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事件 1

 夕方に家にノックの音がしたので、お母さんが出ると、そこには大勢の汗臭い男達がいた。


「ここで服を買えるんだって?」


「ええーっと、服の注文をしていただいてから、服をお届けします」


 お母さんがちょっと引いたように対応してくれた。


「おう!俺たちは第2地区のもんだが、配達してくれんのか?」


「はい。服と代金の引き換えなので、家にいる時間をお聞きしますが……」


「お、おう。それは、いいんだがよ。なんだか丁寧な言葉を使われると、困っちまってよ……」


 お母さんが困った顔をした。


 元貴族令嬢だからね!

 粗野な言葉は使えないのさ!(チヤの心)


「と、とりあえず家に入ってもらって、服の大きさを確認しますから……」


「お、おう、そうだな!時間もないし」


 ゾロゾロっと男達が入ってきて、推定7畳の部屋の中が男臭く、汗臭い臭いになった!


 「おえっ」と来そうな臭いだ。

 発酵している。

 臭い具合に。


 お母さんは頑張って、男達の相手をしている。


 私はベッドに染みついたお母さんと私の臭い臭いに包まれます。

 ベッドの臭さの方が、まだマシだ。


 若い女性(お母さん)の臭い臭いと、幼女(私)の臭い臭いだからね。

 くさいにおいと読む。

 てへっ!解説。


 私は注文のあっただろう安いワンピースを通販で買ってから、布団の中でじっとしてした。



 と、いうわけで、日が暮れる前に注文を終わらせた大量の男どもは、臭い臭いだけを残して去っていった。


 この臭いの中じゃ食欲が湧かないぜ。


 玄関の扉をオープン!にして、家の中に消臭剤を撒きまくる。


 ん、すんすん。

 いくらかマシだ。


「お母さん!夕食!」


「あ、そうね。お母さん、今から作るわね」


 あれ?日暮前だからかな?お母さんの顔が、くすんで見える。


 嫌な予感がして、お母さんの顔をジーッと見つめると、唇の血色が悪いのに気がついた。


 お母さん!体調不良じゃん!


 料理しようとするお母さんの手をベッドの方に引っ張る。


「お母さんの体調が悪いよ!私がサンドイッチを作るから、お母さんは寝ていて!」


「……そうね、お母さん、ちょっと頭がふらふらするわ。悪いけど、食事はお願いね」


 お母さんも自覚があったようで、すぐにベッドに横になってくれた。


 あっ!お母さんの靴を買っていない!まだ、ぞうりを履いている!

 もう!すっかりと忘れていたよ。


 それよりも、サンドイッチを作って、お母さんが寝る前に食べてもらわないと!


 子供の小さな手で、失敗しないように一生懸命サンドイッチを作って、お母さんに持って行くと、お母さんは寝ていて起きなかった。


 (気絶したんじゃないよね?寝たんだよね?)


 お母さんの為に作っていたサンドイッチを自分の晩御飯代わりにして食べてから、お母さんの寝ている隣に潜り込んだ。


 お母さんが心配でハラハラとしていたけれど、疲れていたのか、いつのまにか熟睡していた。


 ◇◇◇


 その夜、ギィ、と音を立てながらチヤの家の扉が開いて、誰かが家の中に入って来た。


 室内を見た後に道具箱の方に行って中を物色し、服を数着手に持ち、ベッドの下を漁って小箱を取り出して中を見ると、銅貨が数十枚入っていたので手に取り、そのまま家を出て行った。


 深夜の貧民街の家で起きた犯行は誰にも見られなかった。


 ◇◇◇


 チヤは平和ないつもの朝を迎えていた。


 お母さんの顔色は……うん、陽当たりが悪いけど、普通の顔色になっていると思う。


 はぁぁぁぁー!良かった!

 服の注文を受けるのがしんどかったなんて思わなかった。

 何か、対策を考えないと……。


 あ、お母さんの目が覚めた。


「あ、チヤ? おはよう……」


 ふにゃり、とお母さんが笑った。


 きゅん!

 美人のふんにゃり笑顔!もらいました!


「お、おはよう。お母さん。体調は大丈夫?」


「うん?ゔーーー、多分、大丈夫」


 あー、いけないなコレは。

 無理させちゃいけないやつだ。


「私が朝食を作るから、お母さんは寝てて良いよ!」


 そろりとお母さんの隣から抜け出して、ペットボトルから水瓶へ水を注ぐ。


 それからトイレ行ってから手を洗って顔を洗い、歯磨きをして、材料を出してサンドイッチを作る。


 すみませんねぇ?幼児はサンドイッチしか作れないのですよ!本当は包丁も危ないけど使っているよ!


「お母さん、サンドイッチだけど、食べられる?」


「いただこうかしら」


 お母さんにお水が入ったコップを渡した後に、大きなサンドイッチを渡した。(食パンの四角のまんまだよ)


 お母さんは一個食べただけでお腹いっぱいになったらしく、トイレに行ったあとに、また、ベッドに横になってしまった。


「チヤ、孤児院学校に行ってらっしゃい。お母さん、家でチヤが帰ってくるのを待っているから」


「本当だよ?体の不調が治るまでは安静にしていてね」


 お母さんは私の言葉にくすくすと笑った後に「気をつけて行ってきなさい」と言って見送ってくれた。


 私はカモフラージュの布鞄をアイテムボックスから出して、みかんを4個通販で買ってから布鞄の中に入れて家の外に出た。


 歩いて1時間か〜。

 ここでチートな能力で空を飛ぶとか、転移が出来るとかないかな〜?

 異世界主人公あるあるなんだよー。


 と、考えながらのんびりと歩いた。

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