異世界にも雨は降ります
今日は孤児院学校です。
しかし、今日は生憎の雨で学校は中止のようです。
理由は「貧民街の住人は雨具を持っていないから」だそうです。
あれですね。
『濡れ鼠は孤児院に入ってくるな!』ですね?
しかし、こんな雨の日にも、貧民街の男たちは働かなくてはいけません。
場合によっては女性も。
ずぶ濡れになって雨具をつけている平民と一緒に働かなくてはいけないのです。
世知辛い世の中です。
しかし、お母さんに聞くと「土砂降りの時は仕事はお休みよ?」と言っていました。
今日は、しとしとの雨なので「働ける」という判断のようです。
私の心配事は、玄関の段差が外とあまり変わらない事です。
今は土が雨水を吸い取ってくれていますが、雨足がもう少し強くなったら家の中に雨水が入ってきそうです。
浸水ですね。
まさか、貧民街にこんな危機があったとは盲点でした。
今日は静かに注文のあったTシャツをコツコツと購入しましょうかね。
「ほんっとうに!このバナナって、おいしいわよねー!」
「ねー?」と私に同意を得ようとするお母さんは可愛いです。
いや、どちらかと言うと美人さんの部類の顔をしているのですが、性格が可愛いです。
とにかく、雨の日でも食欲のあるお母さんは素敵です。
早く健康になりそうな予感がするので、暇な今日はお母さんの頭を洗ってもいいでしょうか?
今日はもう、Tシャツを購入して、食料品を買ってしまったのでポイントが、魔力がありません。
しかーし!
昨日、私は3000ルビを儲けたのですよ?
お母さんの頭を洗う為の敷布や道具を買う事が出来ます!
まずは最も必要な『介護用洗髪台』を買います。
これは画期的で、寝たままで髪を洗う事が出来ます。
お次は『敷きパット』です。
勿論防水です。
これでお母さんの髪が洗えますよ!
それについでに私も行水しましょう。
あ、ちゃんとシャンプーと薬用固形石鹸で洗いますよ?
雨で肌寒いですが、今日の予定は無いので、行水後はベッドでぬくぬくと寝ていても大丈夫なのです。
それに、以前ゴッソリと身体の垢を取り除いたので、今回は苦労しないはずです。
と、いうわけで、お母さんの髪を洗う準備をして、と。
「お母さん!ここに横になってください!頭を洗いますよ!」
シャンプーと2Lペットボトルと、今回は500mlの水も用意しました!
大雑把にシャンプーを流すのは2Lの水で、丁寧に洗い流す時は500mlの水で洗い流します。
これで、5歳児の私でも大人のお母さんの頭を洗えます!
完・璧!です。
「あらぁ?ここに横になるの?」
「そうです。こんな感じです」
私が見本に寝転びます。
お母さんは納得してから寝転びました。
お母さんの高い位置にあった頭が目の前にあります。
ギトギトの、硬く固まった、手強そうな、髪、です。
しかも、臭いです。
女の人からしていい臭いではないです。
私は2Lペットボトルの水をお母さんの頭にぶっかけました。
◇◇◇
それからは大変でした。
私は、また、5歳児の体力を舐めていたのです。
子供の頭と大人の頭は重さが違います。
ちなみに、お母さんの頭は長年の皮脂と汚れとギトギトの脂汚れとほつれと伸びっぱなしの髪の毛で、もわもわのゴワゴワの髪の毛です。
そうです。
こんな頭を洗おうというのだから、普通に考えて一筋縄ではいかないのです。
まずは髪の毛に水を含ませる所から始まりました。
使い終わったら捨てるつもりで安いプラスチック製のコップを買って、頭の下に溜まった水を、何度も何度も何度も何度も!お母さんの頭に流しました。
茶色の汚水が溜まってしまったので、一度シャンプー液をお母さんの髪の毛につけてから洗い流して、お母さんの髪の毛をタオルで包んで起き上がらせてから、トイレの中に汚水を捨てて、再度!お母さんの髪を洗うのにチャレンジ!です!
次は茶色の汚水は出てきませんでしたが、シャンプーが泡立ちません。
何度も、何度も何度も何度も何度も何度も!シャンプー液を髪に馴染ませて血の滲むような私の頑張りの果てに!ようやく、シャンプー液が泡だったのです!
これなら安いシャンプーを使っておけば安上がりにすんだと思ってしまいました。
滝のような髪の毛を丁寧に洗いながら、お母さんの頭皮をマッサージするように洗っていきます。
ちょっと、幼児の手が限界を迎えそうだったので、頭皮ブラシを購入してお母さんの頭を洗います。
「……あらー、気持ちいいわー」
いけません。
お母さんがあまりの気持ち良さに寝そうになっています。
仕方ないです。
今日はこれぐらいで勘弁してやります。
もう一度汚水をトイレに流してから、通販で『洗い流さないトリートメント』を購入して、丁寧にお母さんの髪の毛をブラシでとかしてから髪の毛先を中心に揉み込んで、また髪の毛をとかします。
完・璧!です!
お母さんの髪の毛に艶が出て、綺麗なさらさらの髪の毛になりました。
小さい箒と塵取りを購入して、髪切りバサミも購入します。
お母さんに椅子に座ってもらい、長いストレートのばらばらの長さの髪先を綺麗に見えるようにカットしていきます。
えっ?カット出来るかって?
私を舐めていませんか?
甥っ子と姪っ子の髪を切っていたのは私ですよ?
当然の事ながら他人の髪の毛を切るのには慣れています。
お尻の下まで伸びていたお母さんの髪の毛を腰の高さで切り揃えます。
凄い毛量です!(お母さんの髪は栄養不足で少ないはずなのに)
「あらー?何だか頭が軽いわー?」
そら軽いはずです。
長年の汚れと髪を切りましたから!
後は後片付けです。
椅子の上でうたた寝を始めたお母さんは放置して、ゴミをトイレに捨てに行きます。
やっぱり、何でもかんでも消化吸収してくれるスライムさんは偉大でした。




