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ハースネル族 木族よ 1

 口の悪い美女がソフィアの両頬を両手で包み込むと、長い時間をかけて目を閉じていた。


 そして、目を開くと、その様子を黙って見ていたオババ様と呼ばれる老女に視線を向けた。


「オババ、この女、アンドチヤと『魂の契り』をした後に、自分の子と『魂の契り』をしている。二重契約だな」


 その言葉に老女のオババは驚いた。

 密かに場の流れを見ていたソフィアの家族も驚いた。

 『魂の契り』は伴侶とする契約だ。

 と、教えられていたからだ。


「オババ様、私の娘に何か問題が?」


 おじいちゃんがオババ様に聞いた。


「ちょいと待っとくれ。ヨル、ミズを呼んで来とくれ。その時に事情を伝えな」


「あいよ」


 口の悪い美女・ヨルは続き部屋に入っていった。


 残されたソフィアは呆然としている。


「ソフィア、一度席に戻りな。ウェンズ、説明する」


 オババがソフィアに声をかけた後に、おじいちゃん・ウェンズに話しかけた後、ヨルが座っていた場所に腰掛けた。


「ソフィアの件と、それと、うちの孫のチヤの、変化について教えていただきたい」


 ウェンズがオババに説明を求めた。


 えっ!私の変化?と何?何?私なんかした?と挙動のおかしいチヤをオババが見て、どこからともなく綺麗な鏡を取り出してチヤの顔を写した。


 チヤは顔の前に出された華麗な作品に目を奪われていたが、何か、動くモノが目についたので見ると、すっごい美幼女がこっちを見ていた。

 この世の者では無い女神のような美幼女だ。

 惚けると、美幼女も少しアホな顔をした。


 ん?動くぞ?コイツ?

 と写真のように綺麗な絵を不思議そうに見ると、美幼女の顔も変化した。

 「んんっ?!」とチヤが驚いたら、目の前の美幼女も驚いた。


 それを、オババが呆れたように見ていて、思わず口を出した。


「アンドチヤの娘のチヤ。その顔はお前の本当の顔だよ。アンドチヤが隠蔽魔法をチヤにかけて真実の姿を隠していたのさ。推測になるが、人の世で生きる為だろうね」


 チヤは考えるのを放棄したくなるが、自分の事だと一応納得した後に、鏡に向かって変顔をした。


 そこには、紛れもなく変顔をしても美しい顔をした、いや変な顔をした美幼女がいた。


 平凡なちょっと可愛い私が『美幼女』(人に見えない)になってしまうなんて、驚愕の事実があったもんだ。


 まあ、異世界だから、訳あり幼女はあるあるだな!と、納得しておいた。


 しかし、問題はそこじゃない。

 せっかくお父さんが隠蔽してちょっと可愛い幼女にしてくれていた顔を『美幼女』になってしまったら、変質者がわらわらと湧き出て、望むような平和な日常が過ごせるとは思えずに、チヤはオババ様に真剣に言った。


「元の顔に戻してくれますか?」


「わかった。ちょいと、お待ちよ」


 出来るのかい!と、見ているとオババ様の手の中に2つの対になったピアスらしき物が現れた。

 それは、繊細な作りをしていて、平時にも社交場にも身につけていけそうなデザインだった。


 チヤの耳を露出させると、オババ様はブスッ!とチヤの耳にピアスをつけた。


 いや、刺した(・・・)


「ぎゃー!」


 覚悟していなかった痛さにチヤは思わず叫んだ!


 それを黙って見ていたソフィアが自分の子の危機に立ち上がった!


「チヤ!!オババ様!酷いです!チヤが痛がってます!」


 母は強し、か。

 娘の危機に、何だかもう一つあるピアスに嫌な予感がして、オババ様の暴挙を止めようとしたが、黙ってソファに座っていた、もう1人の美女がソフィアを止めた。


「黙りなさい。我々、木族が人の世で暮らすには必要なことです」


 人とは思えない美貌は、時に恐怖も感じる。


 止められたソフィアは、動きを止めてしまった。


「ぎゃー!」


 はっ!とソフィアが我に返った時には2度目の暴挙が終わっていた。


 つまり、チヤのもう片方の耳たぶにも、ピアスが刺されていた。


 チヤの前には行けないから、ソフィアがソファの後ろに回り込んでチヤの頭を触って問いかける。


「チヤっ?痛い?教会に行く?ポーションが欲しい?」


「落ち着きな。ポーションならあるよ」


 またどこからか、オババがポーションを取り出してチヤに飲むように促すと、チヤは一気に飲んだ。

 すると、耳からジンジンと感じていた痛みが無くなり、チヤは空になったスライム容器を眺めていた。


 ポーションとは、魔法薬師が調合して作り出すか、ダンジョンの宝箱で手に入る、比較的入手がしやすい魔法薬である。

 種類は多岐にわたるが、傷を治すポーションや病気を治すポーションが代表的である。


 と、孤児院学校で一般常識として習ってはいたが、チヤは今、効果を実感した。


 通販で売ってはいたが、値段は高いし必要が無かったしで、購入はしていなかったが、考えを変えた。


 「ポーションは常備すべき緊急物資だ」と。


 チヤが感動していても話は進んでいた。


「このピアスは『隠蔽』の効果が付与されている。2つで1つの魔道具ではなく、1つが外されても壊れても、もう1つが隠蔽効果を持続してくれる。

 まあ、100年に1回ぐらいメンテナンスすれば良い魔道具だよ。

 チヤ、自分の容姿を隠蔽すると思い浮かべてみな。望んだ通りの容姿になるから」


 チヤは、以前に通販で購入した鏡で見た自分の元の容姿を思い浮かべた。


 それを見ていたソフィアの家族は、元の顔に戻ったチヤに驚いた声を上げた。


 そして、チヤの後ろから我が子の顔を覗き込んだソフィアは、いつものチヤの顔を見てホッと息を吐いた。


 チヤの本当の姿は、アンドチヤに生き写しだったが、やっぱりいつもの顔が落ち着く母だった。

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