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チヤは何処?

 孤児院学校が終わって、受付のおっちゃん神官様にさよならの挨拶すると、孤児院を出る。


 今日の勉強は熱が入って、帰りが1番最後になっちゃった!


 この後は屋敷に帰って昼食を食べるんだ。


 裏の畑の中を歩いて出口に近づくと、モーゼが馬の手綱を持って待っていた。


 その顔は嬉しそうに笑っている。

 あれ?馬車は?


「お帰りなさいませ。お母様のご気分が悪くなったと報告がありましたので、急ぎ帰ろうと思いますが、よろしいですか?私が護衛いたしますので」


 その話を聞いて、「貴族の昼食はどんな〜?」と想像していたのが吹っ飛んでしまった。


「お母さんは、どうなったの!?治癒師様に見てもらっている?それともポーションを飲んだ?」


 私の頭にオババ様の顔が浮かんだ。


「オババ様は来ている!?」


 一瞬、モーゼの顔が怖くなったと思ったけれど、それほどお母さんの体調が深刻なのか?と、余計に不安になった。


「オババ様は、知りませんが、何ぶん、お屋敷からここまで遠いので、とりあえず馬を走らせませんか?」


「馬車は?どこ?」


「馬車では、すぐに帰れないので私が馬にチヤ様を乗せて走ります。大丈夫ですよ。落としませんから」


 そう言って、モーゼはニコリと笑った。


 ◇◇◇


 夕方、スイード伯爵家。


「おかしい。もう、孤児院学校は終わっているはずなのに……ああ、どうしたんだ」


 ぶつぶつと呟きながら部屋の中をうろうろと歩く落ち着きの無いスイード伯爵家当主のウェンズがいた。

 妻のベティーナも内心は穏やかでは無いが、態度に出すことはしない。

 こういう時は、冷静な者が勝つのだ。


 部屋にはソフィアと長女のウェルスンがいる。

 ジョシュアは知り合いの貴族家に行っていて、夜まで帰ってこない。


 異変に気がついたのは、チヤに昼食をお願いされていたメイドだった。

 「チヤ様のお食事はどこにお持ちしたらいいですか?」と聞いてきたのだ。


 そこで、おじいちゃんのウェンズが昨日チヤに食事を食べさせたのを思い出して、嬉しげにチヤを探させたが、まだ、孤児院学校から帰ってきていない、事実がわかっただけだった。

 少し嫌な予感がしたウェンズが「孤児院学校に行ってチヤちゃんを探してきなさい」と騎士に探しに行かせたまま、その本人達が帰って来ていない。


 教会から貴族街は遠い。

 馬車で40分はかかるが、馬単騎だと街中を走るのを考慮して1時間で行って帰って来られる。


 それが、約2時間経っても誰も帰ってこない。


 さすがにおかしい。


 その時、扉が忙しなくノックされる。


「入れ!」


 ウェンズが鋭く言うと、転がり込むように血だらけ傷だらけの騎士が入って来た。


「報告します!チヤ様を乗せたモーゼを教会に行く前に見かけましたので、話しかけたところ、無視して我々を振り切るように馬を走らせました!追いかけましたが、謎の武装集団に妨害されて怪我人多数!隊長が単騎で突破し追いかけた所を見ましたが、はぁ、見失いました!一度屋敷に報告をと戻ろうとしたところに応援の騎士が到着して、我々の気が緩んだところで騎士達の裏切りにあい、はぁ、はぁ、じゅ、じゅうしょうしゃ、はあ、たすう、はあ、おうえん、を……」


 報告に来た騎士が、倒れた。


 すぐさま、近寄り、体調を見るが、血が出過ぎたようだ。

 顔が死人のように青い。


 ウェンズはもしもの為に、いつも持ち歩いている収納ポーチから特級ポーションを取り出して、前のめりに倒れた騎士を仰向けにさせてから、気道を確保して薄く開いた口を少し開けて、ゆっくりと特級ポーションを流しこんでいく。


「ベティーナ、変わってくれ。オババ様を呼びに行く。緊急事態だ。チヤが誘拐された。犯人はモーゼだが、黒幕がいるはずだ。記憶を読む木族を寄越してくれと、お願いしてくる」


 長年ウェンズに寄り添って来た経験から素早くベティーナが動いて、特級ポーションを飲ませるのを変わると、ウェンズが走って部屋から飛び出して行った。


 部屋の中には、蒼白になった呼吸の荒いソフィアと姉のウェルスンが残された。


 報告に来た騎士はベティーナのおかげで、一命は取り留めたようだ。


 そして、ベティーナの指示で今屋敷に残っている警備以外の騎士達全員が動員されて、負傷していると思われる我が家の騎士達の捜索が始まった。


 ウェンズがチヤを探しに。


 家はベティーナが指示を出す。


 役割分担がされた。


 ◇◇◇


「んっ、んーーー!?」


 な、なんだ?

 口が塞がれているぞ!?


 それに、空気が、カビ臭い?埃っぽい臭い?


 チヤは何でこんな事態になっているのか、記憶を探る。


 確か、孤児院学校が終わって、初めてモーゼの馬に乗せてもらい、落ちないように馬のタテガミにしがみついていたら、うちの騎士だと言う人が現れて、馬が凄い勢いで走り出して、落ちそうになった所を凄い力で引っ張られた後に、何故か、止まっていた馬車に乗せられた後に、あっ!あれだ!コ◯ン君!事件だ!事件だ!のクロロフォルムみたいな。


 クロロフォルムって実は凄い量を使わないと相手を気絶させられないらしい。

 って、豆知識はいいから、変な匂いのするものを嗅がされた後の記憶が無い。


 あれだね!事件だね!きっと、誘拐だね!


 くっそーっ!騙されたっ!

 犯人は護衛のモーゼだ!

 真実はいつも一つだ!


 むーっ!口が何かに塞がれて、話せない。

 手も後ろ手に何かに縛られている気がする。

 足も……あれ?足は動くぞ?


 何とか肩を使って立ち上がった。

 くそぅ。

 おでこが痛い。

 立ち上がる時に頭を使ったからね!


 さて、ここから、どうしよう?


 どう見ても、牢屋です。

 ありがとうございます。


 定番だね!

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