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芝浦 真理枝④

真理枝視点です。


 私はすぐさま母と共に父が運び込まれた病院へと向かった。

道中……母から聞いたんだけど……。

父はどうやら横断歩道を渡っていた所に、猛スピードで突っ込んできた車に撥ねられたらしい……。

しかもその運転手は飲酒運転らしく……まともに歩くことすらままならなかったとか……。


-------------------------------------


「あなた……あなたぁぁぁ!!」


 病院に赴き、看護婦さんに父のいる病室へと案内されるも……すでに父は息を引き取っていた。

母は膝から崩れて号泣し……私自身は無言のまま立ち尽くしていた。

病室には悲しみと悔しさがにじみ出た重苦しい空気が流れ……医者や看護婦は空気に耐え兼ねて病室を出て行った……。


「……」


 客観的に見れば……私は父の死に悲しむ不幸な娘に見えるだろう……。

まあ事実……悲しくはある。

だけどそれ以上に……喜びで胸が高鳴っている……。

だってよく考えてみて……交通事故……しかも相手は飲酒運転……。

つまりは……父の生命保険どころか……莫大な慰謝料が我が家に入ってくるってことでしょ?

そうなったら……子供を育てる環境を整えるのに十分すぎる金額に到達する。


「ぷっ! く……」


 天は私を見放さなかった……。

不謹慎だから抑えているけれど……お腹の底から笑いがこみあげてくる……。

1度は絶望に沈んでしまった私の未来が……ほんのりと明るみを取り戻していくのが見えたような気がした……。

父のことは残念だけど……幸せになるためには、多少の犠牲はやむを得ないの。

許してね? お父さん。


-------------------------------------


 父の葬儀後……私は速やかに行動を開始した。

強姦事件を起こしたサル……もとい、ツムジ君は転校したらしいけど……ネット内で偽善者ぶる特定班によって住所や転校先は常に晒されているので、見つけ出すのはそれほど難しくはなかった。

あのクソ女はすでに精神病棟で入院し、父親の方は仕事で家を空けることが多い……近所の人の話では……人間関係も崩壊しているようで、友人どころか近寄る人間すらいない……。

