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第5話 ディアーヌ帝国


 ディアーヌ帝国行きの船に乗り込んでから1週間が経った頃、船はようやく目的地のディアーヌ帝国へと到着した。


「此処がディアーヌ帝国の港街。港だからもあるかもだけれど、凄い人ね」

「そうですね〜! じゃあ、行きましょうか」


 シエナは柔らかい笑みを浮かべてそう言い私の手を取り、優しく握る。突然のシエナの行動に驚いたが『人が多いので逸れないように手を繋いでおきましょう』と付け足されので、納得して頷き返した。


「ええ、」


 私はシエナに手を引かれて乗ってきた船に背を向けて歩き始めた。


⭐︎°⭐︎°⭐︎°


 船を降りた日の夕方頃、私とシエナはディアーヌ帝国の帝都リリバーナに辿り着いた。


「着いたわね」

「帝都なだけあって出店が沢山ありますね〜!」


 シエナの言葉通り、両道の端には沢山の出店が立ち並んでいる。

 色とりどりの果物や、野菜、焼きそばなどの食べ物以外にもアクセサリーに服など。様々な品物が売られていた。


「何だかお腹空いてきちゃったわ」

「何か買いますか?」

「ええ、そうね。そうしましょうか」


私とシエナは両道に立ち並ぶ出店に売られている食べ物を横目に見ながら、何を食べようかという他愛のない話しをしながら歩き始める。


「はぁ、はぁ、はぁ、うっわ!?」

「え……!?」


 しかし、前方から走ってきた少年が勢いよく私にぶつかってきたことによりシエナとの会話は中断されてしまう。


「あ、申し訳ない! 怪我はないか?」


 私よりも年下であろう金髪の少年はぶつかった謝罪をしてから私を心配そうに見つめてくる。


「ええ、大丈夫よ」

「そうか、ならよかった! そして申し訳ないんだが、お前の背中を貸してくれないか?」

「え……? それってどういう……?」


 私の問い掛けに答えることもなく、少年は私の背後に周り、羽織っていた白いフードマントの中に後ろから入る。


「え! ちょっと何して!?」

「頼む、追われているんだ。追っ手の騎士達が居なくなるまででいいから隠してくれ……!」


 少年の必死なお願いに私は仕方なく頷き。少年を追っ手の騎士達から隠すことにした。

 シエナは私の横で何故かにこにことしている。私はそんなシエナを横目にちらっと見て、何で笑っているのだろうか。と疑問に思う。


「こっちに走って行ったはずなんだが、居ないな……」

「全く、あのお方は私達が目を離すとすぐ何処かに行ってしまう。本当困った物だ」

「13歳と言えど、まだ子供だ。それにあのお方の身に何かあったら俺達の首が飛びかねん」


 ほんの少し離れた所でそんな会話をしている男達が私の視界に入る。

 どうやらあの男達がこの少年を追っている騎士達のようだ。

 騎士達の探している少年は私の背後のフードマントの下に隠れながら私の服の後ろをギュッと掴んでくる。


「大丈夫よ。気付かれていないから安心して」


 少年を安心させる為に私の背後のフードマントの下で隠れている少年に向けてそう言葉にすれば少年は返事代わりにまた後ろの服をギュッと掴む。


 数分後、騎士達は立ち去って行き、私とシエナは騎士達の後ろ姿を見えなくなるまで見送ってから、少年に声を掛ける。


「騎士の人達行ったわよ」

「もう、出てきて大丈夫ですよ!」


 シエナと私がフードマントの下で身を隠していた少年にそう伝えると、少年は恐る恐る私のフードマントの後ろから出てくる。


「ありがとう。感謝する! 何かお礼をさせてくれ」


 そう言い軽く頭を下げてきた少年を見て、私は気付いてしまった。

 身につけている衣服は平民が着るような物ではなく、幼そうに見える外見とは裏腹に受け答えや、礼儀がしっかりしている。


「貴方、平民ではないわね?」

「察しがいいな。ああ、俺は平民ではない。このディアーヌ帝国の第一皇子ロディス・ディオノーゼだ」

「え! そうなんですか?」


 シエナは少し驚いてから、目の前にいる少年を上から下までじっくりと流し見てから頷く。


「確かに、衣服からして平民ではないですね!」

「シエナ、貴方、気付いていなかったのね」

「うむ。お前達はこの国の人間ではないな。観光で来たとかか?」

「まあ、そんな所かしらね」


 ディアーヌ帝国には観光で来たというより、旅の途中で訪れただけである。

 しかし、観光と言ってしまった方が何かと都合が良いから観光と答える。


「そうかそうか、では、お礼として、俺が帝都を案内してやろう!」

「わー、ありがとうございます!」

「ではこの帝都で1番美味しい食べ物を案内しながら教えてほしいわ。その後はあまりお金が取られない良さげな宿屋に案内してくれるかしら?」


 少年は私の言葉を聞いて、自信たっぷりの笑みを浮かべて『任せておけ!』と返答する。

 そして、私とシエナは少年と共に再び帝都の街並みを歩み出したのであった。

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