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アホ、いや、バカがいた。

 ぼこっ!

 と、土がいきなり無くなった。


「あーっ!やったあ!新鮮な空気があるー!おいしいー!土の匂いじゃないよー!」


 チヤは、地面を貫通したようである。


「あ、静かにしないと。えーっと、ここから、向こうに下っていくはずだから、ここは、隣の家の敷地の中だ。うあー、良かったー」


 幼女チヤは、1人で喝采を上げていた。


 そこに、通りかかる屋敷の見回りの兵士……。


「誰だ!そこにいるのは!」


 わかります。

 お決まりのセリフですね。


「助けてください!誘拐されて、地面を掘って逃げてきたんです!助けてください!スイード伯爵の孫娘です!」


「何ぃ!?ちょっと、待ってろ!いえ、ちょっとっ、待っていてください!」


 てめぇ、貴族だと分かったら対応を変えたな?


 だが、許す!助けてくれたらな!


 暗くて、暗くて、ここが何処なのかも、わからないし。


 日本の街灯が懐かしいー。


 ◇◇◇


 ちょっと、放置されすぎの、幼女です。


 いや、放置は、されて、ないんだけど、ね?


 兵士?騎士?に、囲まれてます。


 「コレが、スイード伯爵の孫娘?」と、不審がられております。

 はい、平民服で、貧民街でも通じる服を着ています。

 はい、土の中を穴掘って、進んできたものですから、土まみれです。はい。

 「スイード伯爵家の者が確認に来るまでは動かないで」と、言われています。

 そうです。

 不審な幼女に、なってしまいました。


 そして、私が逃げてきたと思われる屋敷からも不穏な動きがあります。


 私が逃げてきた穴から小柄な男が出て来たらしく、捕まえられております。

 そして、バカなんでしょう。

 大きな声で「バンガエル公爵家の使用人だぞ!解放しろ!」と身バレをしております。

 ホンモノのバカです。


 そして『バンガエル公爵』。

 ぷっ!

 笑っては、いけませんけど、物語の序盤で潰される「プギャ」と言いそうな貴族名です。


 どんだけ偉いかわかりませんが、状況証拠は揃っているので、言い逃れはできません。

 多分。


「チヤっ!チヤっ!チヤはいるの!?チヤっ!どこにいるの!?」


 聞きたくて、仕方がなかった、お母さんの、声が、聞こえます!


「おがあざーん!!」


 思わず涙声になってしまった。


「チヤー?!いるの?ちょっと、どいてくださる!?娘が泣いているのよ!?」


 緊張の糸が切れて、幼女の涙腺は、あっという間に緩み、泣いてしまいました。


 ギャン泣きです。


 お母さんは、土まみれの私を抱きしめてくれて「頑張ったのねっ!偉いわ、チヤちゃん」と甘やかしてくれます。


 逆効果ですよ!お母さん!泣きやめなくなってしまいます!


 そして、なんと!オババ様とおじいちゃんも駆けつけてくれました。


 私の周りだけ、魔道具の灯りで昼のようです。


 おじいちゃんに抱っこされて帰ろうとしましたが、大物貴族が相手なので、王族が出て来てしまいました!大変です!

 事態が急激に、大事件へと発展していきます!


 ◇◇◇


 例の『バンガエル公爵』の家が城の騎士達に包囲されています。


 虫1匹も逃がさない体勢です。


 いえ、虫はさすがに逃げれるでしょう。

 例えです。

 気にしないでください。


 スイード伯爵家は、微塵も疑われていません。

 普通は「虚言ではないか?幼女の言う事だし」と言う流れもあり得ました。

 しかーし!誰も口にしません。

 日頃の行い、と言うやつでしょうか?

 そうならば、おじいちゃんに感謝しないといけませんね。


「おじいちゃん、ありがとう」


 そうです。

 お母さんの抱っこから、おじいちゃんの抱っこに変わりました。


「お腹が空いてないかい?昼食も夕食も食べていないだろう?」


 緊張して、色々な事が有りすぎて、空腹を感じる暇もありません。


「ううん、大丈夫。おじいちゃんはお腹空いてる?」


「おじいちゃんも、大丈夫だよ」


 ちょっと、ほのぼのしていると、凛とした声が上がった。


「やあ!スイード伯爵!大事にしてくれたね!」


「いやいや、お城の騎士が来たら大騒ぎになるでしょう?」


「いやいや、バンガエル公爵を捕まえるのだから、王族の傷になるよねえ?スイード伯爵からのお礼が楽しみだよ!」


 あー、コレって、「助けてやるから、エルフの作った品を寄越しな」って事かなぁ?


「なにをおっしゃいますか!この国の膿みを大々的に処分出来るのですぞ!素晴らしい功績ではないですか。それに公爵は王家の血筋ですし、これ以上の悪行をさせずに処分できますぞ」


「いやいやいや、大貴族を捕まえるって、ほんっとーに、大変なんだよ?ご褒美があってもいいなー、なんて」


 直接的に、欲しい!って言ったー!


「王族は、今の状態に、不満があるのかねぇ?どう思うかい?ウェンズ」


 オババ様がやって来た。


「いや、王族は我々を侮っているのでしょう。ここらで、オババ様がお城を潰せば現状を再認識するのではないですか?」


 格好つけていた王族の王子?が、呆然とした顔をしている。

 頭がついてきてないんじゃない?


「んー、じゃあ、とびっきりの戦闘狂を呼ぼうかね。中にいる人間はぺちゃんこに潰れるだろうがね」


 ここで、王族の男性が正気づいた。


 目を盛大に泳がせた後に、大声で言った。


「あ、あーーー!冗談だよ!冗談!王族ジョーク!あーーー!今から!バンガエル公爵を捕縛しろ!突撃ー!!」


 やらかした王族の号令で、バンガエル公爵家は大騒ぎになった。


 周りを見ると、思ったよりも野次馬が結構いた。


 バンガエル公爵の醜聞が、瞬く間に広がるんだろうなー、と思った。


 それより、モーゼは、どこ行った?

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