そんなツムジ君は、ろくに学校にも行かず……自宅で引きこもりをしているらしい……。


 ピンポーン……ピンポーン……。


「何? おばさん……」


 インターホンをしばらく連打していると……汚らしい服に身を包んだツムジ君がドアを開けてくれた。

髪はボサボサで、体全体が丸くなって完全なる肥満と化している。

若干体も臭うし……顔も10代とは思えないほどひどく老け込んでいる……ひげも濃いし……。

もう第一印象だけで、今の彼がどれだけ不摂生な生活を送っているのか手に取る様にわかる。

これがかつてのツムジ君だなんて、本気で信じられないわ……。


「ねぇボク? 私とちょっとしたストレス発散しない?」


 私はわざとらしく胸元の衣服をずらし……大きな胸の証とも言える谷間を彼に見せびらかした。


「……」


 テンプレートな色仕掛けだけど……10代の男子にはこの程度の刺激でも十分通用するみたいね。

わかりやすく鼻を伸ばして、私の谷間を覗こうとしてくる……。

私は追い打ちを掛けるようと、ツムジ君の手を掴み……私の胸を生で揉ませてやった。


「いっいくらだ?」


 胸1つで、ツムジ君は簡単に堕ちた……。

つくづく男と言うのは単純でバカね……。


「お金なんていらないわ……ただ私とシテくれたら良いだけだから」


「ほぉ……」


「それに私……子供ができない体だから……避妊する必要もないわよ?」


 もちろん嘘だ。

こうでも言わないと、種を提供してくれないだろうし……。


「マジ!? タダで女と生でヤリ放題!?」


「そうよ……どうする?」


「へへへ……いいぜ? これからたっぷりと可愛がってやるからよぉ……」


 こうしてなんともあっけなく、私はツムジ君と関係を持つことに成功した。

かつて愛した人とはいえ……こんな不細工なサルに体を提供するのは心底吐きそうだ。

あんなに快感だった行為も……今となってはただ苦痛なだけ……。

だけど……これも新たな王子様を迎えるため……。

今はとにかく耐えるしかない……。


-------------------------------------


 それ以降……私は定期的にツムジ君の元へと通い続け、種を提供してもらった。

そして半年後……。


「やった……やったわ!」


 体が怠いと思い、まさかと思って妊娠検査薬で調べると……見事に陽性だった。

念のため、産婦人科にも行ったけど……今度こそ間違いなく妊娠していると診断された。


「ついに……ついに……」


 あまりの喜びに体中が震えあがった……。

今、私のお腹に……私を幸せにしてくれる王子様が宿っている……。

まだこの時点では、性別なんてわからないけれど……万が一、女の子だったとしても大丈夫。

この多様性の時代……金さえあれば、性別なんてどうにでもなる……。

フフフ……この子さえいれば、もうサルなんて用はない。

連絡先をブロックすれば、それでおしまい……。

もう私のツムジ君は死んだの……。

これからは過去を振り返らず、新しい未来に向かって歩き始めるの。


-------------------------------------


「お母さん……私……妊娠したの……」


「えっ!?」


 私はすぐさま妊娠の事実をお母さんに告げた。

お父さんの保険金や加害者の慰謝料を握っているのはお母さんだし……出産までのフォローだって必要だしね……。


「黙っていてごめん……実は私、SNSで知り合った男性と交際していたの。

でも妊娠したことを告げたら逃げられちゃって……本当にごめんなさい」


「……」


「でもね? 子供には罪はないから……この子は私の手で育てたいの。

だからお母さん……そばにいて支えてほしいの! お願い!!」


 私は頭を床にこすりつけて土下座し……自分なりの誠意を見せた。

私は本気だと……真剣にこの子を育てたいと……お母さんに知ってもらうために……。


「……わかった。 お前がそこまで言うなら、お母さんも協力するわ」


「あっありがとう……お母さん!」


 こうして私はお母さんの協力を得て、出産に向かいつつ子育ての環境も準備し始めた。

最初は少し渋い顔をしていたお母さんだったけど……やはり2人目の孫が可愛いのか、次第に積極的な協力を見せるようになっていった。


-------------------------------------


 数ヶ月後……。


「おめでとうございます……元気な男の子ですよ」


 数時間に及ぶ”戦い”の末……私は無事に元気な男の子を出産することができた……。


「よく頑張ったわね……」


 お母さんも孫の誕生に涙を流して喜んでいた……。

まあ当然と言えば当然だけどね……。


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 生まれてきた子は母によって砂矢すなやと名付けられた。

本当は私がもっと王子にふさわしい名前を付けたかったんだけど……母に認めてもらえずに終わってしまった。

でもまあ良い……。

これから砂矢はすくすく育っていき……そして私の小さな王子様とし、私と永遠の愛を歌い続けるのよ。


-------------------------------------


「フフフ……砂矢は本当に可愛いわね……」


 砂矢は日が過ぎ去るに連れて徐々に顔立ちが整い始めてきた。

その顔はまさに私が恋焦がれていたかつてのツムジ君の生き写しだ。

このまま数年待てば……ツムジ君と同じ……いえ、それ以上に愛しい王子様へと成長することでしょうね……。


「あうぅ……」


 私にとって2度目の子育て……だけど、葉とは全く違う物が砂矢にはある。

親子の愛を超えた真の愛……この子は私と愛し合うために生まれてきたの。

この子に比べたら……もう葉なんてカスも同然……ホント、生んで損した気分……。

まあ今はもうどうでも良いわ……。

こうして私の手に、砂矢という王子様がいるのだもの……今は2人の幸せだけを考えないと……。


-------------------------------------


 砂矢の誕生と共に開かれ始めた新たな未来……。

今度こそ幸せになろうと……私は砂矢に愛情を注ぎ続けた。

父が亡くなってお店の経営は危ないけれど……それも保険金と慰謝料があるので子育てに支障はない。

そもそも私に働いている暇はない……。

今は砂矢を育てることが最優先……。

そしてこの子を私の理想の王子様に仕立て上げ、いずれ2人は結ばれるの……。

そんな夢を見ていたある日……。


-------------------------------------


「……」


 砂矢を寝かせた私は束の間の休息を居間で取っていたんだけど……そこへ母が入ってきた。

それはどうでも良かったんだけど……なんか母の顔が暗くよどんでいるように見える。


「どっどうかしたの?」


「……」


 母は私の問いかけを無視し、愛用の椅子に腰を掛けた。


「真理枝……話があるの……」


「なっ何? 急に……」


「これは……どういうこと?」


 母はおもむろに自分のスマホを操作すると、私に画面を突き付けてきた。

そこに映し出されていたのは……。


『レロォ……はむ……』


「!!!」


 そこには……実家の一室で男のモノを赤らめた顔で舐めている私自身の姿が映っていた。

その相手と言うのは……。


「砂矢ぁ……」


 私の王子様である砂矢だ。

……そう。

私は砂矢への抑えきれない愛と欲情に駆られて、ついつい砂矢のできたばかりのモノを舌で堪能してしまった……。

本当は6歳くらいまで我慢しようと思っていたけど……仕方ないじゃない。

オムツを替えている時ではあったけれど……目の前に愛しい人のモノがあれば、女なら誰だって味わいたくなるものでしょう?


