知らぬ間に『悪巧み』
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私が、約1年前にインベルト商会と固形石鹸の販売契約を結び、それから石鹸市場は荒れたそうだ。
チヤは地球産固形石鹸を卸すだけで、製造・販売には関わっていないので詳しくは知らないが、インベルト商会はいろいろと探りをいれられたり、営業妨害じみた行為もあったようだ。
それから他店は、他国からの石鹸輸入では採算が取れないと、チヤの持ち込んだ固形石鹸の研究に乗り出して、成分解析が行われて、最近になって、この世界基準での『輸入石鹸』の品質には届いたが、いまだにチヤの持ち込む地球産固形石鹸の品質には及ばないようだ。
いや、元からこの国の石鹸は他国に劣っていたので、追いついただけでもかなりの進歩だろう。
そして、大商会の後ろには、だいたいが貴族の後ろ盾というか、貴族が商会代表であることが多い。
石鹸輸入で大儲けしていた貴族は、ここ1年で儲けが激減して、今まで湯水のように金を使い贅沢を味わってきた貴族にとっては許せないことであり、雇われ商会長を呼び出していた。
「では、インベルト商会の石鹸の仕入れ先が、全く、わからないと?」
雇われ商会長は大貴族の前で責めるような口調で言われて背中に冷や汗をかいていた。
「そうです。インベルト商会は商会の建物自体に倉庫を併設させています。
馬車の待機所は商会の裏手にあるので、建物内に入られると客なのか石鹸の納品者かわからずに、私自身も困惑しております。
ただ、商品を大量に倉庫に運ぶのを一度も見ていませんので、収納鞄かアイテムボックスの持ち主が石鹸を持ち込んでいる確率が高いです」
雇われ商会長は、話していくうちに不機嫌になっていく大貴族に、顔にまで汗をかきだした。
「くそっ!王都でなければ、積荷を奪ってやるものを!」
雇われ商会長は大貴族が犯罪をしている発言を聞かない、いや、聞いていないことにした。
輸入石鹸市場をほぼ独占していたのだ。
汚いことをやっていないのが珍しい。
確実に石鹸輸入は『儲かる』と認知されていたにも関わらずに、競合店が3店舗しか無かったのが、いい例だろう。
その3店舗全てに、違う貴族の後ろ盾があるのは周知の事実だ。
そして、今や『王族御用達』のお墨付きをいただいた『インベルト商会』にも貴族の後ろ盾が「あるだろう」と言われてはいるが、当の貴族家が影も見せないほど慎重であると思われている。
インベルト商会長には王立学校時代に数人の貴族の友人がいたのは、調査をした者なら誰でも知ってはいるが、どの貴族家に探りを入れても自領で石鹸を大量に作っている場所が見つからない。
よほど周到に存在を秘匿している。
大貴族は、雇われ商会長に密命を出した。
「どんな手を使ってもいい。石鹸製造者と納品している者を探し出せ」
大貴族なので、声をそこらのチンピラのように大声を出して恫喝することはしないが、その声音には恐ろしく重い重圧がかかっていた。
人に命令し慣れている絶対者の声だ。
雇われ商会長は重い空気の中で、やっと掴んだ情報を話す。
「そ、それがですね、インベルト商会は一度も今まで倉庫街の倉庫の使用をしていなかったのですが、今回、何を焦っているのか、倉庫の持ち主の言い値で倉庫を3つ貸し切ったようです。
きっと、そこの倉庫には納品者が現れると睨んでおります」
雇われ商会長がそう発言すると、部屋の主からの重圧が少し軽くなった。
「ふむ、いいな。好機だ。その倉庫を見張らせ、取り引き相手を見つけよ」
「はい!それはもちろん」
悪巧みは、動き出した。
◇◇◇
スイード伯爵家の収めるバビル領の領地に向かう20日ほ前。
インベルト商会が力を入れて梱包した『最高級シャンプー』を受け取り、おばあちゃんに渡したところ、おばあちゃんは最高に喜び「インベルト商会の献上品にしてね」と言う言葉にも二つ返事で返し、素早く王城に人を出して王妃様の都合の良い日を確認していた。
『最高級シャンプー』に、ひと段落ついたチヤは、インベルト商会に納品して欲しいものが書かれた「納品書」を前にして、お母さんの部屋の中で『通販』を開いて大量買いをしていた。
そこで、チヤの能力が大体バレていて、信用できる侍女・セーラ、筆頭護衛・シャルフ、女性護衛・エルシーナがスライム容器への商品の詰め替えを手伝っていた。
何しろ納品する量が、これまでで一番多くて、1人では全て終わらせるのに時間がかかりすぎて、頭の中がパンクしそうだったのだ。
それから4日かけて、その間に孤児院学校にも通いながら、商品を買っては詰め替えして、完成すればアイテムボックスに入れてと繰り返していたので、4日経ち、業務外以外の仕事に付き合わせたお詫びから、金銭を3人に渡そうとしたが、何故か皆が「フラペチーノが食べたい」と言い出したので、ご褒美として出すと3人とも夢中で食べだした。
なんだか、みんなが食べるのを見ていると私も食べたくなったので、某チョコブランドのショコリキサーを買い、美味しく食べて飲んでいると、フラペチーノをペロリと食べてしまった3人が「チヤ様の食べている物が美味しそうです」と言い出したので、4日間のお礼がフラペチーノだけでは少ないと感じていたチヤが、同じショコリキサーを出して皆に配ると「おいしい!」「おいしい」「これは!美味!」と、盛り上がり、最後は口の洗浄代わりに温かいお茶をホッと飲んだ。
私、個人としては『フラペチーノ』より『ショコリキサー』の方が好きです。
皆様、誤字報告、大変助かります。ありがとうございます。