事件(孤児院で) 4
古着屋店主の「もっと良い店に売りなよ」という、言葉を断ると、こちらを試すように「じゃあ、私のコネで高く売ろうかな?」と、脅すような、諭すような言葉にも了承すると、「参った」と買い取る約束をしてくれた。
よしっ!
新たな取り引き先ゲットだぜ!
貧民街の人に売れる服では無い、『平民』に売れる服もピックアップして持っていきましょう。
と、一応聞き込みした話を家に帰ってお母さんに話してから、お母さんから衛兵さんに話を持って行ってもらった。
「それじゃあ、貧民街全体の衛兵に話を持っていくか」と衛兵さんが言ってくれたみたいなので、少しは安心していいだろう。
多分、それらしい人にはマークがつくんじゃないかな?
王都は王族の直轄地だから、どこよりも犯罪者に対する処罰は厳しいらしい。(お母さん談)
貧民街は特に悪人の温床になりそうだから、衛兵さんの左遷先でも実際に犯罪が起きると、それはもう厳しい捜査がされるようだ。
お母さんは「平民街の衛兵さんと協力するかもね」と言っていた。
ふむ、それは頼もしいです。
そして、私は、この世界では厳重な『日本の鍵』を玄関扉に付けました!
やったね!
あ、いえ、玄関扉の鍵というのもおこがましい、トイレに付いているいるような、かしゃかしゃする鍵です。
はい。
幼女の力なんてたかがしれてます。
そして、予算もありません。
幼女の手では工事が厳しかったです。(お母さんに手伝ってもらいました)
そして、寝る前にTシャツを2枚買って寝ました。
え〜っと、後の試着の服が7枚必要。
むにゃむにゃ。
◇◇◇
おはようございます!
良い朝です!
朝の朝食の食材とTシャツを2枚買って、魔力がすっからかんです。
眠い。
昨夜は泥棒が来た形跡はありませんでした。
怪しいのは、服の販売を再開した時だと思います。
今は盗む『服』がありませんからね?
一度甘い蜜を吸った蟻は再度侵入して来ます。
10着もの服を中古と言えども売ったのですよ?服は富裕層も平民も貧民にも高い、いわば『贅沢品』ですが、買わなければいけない物です。
また、盗みに成功すれば纏まったお金が入るのに、母子だけの家に盗みに入らない理由が無いです。
新古品の服が10着は貧民にとっては大金です。
盗んだ服をすぐに売ったのは賢い選択ですが、ちょっと浅はかでしたね?
ステラおばさん(情報通)に聞いた所によると、犯人の目星はついたそうです。
衛兵さんも本気です。
もちろん、私とお母さんの安全もかかっているので、私も本気ですよ?
◇◇◇
翌日、今日は孤児院学校です。
まだ、試着の服が揃っていないので、家でお母さん1人でも大丈夫なはずです。
さて、今日は何をお布施にしましょうか?
やっぱり、以前と同じ『みかん』ですね。
キャロの時も2回持って行っても平気だったので、ダメなら親切なおっちゃん神官様が忠告してくれるでしょう。
さあ!いざ行かん!
「いってきまーす」
「気をつけてねー」
孤児院まで遠いので、巻きでいきます。
孤児院学校の受付です。
何故か、おっちゃん神官様と、初めて見るおじさん神官様がいます。
「おはよう。いらっしゃい」
何故かいつものおっちゃん神官様の朗らかな雰囲気ではなく……これは、おじさん神官様が、おっちゃん神官様を……監視、している?
だって、おっちゃん神官様の顔が強張っている。
私に何かを伝えようとしているように見えます。
しかーし!
私は逃げませんよ!おっちゃん神官様!
人を監視監督束縛したがるヤツはいつの時代にもいます。
私は、屈しません!
『暖簾に腕押し』作戦をしますよ!
そして、幼児に擬態する!
「おはようございます!きょうの、おふせです!」
布鞄から『みかん』を小さい手で、1個、2個、3個と置きました。
おっちゃん神官様が検品して「最高級品だね。紙をちょうだい」と私に言って、私はおっちゃん神官様に紙を渡します。
「そこのあなた。この『みかん』と言う物をどこで仕入れましたか?」
私は知らないふりをしようとしましたが、微妙に視線が合ってしまったので「うっ?」と首を傾げます。
「そこのあなたですよ。この『みかん』をどこから持ってきましたか?」
「う?いえから」
ムカつくでしょう。
ちょっとからかってやりますか。
おじさん神官様は続けて聞いてきます。
「家の前はどこから持ってきました?」
「う?いえからだよ?」
おじさん神官様のキレそうな音が聞こえてきそうです。
「だから!……いえ、質問を変えましょう。教会学校に通いたくは無いですか?」
「う?がっこうにきたよ?」
おじさん神官様の眉間のシワが凄い事になっています。
「お嬢ちゃん、紙を無くさないようにね。行ってらっしゃい」
おっちゃん神官様が助け舟を出してくれます。
「はーい!ありがとう!」
てててっと走り出します。
「ちょっ!待ちなさい!」
待つか。
ばーか。
おばあちゃん神官様の所にたどり着く。
木札を貰って、奥の部屋に走り出す!
後ろから大きな足音が近づいてくるんだよ!
粘着質な中年おじさんは嫌われるぞ!
「待ちなさい!」
1番奥の部屋に入って右に待機している若い神官様に木札を渡して、個室に行こうとすると、おじさん神官に肩を掴まれた。
触るなクソじじい。
「待ちなさいと言っているでしょうが!?」
怒鳴られたので、幼女は泣く場面でしょ?
前世のお父さんとお母さんが亡くなった時を思いだす。
「ひっくっ」
おおっ!子供ってすぐに泣ける!
青年神官様が心配そうにしゃがんでくれる。
「ひっくっ、ひぃっくっ、うっ、うっ、うっ」
お構い無しに後ろのおじさん神官が私を振り向かそうと肩に力を入れたところでーー。
「いっ、いたいっ!うわぁ〜〜〜ん!!」
「びぇぇぇぇ〜〜〜ん!!!」
と、大声で、泣く!!!