「これは……」


「3ヶ月くらい前から砂矢を育てているあんたの様子がどこかおかしく見えてね……。

気になったから機械に詳しい知人に頼んでカメラを設置してもらったんだよ」


「なっ!」


「あんた……自分が何をしたのかわかっているの?

しかも1度や2度じゃない……何度もこんなことを……」


「いや……っていうか、これ盗撮じゃん!

いくら親子だからってプライバシーってもんがあるでしょう!?」


「私が私の家にカメラを仕掛けて何か問題があるの?

だいたい……生まれて間もない我が子にこんな最低な真似をしておいて……どの口がプライバシーなんて言葉を吐けるんだい?」


「最低って……何が最低なの?

こんなの頬へのキスと変わらないじゃない。

ただのスキンシップよ……」


「何がスキンシップよ……汚らわしい!!

仮にそうだったとしても……これはどう説明する気!?」


 母は再度スマホを操作し、私の目の前に突き付けてきた。


『んぁ……いい……』


「ちょっ!」


 そこに映っていた私は一糸まとわぬ姿で砂矢の顔の上にまたがり……下半身のアレをやや強引に舐めさせていた。

時には砂矢の手を使って、おもちゃのように自分のアレをいじり……授乳の際に胸を舐めさせたりして、一時の快楽に身も心も沈めていた……。


「やめてよ!!」


 私は恥ずかしさのあまりスマホを叩き落とした。

それでも母は冷静さを保ちつつ、目には殺意に近い怒りを灯していた。

何キレてんの?

キレるのは普通こっちでしょ?

こんな辱めを受けたんだから……。


「よくもこんな……赤ん坊相手に欲情することができるわね!!

あんたは……異常よ!!」


「異常? 娘と孫のこんなあられもない姿をカメラに収めているお母さんの方が異常じゃない!!

いくら家族だからって……やって良いことと悪いことの区別もつかないの!?

マジで人として終わってるわ!」


「その言葉……そっくりそのままあんたに返すわ。

それにあんた……この場所がどこだかわかっているの?」


 母は私がはたき落としたスマホを拾い上げると……しつこく私に動画を突き付けてきた。

私と砂矢が”行為”をしている場所……よく見るとそこは、父の遺影が飾られた仏間だ。

その時は砂矢との行為が楽しくて気付かなかったけど……私は父の遺影の前で行為に及んでいたんだと、この動画で初めて気が付いた。


「お父さんのいる部屋で……お父さんが見ている前で……よくもこんな恥知らずなことができたわね!!」


「それはたまたま……誰もいないかったからつい……」


 バチンッ!!


 私が言い終える前に、母は突然……私の頬に力強い平手打ちを喰らわせてきた。

私は痛みと動揺で床に突っ伏すように倒れてしまった……。


「なっ何するのよ!? ひどいじゃない!!」


 私は頬を抑えながらすぐさま立ち上がり……母に喰いかかった。

するとどういう訳か……母の目から涙があふれるように零れ落ち始めた。

いや……何、泣いてる訳?

泣くのはどう考えても叩かれた私でしょう!?


「ひどいのはあんたでしょ!!

あんたは砂矢を汚したばかりか……お父さんの名誉まで傷つけたのよ!」


「何を大げさな……」


「お父さんはね!!

あんたが過去の過ちを反省して、これから真っ当に生きてくれると信じていたの!

だから刑期を終えたあんたを引き取ったんだよ?

本当ならあんたみたいな恥知らず……絶縁してやろうと思っていたけど……お父さんが真理枝をもう1度信じてみようって……私に頭まで下げてきたから……私もあんたを受け入れたの……。

そんな私達の信頼を……あんたは最低な形で裏切ったんだよ!?

今、天国のお父さんがどれだけ悲しんでいるか……あんたにはわからないの!?」


「わかんないわよそんなの!!

だいたいお母さんだって……私の気持ち理解してくれたことある?

