最高級シャンプーの売値決定! 1
先程の事を踏まえての【最高級シャンプー】の卸値と売値。
最高級固形石鹸の【5万ルビ】を超えるか?
それとも、『髪専用石鹸シャンプー』を固形石鹸より劣る商品として売り出すか?
今、ここで、世界初『髪専用石鹸シャンプー』の価値が決まる!
◇◇◇
うーん。
悩んでる。
すっごい、悩んでいる。
クルガー商会長の百面相は見飽きた。
そして、ハーブティーにも飽きてきた。
そろそろ、ポットの中身も無いしね。
アメリカ発のコーヒー専門店のフラペチーノを通販で買い、出す。
もちろん、セーラの分も出す。
セーラの前にオーソドックスなフラペチーノを置いたら「チヤ様、この、豪華なものは、なんでしょうか?」と聞かれて、チヤは答えを持っていなかった。
フラペチーノとは、深く考える前に『そういう飲み物』で、納得してしまうデザートを兼ねた飲み物だったのだ。
そして、気がついてしまった。
今まで、この世界で『コーヒーを飲んだ事が無い』という事実に。
この国にコーヒーが伝わって無いだけか?
それとも、この世界に無いのか?
それすらもわからない。
ので、誤魔化すことにした。
「おいしいよ。こうやってストロースプーンで食べるの」
セーラは、とても不思議そうな顔をした。
そして、チヤの食べ方を見て、見よう見まねで食べた。
「あまい……」
甘苦い味は大丈夫だったようだ。
チヤは自分がフラペチーノを飲んで、食べるのに専念した。
(久しぶりに食べると美味しいー!)
両隣の護衛が羨ましそうに見ているのを気づかずに。
◇◇◇
一方で、クルガー商会長の頭の中はというと。
髪専用石鹸のシャンプーを輸出しようと計画しているのに、最高級固形石鹸より低い値段をつけてもいいのか?
いや、だが、商会員の反応は無視できない。
『豊かな庶民』の意見だからな。
しかし、王族御用達に、低い値付けをする訳にはいかない。
だが、王族が使う品が、不評だったら?
王族の気分は良く無いだろう。
しかし、スイード伯爵夫人に『シャンプー』を欲しいと言ってくるぐらいだ。
価値を認めていると見ても良い。
それならば、高級固形石鹸と同じ値段でも良いのでは?
それとも、最高級では無いが、高級石鹸シャンプーなら?
ん〜〜〜。
現在、開発中ということにするか?
いや、嘘はいけない。
チヤ君は「これ以上のシャンプーは無い」ようなことを言っていた。
これ以上、原価の高いシャンプーは、今現在、無いのだ。
1万1000ルビの原価の品を4万5000ルビで売り出す?
有り、かも、しれない。
卸値を2万2500ルビにしても黒字だ。
チヤ君の儲けは出る。
商会の維持費を計算しても採算が取れる。
王族を騙すようで気分は悪いが、納得せざるを得ない。
商売とは、そういうものだと、学んできたじゃないか。
それでも、商会を運営すると決めたのだ。
『シャンプーの価値』はインベルト商会が作り出す!
そして、貿易を成功させる!
1番安価なシャンプーの原価が低いのは、失敗した時のリスクが少なくて安心材料だ。
しかも、実際に使用してみて、最高級シャンプーに負けていない!
個人的には、安価なシャンプーの方が使用価値は高い!
よしっ!卸値が2万2500ルビで売値が4万5000ルビだ!
と、クルガー商会長の頭の中の会議が終了したので、商会長が顔を上げると、チヤ達が何かを食べて?いや、飲んで?いる。
なんだか黒茶色でよくわからない食べ物だ。
「……チヤ君、それは、なんだい?」
チヤは簡潔に答えた。
「フラペチーノです」
「ふらぺちーの?」
チヤはチラッとクルガー商会長を見た。
「……食べます?」
「いただこう」
とりあえず、ふらぺちーのは、食べ物らしい。
しかし、後から、飲み物だと、意見を変えるのだが。
◇◇◇
そこそこの大きさのフラペチーノを食べて飲んだ3人は満足顔で座っていた。
口の中がフラペチーノを食べて、甘ったるいので、ハーブティーを飲もうとポットに手を伸ばしてティーカップに注いだクルガー商会長は、出てきた少ない量のハーブティーに「またか……」と、思いながらも、空のポットを持っておかわりを入れにいった。
残されたチヤ達はいうと……チヤのトイレが近づいていた。
チヤは素早く立ち上がって宣言した。
「トイレっ!」
そのまま出ていこうとするチヤに慌ててエルシーナだけがついていき、商談室を出た。
チヤは6歳なので1人でトイレができる。(見た目4歳幼女)
なので、侍女のセーラは商談室に残っていた。
護衛のシャルフと共に。
「……セーラ、その、さっき、食べた茶色の白いクリームがのったものは、美味しかったか?」
セーラは少しだけ表情を動かした。
シャルフがあの食べ物(飲み物?)に興味があるとは思わなかったのだ。
「とても、美味でございました」
セーラが簡潔に言うと「……そうか」とシャルフが、残念そうな羨ましそうな声を出した。
セーラはシャルフを誤解していたようだ。
真面目で面白みの無い人だと。
自分に似た性格だと思っていたので、意外だった。
そこでセーラはシャルフにアドバイスをした。
「……孤児院学校が終わった後の昼食に、チヤ様に食べたいとお願いしてみては?」
シャルフはすぐに断るだろうと思っていたセーラだったが、よほど食べたかったのか「お願いしてみるか」と呟いたシャルフに、「食いしん坊だったのね」と納得して、主人が帰ってくるのを待った。




