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お母さんに特効薬を

 あれから菓子パンの夜食を食べて眠ると、朝にステラおばさんがやってきて元気よくゴブリン麦がゆを作ってくれました。

 ゴブリンが意外と栄養があるみたいなので、これはこれで合理的な料理なのかもしれません。

 味は微妙だけど。


 お母さんの食べ終わった食器を受け取ったら、昨日作った丸薬をアイテムボックスから取り出して、水と一緒にお母さんに差し出します。

 お母さんは不思議そうな顔です。


「これなぁに?チヤ」


「バルスス病の特効薬です。これから1日3回食後に飲んでもらいます。ほら、お母さん、ぐいっと!きっと、不味くはない、はず……」


 お母さんは驚いた顔です。

 まあ、昨日自分のステータスを見て病名を知ったみたいだから驚いているのだろうけど。

 いや、バルスス病の特効薬を私が用意できた事を、かな?


「どうやって……。怒らないから正直に言ってね?家のお金を使って買ったの?」


 私は真剣な顔で否定する。


「材料から全て私が用意しました。お金は1ルビも使っていません」


「なら、どうやってーー」


「スキルで用意しました。お母さん、これは内緒にしてください」


 お母さんは私のスキルを想像しているのか顔を強張らせている。


 実はこの世界、というか、この国では他人に軽々しくスキルを聞いてはいけません。

 ちょっとしたタブーです。

 でも、本人がオープンにしたければしても構いませんが、家族くらいにしかスキルを教えないのが普通だそうです。


 前にスキルが有ると聞いた時にお母さんからキツく教えてもらいました。


 きっと今、お母さんは私にスキルを聞いていいか迷っているのでしょう。

 私のスキルが危険かどうか……。


 ならば、私からーー。


「お母さん、私は『薬剤調合』のスキルを持っています。それと、その素材を手に入れる手段もあります」


 お母さんは昨日から私が用意する食事や飲み物で有る程度は予想していたでしょうから、簡単な事はバラしても構いません。

 たった1人の家族ですからね。

 信頼しています。

 むしろ『愛』という絆で結ばれています。


 お母さんは理解したのか、少し怖い顔をして私に言い聞かせる。


「そのスキルは誰にも言ってはいけませんよ。あなたの、チヤの身を守る為です。他人に言っては、きっとお母さんと一緒にいられなくなります」


 おお、お母さんが超真剣モードだ。


 貧民街で人攫いが無くても、治安が悪い?権力に負ける?

 今はわからないけれど、怖い事情があるのでしょう。


「お母さん以上に信じられる人にしか言いません」


 お母さんは顔を柔らかくして、私を抱きしめてくれる。


「ありがとうね、チヤ。お母さんの為にいろいろ頑張ってくれたのでしょう?本当にあなたはいい子ね。お母さんの自慢の子よ。愛しい子」


 母に抱きしめられるのが心地よく、とても嬉しいのは何故だろうか?踊り出したいくらいに浮かれている自覚がある。


 お母さんの体に小さな手でぎゅっと抱きつく。


 とってもお母さんの香りがします。


 ちょっと臭いくらいに……。


 仕方ないのです。

 貧民街に『風呂』などと言うお金がかかる物は無いのですから。


 まあ、踊りたいくらい嬉しいのは本当です。


 ◇◇◇


 あの後、丸薬が少し大きかったのか、お母さんは飲みにくそうにしていたけれど無事に初回の処方を飲み干してくれました。


 その副作用なのか、すぐにベッドで眠りについてしまいましたが。

 きっと薬が体の中で戦っているのでしょう。

 頑張れ!お母さん!

 頑張れ!丸薬!


 私はーー水瓶でも洗いますかね。


 ずっと不衛生だと思っていたのです。

 重曹で洗えばいいでしょうか?私の体で洗うには少々大きいですが、ハマらないように注意しましょう。


 重曹は通販でとても安く購入出来る万能アイテムです。

 お掃除の味方ですよ。

 環境にも優しいし。

 スライムさんだって後始末してくれます。

 きっと。


 ついでにトイレ掃除もしましょうか。

 元日本人にはキツイ臭いのするトイレです。

 俗に言う『飛び散り』や『雑菌』ですね。

 汚物は病気の元になります。


 あ、言ってませんでしたが、調理する場所にもスライムさんがいます。

 汚水を綺麗に処理してくれます。

 樽……のような箱?の中にいます。

 逃げ出さない為の措置です。

 窮屈な場所で我慢をしてくれるいい子ですよ。


 さて!やる事がいっぱいです!5歳児ですが頑張りましょう!


 ◇◇◇


 やってしまいました。


 見事に水瓶にハマりました。


 重曹水まみれになりましたが、今の季節は春です。

 少し肌寒いくらいです。

 大丈夫です。着替えくらいあります。

 少しサイズが小さくて、1着だけですけど……。


 良いのです!子供はすぐに大きくなります!

 貧民街は助け合いで生きているので、誰かの使い回し、いえ、お下がりが安く譲ってもらえるはずです。


 いや、まてよ?

 2500魔力なら子供服なんて『通販』が有れば新品が買えるでしょう!?お安いメーカーの物も有りますし。

 今すぐチェックです!

 下着だって汚いのを履かなくて良くなります!

 重曹を購入した魔力も回復していますし。


 と、いうか。

 私の体のサイズはいくつなのでしょうか?

 間違ったサイズを買ってしまっては勿体ないです。

 いや、間違ったサイズを買ってしまっても綺麗な子供服です。

 貧民街いる子供の親に売れるでしょう。

 なにせ、綺麗でツギハギの無い(・・・・・・・・・・)衣服ですから。

 貧民街では貴重品です。


 さて、では憂なく動きやすく着心地の良さそうな私の服を選びますか。

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