砂矢はね……私の王子様なの!

私を愛してくれるために生まれてきた子なの!

いずれ私達は親子という関係から育って……夫婦として互いを愛し合うようになるの……。

そして砂矢の子供を私が生んで……家族3人で仲良く暮らすの!

私の母親なら……砂矢のばあばなら……私達の仲を理解して応援すべきでしょう!?」


 私の想いの全てを吐き出すも……母は突き付けたスマホを下ろし、呆れたと言わんばかりに首を横に振った。


「あんたが何を言ってるのか……私には全く理解できないわ。

10年も刑務所に入れられていたくせに……何1つ反省してないんだね……」


「反省なら慰謝料という形で償ったでしょう?

そもそも未成年との浮気くらいで10年も刑に服さないといけない意味がわからない」


「もういいわ……ツムジ君の時からわかっていたけど……あんたには何を言っても無駄なようね」


 母はおもむろに立ち上がり……私を見下ろしながらこう言った。


「砂矢は私が育てる……2度とあの子の前に姿を見せるな!」


「はぁ!? 砂矢は私がお腹を痛めて生んだ王子様よ?

勝手なこと言わないで!!」


「あんたは警察に突き出す……。

どんな罰が下されるかはわからないけど……少なくとも無傷では済まないでしょうね……」


「なっ何を言ってんの? 警察なんて関係ないじゃない!」


「それはこれを見た警察に判断してもらいましょう……」


「なっ! ふざけないでよっ! そんな動画見せるとか……それが娘に対する仕打ち!?

母親として最低だと思わないの!?」


「あんたは娘なんかじゃない……母親でもない……いや、人間でもない!

あんたは……ただのケダモノよ!!」


 母は私の言葉を無視し……本当に通報した。


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「やめてってば!!」


 20分後……警官2人がウチにやって来た。

母は私の制止を振り切り……動画を警官に見せた。

そして私が砂矢に性行為を強要したと、意味不明な偽証まで並べ立てる始末……。

その結果……。


「署までご同行願います」


「はぁ!? ちょっと待ってよ!!」


 私は警察署に連行されることになった……。

そして取り調べを受けた後……私は再び冷たい留置所に押し込められることになった……。

本当に意味が分からない……。

あんな動画を警官に見せられた私こそ……被害者じゃない!

私が名誉棄損で母を訴えたいくらいなのに……どうして私が逮捕されないといけないの!?


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 数週間後……裁判が開かれた。

私の罪状は不同意わいせつ罪プラス虐待……。

私は何度も無実を訴えたけど……母が撮った動画が証拠となり……最終的に有罪判決が下された。

しかも警察が父親を調べた経緯で、私が未成年のツムジ君と子作りしていたこともバレ……その分の罪も上乗せされた。

そして私には……執行猶予なしの懲役6年が言い渡され、また刑務所に入ることになった……。


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なんで?

なんでこうなるの?

わいせつ罪って……前も思ったけど、それは男に掛けられる罪状でしょう?

なんで女の私が咎められないといけないの?

そりゃあ……砂矢は0歳だから、ツムジ君の時とは違って合意なんてできなかったけれど……。

でも私の子よ?

私が私の子供をどうしようが私の勝手でしょ?

そもそも虐待って何?

私は砂矢に暴力なんて奮ってないし……育児だってきちんとしていたわ!!

それなのにどうして……有罪になるの?

ツムジ君だって……あんなサルとシタくらいでどうして罪が重くなるの?

未成年って言ったって……双方合意の上なんだから別に良いじゃない!!

そもそも私にとっては、あんなの苦行だし……。


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「前にも言ったけど……砂矢は私が育てる。

それと……洋菓子店は畳んで別の所に引っ越す。

もちろんあんたには教えないわ。

会うのはこれで最後……もう私達に関わらないで頂戴」


「ふっふざけないで!! 砂矢を返せ 返せぇぇぇ!!」


 面会にて母に絶縁と砂矢没収を突き付けられた私は獣のように声を荒げたけど……面会室に響き渡るだけで……それは何の意味もなかった……。


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「出せ! ここから出せよ!! おいゴラァ!!」


 冗談じゃない!!

私は砂矢と幸せになるの!!

そのために……これまで頑張ってきたのに……どうして砂矢と引き離されないといけないの?

どいつもこいつも……頭の中腐ってるんじゃない?


