事件 3
平民街までの長い道のりはカットします!
以前来た時に衛兵さんに教えて貰った1番平民街に近い、こじんまりとした古着屋さんに入る。
あ、前回の時に入った古着屋さんじゃ無いよ。
あれは少し大きな古着屋さんだから。
こじんまりと小さい古着屋さんに入ると、ごっちゃりとした服に出迎えられた。
「いらっしゃい」
店に入ってすぐの所にステラおばさんよりも若いおばさんが座っていた。
「あの、店主さんですか?」
「そうだけど?」
古着屋のおばさん改め、古着屋の店主さんは気軽に答えてくれた。
「平民街の子かい。うちにはあんたの大きさの服は扱って無いねぇ。もう少し大きければ良い服があったんだけどねぇ」
もう、耳寄りの情報が出てきた。
「あの、その服って、今日売られた夏服の上着6着とワンピース3着ですか?」
古着屋の店主は驚いた顔をした。
「何で知ってんだい?なんだい?あの兄ちゃんと家族なのかい?」
「違います。売ったのは男の人だったんですね?どんな人でしたか?」
古着屋の店主は嫌そうな顔をした。
「うちは古着屋だよ。客の情報は喋らない」
「その服が、昨夜盗まれた盗品だったとしてもですか?」
古着屋の店主がギョッとした顔をした。
「盗品なのかい!?」
盗まれた品は元の持ち主に少額で買い戻される事がある。
衛兵さんの保証がいるけどね。
「多分、私の家から盗まれた服です。この私が着ているワンピースの生成りではなかったですか?」
古着屋の店主は私のワンピースをマジマジと見つめた後に、くるりと後ろを振り返りゴソゴソした後に、見覚えのあるクリーム色のワンピースを出した。
「……同じデザインだ。っ、あーっ!やられた!貧民街のやつが、自分が着ている服より良い服を売りに来ておかしいと思ったんだよ!衛兵は来てんのかい?」
「いいえ、私、1人です。衛兵さんは来ていません」
「?衛兵がいないんじゃ買い戻せないよ?」
「いいんです。買い戻しに来た訳では無いですから」
古着屋の店主は怪訝な顔つきをした。
「じゃあ何しに来たんだい?」
「犯人を教えてもらおうと思ってきました。再犯の可能性があるそうです」
「あー、わかるわ。一度盗みに成功するとどんどん盗むんだよな。わかった!でも、売りに来た奴の情報を教えるだけだぞ?盗んだ犯人と売り子が違うこともあるが、それでもいいかい?」
「それで充分です。ちなみに今朝には不審な男性の目撃情報が出ているので、同じ人の確率が高いです」
古着屋店主は呆れた顔をした。
「それじゃあ「見つけてくれ」って言っているのと同じさね。今日この服を売りに来た奴はよく覚えてるよ。この臭い古着を「新品の服だ」って売りに来たから「嘘言ってんじゃ無い!」って、古着価格で買い取ったからね。こんな貧民街の臭いがする服を洗濯しないで新品は無理があるってもんさ!古着屋を舐めんじゃないよ!何十年店開いてると思ってんのかね?」
「店主さん、店主さん、話が少しずれてます。犯人の背格好とか年齢とか顔の特徴とかを教えてください」
「あ、ああ、悪かったね。えーっと背格好だったね。うーんと、普通の男より小さかったね。成人したばかりに見えたよ。あと貧民街の住民だね。顔はーー目が細くて痩せ気味だったよ。髪は長かったね。色は明るい茶色だった。あと、臭かったね。んー?これ以上は思い出せないや。悪いね」
この世界の成人は15歳だ。
犯人は、まだ成長期の可能性があるね。
「いいえ、かなりの情報が集まりました。ご協力ありがとうございます。
それと、その男が持って来た服が新品だったら、いくらで買取しましたか?」
「うーん、ちょっと、待ってな。……縫製は良いね。いや、良すぎるぐらいだ。よく見ると、この色も汚れじゃない。染色だ!えー?だったら、ぼったくりな値段で買い取っちまったよ!いや、盗品だから良いのか。う〜ん、これの新品ねぇ?生地は薄いから買取価格は750ルビくらいだねぇ。販売価格は1500ルビってところかな?納得したかい?」
「はい!ありがとうございます!ちなみに私の服と同じような染色した服はいくらになりますか?」
「お嬢ちゃんの服は綺麗だねぇ。買取価格800ルビくらいだねぇ。もちろんだが、新品価格だよ?古着屋の扱う新品は庶民の手作りだったりするから、安くなるんだよ。買いにくる人もそれが目当てだからね」
「じゃあ上着の値段は新品でいくらですか?」
「ちょっと、待っとくれよ」
また古着屋店主は後ろをゴソゴソとしてTシャツを取り出した。
「うへっ、食べ物が腐ったような臭いがするねぇ。……へぇ?これもよく見ると、えっ!?凄い縫い目じゃないか!?えっ!?こんなの、どうやって縫ったんだい?ふはー。これはお貴族様が着るような縫い目だねぇ。だけど、生地は、うーん普通?いや、よく見ると、どうやって織ってんだい?これも凄い技術だ。だが、デザインは平凡だ。寝衣かい?う〜ん、悩むねぇ。珍しい、だが、平凡なデザインだ。この店じゃあ、2、いや、それじゃあ売れないから、1800ルビだね。惜しいね〜。もっと高値で売れる縫製なのにデザインが残念!買取価格は900ルビだよ!」
私は高値に納得した。
古着屋店主はプロだ。
細かい裁縫まで良く見ている。
「じゃあ、また今度、その値段で売りに来ます。ワンピースが800ルビで、上着が900ルビですね。約束ですよ」
「はあ!?」
古着屋店主のおばさんの顔が崩壊した。




