。そういう正直なところ、好感が持てますわ」


 あちらのやり取りも段々と温度が下がっている気がするが、そんなもの構っていられない。うつむいてしまったゼータに顔を近づける。



「ゼータ、大丈夫?」


 口にしてから大丈夫じゃないかもな、と思った。でもこういう時になんて声をかければいいのだろうか。


「……大丈夫だ」


 ほら、案の定の返事。

 今にも死にそうなくらい顔を青くしておいて。



「そうは見えないわよ。あんなの気にしちゃダメよ」


 なるべく声をひそめて元気づける。……まあ別に話してるのがバレてもいいんだけど。そもそも私の存在を見て見ぬ振りしてそうだものね、あの人。


「……だが、彼女のいうことは事実だ。私が魔法も使えない落ちこぼれだという」


 そこでますます落ち込まれても困る。

 ちょっとでも元気づける方法……そうでなくともメリュジアの言葉を気にしないで済む方法……あ、そうだ。


 メリュジアの方を指さしてにこりと笑う。


「大体あの人もいうほどすごいわけじゃないもの。最初の授業で私に風魔法の出力で負けて、私を閉じ込めたのがあんたとの出会いだったのよ?」


「「………………」」


 ん?


 気がついたらやけに静かになった気がする。

 不思議に思って見てみれば、ゼータもキリトもまじまじとこちらを見ている。

 いえいえ、キリト。あんたは私じゃなくてメリュジアの方を……。


「…………っ!!!いい度胸をしておりますわね……?」


 当のメリュジアがこちらを顔を真っ赤にして睨みつけている。いや、やられたことを話しただけでその顔をされるいわれはないんだけど!?

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