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 6年後……私は刑期を終えてようやく出所した。

前回とは違い……今回は誰も私を迎えに来てくれなかった……。

すぐに実家へと赴いたけど……すでに実家は更地と化していた。


「砂矢……私の砂矢ぁぁぁ……」


 私は膝から崩れ落ち、大粒の涙をこぼした……。

寂しいよぉ……砂矢がいない人生なんて……嫌だよぉ……。

頼れる人もいない……お金もない……スマホすらない……。

私には……砂矢を探し出す術がなかった。

でも……諦めたくない……諦める訳にはいかない!!


「砂矢……待っててね。 私が……必ず迎えに行くから」


 砂矢は私を待っている……。

そう信じることで、私は自分を奮い立たせることができた。

そうよ……私は砂矢と幸せになるの!!


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 それから私はコンビニバイトを始め、ボロアパートでギリギリの生活を送れるくらいには生活を立て直すことができた。

とはいえ……働いて食べて寝るを繰り返すだけの味気ない生活だ……。

しかも砂矢がいない今……私の心は寂しさと言う名の隙間風が吹きすさんでいる……。


『ねぇあいつでしょ? 赤ちゃん相手に欲情したって言うショタコンモンスター……』


『そうそう……しかも昔、小学1年生の男の子をレイプしたとか……』


『いくら欲求不満だからって……赤ん坊と小学生相手に欲情するとか、正気じゃねぇな』


『その内、子犬や子猫相手に欲情するんじゃない? キャハハハ!!』


「……」


 どういう経緯かわからないけれど……ネットで私の”犯罪”についての話が私の顔写真と共に広まっているらしい……。

そのせいで私は世間からショタコンモンスターなんて不名誉なあだ名で呼ばれて蔑まれている。

ネットでのそんな評判から……まともな職に就くことはできず、今勤めているコンビニバイトすら……何件も断られた末にようやく採用されたくらいだ。

ホント……どうして私がこんな目に合わないといけないの?

日本はどこまで腐っているんだか……。


-------------------------------------


「……」


 外に出ると罵声を浴びせられるので、基本バイトのない時間はアパートから出ないようにしている。

私はこの理不尽な現状にイラ立ち……1度、憂さ晴らしを兼ねて大地のことを警察に告発したことがある。

あいつは緑川菊と結婚し、2人の間には葉以外の子供までいると風の噂で聞いた。

8つも歳が離れた女の子と結婚して子供まで生ませるとか……どう考えても犯罪でしょう?

成人しているからって何?

未成年じゃないからって何?

ロリコンであることに……性犯罪であることに代わりないでしょう?


『お話を聞く限り……犯罪行為には当たらないと思います』


 なのに警察は……私の訴えを聞き入れなかった。

なんで?

私のことは不当に2回も逮捕したのに……どうして大地は逮捕しないの!?

あいつは8つも歳が離れた子に手を出して孕ませた性犯罪者よ!?

それなのに逮捕しないとか……こんなの性差別じゃない!!

何度そう言っても……警察は大地を逮捕してくれず、私は諦めざる負えなかった。

警察が犯罪者を野放しにするなんて……つくづく警察って組織は無能の集まりね。


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「砂矢……」


 私に残された希望はもはや砂矢だけ……。

だけど……会うことは叶わない。

どうすれば会えるのかもわからない……。

世間の冷たい視線と罵声が怖くて部屋に引きこもっているけれど……1人になるとどうしても寂しさが心を締め付ける。


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 どうしようもないこの痛みから逃れたい思いから……私はアパートから外に出た。

当てなんてない……ただただ歩いているだけ……。

引きこもっているよりはマシだけど……別に寂しさがなくなる訳じゃない。


「砂矢……私の砂矢ぁ……」


 もう何もいらない……。

砂矢さえいれば……何もいらないわ。


 ”この世に神様がいるのなら……私に砂矢をお返しください……”


 頼れる人のいない私は……心の中で何度も神に祈りを捧げた。

神なんて信じる方じゃないから叶うなんて微塵も思っていないけどね……。




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 気が付くと私は見知らぬ公園に赴いていた。

そこには幼いだけでサルみたいな子供とぶっさいくな親共が笑っている……。

なんて吐きそうな光景だ……。

すぐにここから離れようと思った……その時!!


「砂……矢……?」


 私の祈りが届いたのか……それとも運命が引き合わせたのか……。

私の視界に……砂矢らしき1人の男の子が写った。

次話も真理枝視点です。

もう書くこともないので、次で真理枝の話を終えたいと思います。


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