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お母さんの家名

「ねぇ、なんでお母さんは家名を持っているの?」


 水をちびちびと飲んでいたお母さんは「すっごい驚いてます!」という顔をして私を見てきた。


 普段落ち着いているお母さんからは想像できなくて、聞いちゃいけない事を聞いたかな?と、もじもじしちゃう。


 チラッチラッとお母さんを見ると、「あー、うー」とかなり悩んでいる様子。


 そういや、異世界転移物とかで『家名を買って一代貴族』とかもあったなぁ。

 それかなぁ?死んだお父さんが買ったとか?私の名前の後ろにも()がついてるからね。

 私のは正式じゃないんだなぁ。きっと。


 覚悟が決まったのか、お母さんが子供の私に上目遣いをしてきてもじもじしてる。

 さっきの私みたい。

 ふふっ、家族だね。


「チヤ、誰にも言っちゃ嫌よ?内緒だからね?お母さんと約束出来る?」


 私はすぐに返事する。


「うん!出来るよ!」


 お母さんは目を瞑ってから、カッと目を開けて見つめてきた。


「お母さんね、貴族の娘だったのよ。今は平民だけどね?チヤも平民よ?」


「だから今もステータスから消えないの?」


 お母さんは困った顔をした。


「そこが不思議なのよねぇ?貴族から抜けたら家名が無くなるはずなのに消えてないのよねぇ?あ、でも、今の家名はお父さんのものよ?」


 私はある可能性に気がついた。

 そして、それを素直に言う。


「お母さん、まだ貴族なんじゃない?」


「ええっ!無断で家を出てお父さんと結婚したのよ?ぶつぶつ、もしかして、お父様もお母様もまだ私のことを探している?家族だって思っているってこと?」


 お母さーん。全部聞こえてるからー。

 無断で家を出たって、お父さんと駆け落ちですかー?

 お父さんは平民とか?いや、家名があるから違うのかな?それとも貴族の3男とか4男とか?身分違いの恋ですか?出会いはどこですか?

 と、乙女の心を持つ私は聞きたいけど我慢をしているのです。

 人の恋バナってワクワクするよね?


 ◇◇◇


 っとまぁ、たらたらとお母さんと臭いベッドでゴロゴロしていると、なんとなぁく寝なくても魔力の回復が早い気がしています。

 そして、寝ている時はわからなかったけど、お母さん痩せすぎです。

 やっぱり1日一杯のゴブリン麦がゆはお母さんの寿命を縮めてしまいます。

 なんか前世で「1日2食でいい」とか言う人もいたけれど、私は『1日3食』食べたいんです!飽食時代の日本人思考だからね!


 そして多分、お母さんと私の胃袋は大変小さくなっていると予想しております。

 この貧民街の痩せている人よりも、もっと痩せています!

 ここの貧民街の人は「無駄な肉が無い」体つきだからね?凄くエコな体つきなのです。

 それと違って私とお母さんは『不健康』な体つきです。寿命を削っています。


 今日の晩御飯は何にしましょうか?

 あーっ!私の体が幼児で無かったら火が使える料理が出来たのにーっ!消化の良い『雑炊』や『お粥』を作れたのに〜!!口惜しや!


 またパンに何か挟むかなぁ。


 おっ!魔力が回復してゴブリンの肝が買える!

 さささっとお皿を取りに行きます。

 ゴブリンの肝は新鮮な生物(なまもの)ですからね!


 通販を開いて、カゴに有る商品を購入します。

 おう、残りの魔力が56ポイントしかない。

 魔力調合をしたいのに魔力が無いのでアイテムボックスに肝を入れて、またお母さんの隣でゴロゴロします。

 お母さんが私を寝かしつけようとします。

 むっ、そんな事で私を寝かしつけようとしても無駄ですよ。

 いっぱいお昼寝しましたからね?もうすぐ晩御飯です。ご飯はちゃんと食べないと体に必要な肉がつきませ……ん……よ……。


 魔力が少なくなると眠くなるのを忘れていました。


 ◇◇◇


 ムクリ。

 またです。

 また、変な時間に、夜中に起きてしまいました。


 よし!今こそレッツ調合です!

 調合を!したいんだがぁ!真っ暗で見えません!部屋の中が真っ暗です!

 しかし、窓の所に!月明かりが!かすかに月明かりが!


 足音を立てないように、抜き足差し足。


 ギィ、ギィ、ギィ。


 ダメです。

 ボロ屋の貧民街には無理な事でした。

 開き直りましょう。

 堂々と歩くのです。


 窓の下に座ってアイテムボックスから薬の素材を取り出します。


 うん?どうやって魔法調合したら良いのでしょうか?


「魔法調合?」


 呟くと体から何かが抜け出していき、素材達が動き出しました!

 ふわっと宙に少し浮かぶと、まずは粉々になった上薬草とツムギ草が瞬く間に融合しました。

 それから聖水が器から飛び出して混ざり粘土のようにクネクネと動いています。

 その後にモーズの肝がミンチのようになって粘土ではないと融合します。

 最後にゴブリンの肝もミンチのようになって大きな粘土に合体してまるでパン生地のような見た目になり、一瞬光った後に聖水の入っていた器に丸薬のようになって山盛りに積み上げられていました。

 出来上がりのようです。


 まずは、鑑定、ですね。


●バルスス病の特効薬(30錠)

1日3回、出来れば食後に1錠飲むこと。全て飲みきれば10日で完治する。飲み忘れたならば、その日からまた10日間飲み続ける事。


 とりあえず飲み忘れたら全て水の泡なのですね。

 お母さんに頑張って飲んでもらいましょう。

 丸薬の状態で良かったです。

 ゴブリンの肝など、どうやってお母さんに食べてもらおうかと考えていましたから。


 それと、今度から魔法調合する時は必ず器が必要ですね。

 聖水の器があったから良かったですが、もう少しで溢れそうでしたからね。

 土足の床に落ちなくて良かった!


 おっと、確認をしなければ。


「ステータスオープン」


名前 チヤ(ハースネル)

年齢 5

体力 15

魔力 2012

スキル 鑑定 通販レベル1 アイテムボックス(時間停止、容量∞) 薬剤調合 鑑定阻害


「……多分、魔法調合で500魔力、使った、かな?」


 端数は、魔力が増えた、の、かな?それとも、回復したのかな?

 わからん。


 まだ、魔力が2000はあるから、明日の食べ物や飲み物を買ってしまおう。


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