お母さんの薬を作りましょう
お母さんの咳が落ち着いたけど、衰弱状態だから栄養のある物を食べさせないと。
通販でぽちぽちして野菜ジュースを買う。1本100ポイントね。安いんだか高いんだか。
日本のパックのままだと不審だから木のコップに注ぎ直して、日本製のパックはトイレのスライムに消化してもらう。
「お母さん、これ、野菜ジュースだよ。飲んで」
お母さんがモゾモゾと起き上がって疲れたような顔でコップを覗き込む。
そして、ちょっと不思議そうな顔をする。
「野菜ジュースなんて、高級な物……どうしたの?」
お母さんの声が硬いよ。
大丈夫。盗んでないからね。
「これ、私のスキルで出したの。飲んで、お母さん」
途端にお母さんが驚いた顔をして「嘘っ!?」って驚いた。
むっ!嘘じゃないやい。
「嘘じゃないよ!昨日はパンも食べたし!」
「昨日!?あっ!ああっ!昨日がチヤの5歳の誕生日だったのね!?まさか、1人で教会まで行ったの!?酷い扱いをされなかった!?お金は持って行った?」
教会?なんで?
「チヤ、教会行ってないよ。自分で見たの」
ああ、感情的になると5歳の言葉使いになってしまう。
「ええっ!どうやったの!?」
「ステータスオープンってしたの!」
ああ、お母さんに言葉使いがつられた。
って言うか、野菜ジュースのコップが5歳児には重たいから早く受け取ってくれ!
お母さんはぶつぶつと呟いている。
「嘘。本当に見える。ステータスボードが見えるわ。私の子、天才じゃないかしら。あら、私、バルスス病なのね。有金はたいたら治る病気だわ」
もう!私、怒っちゃうんだからね!
「お母さん!飲んで!」
お母さんは、ハッとした顔で私を見た。
「ごめんね。ありがとうね。野菜ジュース?を貰うわね」
「はい!」
お母さんは私からコップを受け取って「あら?苦くないわ?」とゆっくりと飲み干した後に、またハッとなって聞いて来た。
「お母さん全部飲んじゃったわ!チヤの分は?ある?」
私は「うん!」と頷く。
「チヤは子供用の野菜ジュースを飲むの」
大人用は子供舌にはまだ早いのだ。
あっ!多分、お昼を大分過ぎてるから、栄養のあるお腹に溜まる物をお母さんに食べさせないと!
また部屋の隅に行って、こっそりと通販画面をぽちぽちする。パンが主食だよね?でも、栄養があるのは和食だけど、完成品は売ってないし、5歳児が火を使って料理出来ない。
ここは野菜サンドで妥協するか。
野菜を買って、ハムも買ってマヨネーズも買ってサンドイッチ用のパンも買う。
よし!これなら野菜を挟むだけで野菜サンドが作れる。
2人掛け用の机の上に乗って、料理?とも言えない調理をしていくが、切れ味の良い包丁なんて無いから、四角いままでお母さん所に持っていく。
ビシバシとワンルームの中でお母さんの視線を感じてたからね。
作ったサンドイッチをお母さんの所に持っていく。
「はい!お母さん食べて!食事ですよ」
お母さんは不思議そうにしながらも受け取ってくれた。
「ありがとうね。チヤの初めての料理?かしら?」
パクッと端を食べただけで驚いている。
まだ具にたどり着いてないよ!
私はワクワクとお母さんの一言が欲しくてソワソワしちゃう。美味しい?美味しい?
「あら?これは……新鮮な野菜?王都で王族貴族以外が手に入ったかしら?あ?あら?これは、この味は、薄いけど……ハム?生ハムかしら?」
なんか、お母さんは「美味しい」よりも『研究者』の顔をしてサンドイッチを食べつくした。
私はソワソワが我慢出来なくなっちゃって自分から聞いた。
「お母さん!どうだった?美味しかった?!」
「あっ、ええ、そうね!すっごく!美味しかったわよ!ありがとうね。チヤは料理も上手いのね」
「へへ、へへへ」っと照れ笑いをして嬉しさを隠しきれなくなってしまった。
ほっぺを押さえてイヤンイヤンと喜んでいると、お母さんから優しく頭を撫でて貰って、照れてベッドに顔を埋めてしまった。
臭い……。
◇◇◇
私もサンドイッチを食べた後に、片付けをして残りの食材はアイテムボックスにしまい、通販を開いた。
お母さんの薬に必要な物は『モーズの肝』と『ゴブリンの肝』。
昼食の残りの残高が1056ポイント。
『モーズの肝』100ルビしか買えない。
仕方ないからモーズの肝だけ購入して、後は魔力の回復を待つとしよう。
あ、ルビは円と同じね。
ソレイユの言い方です。
1000円=100ルビです。
何故か私の魔力が『円』と等しいナゾ。
ルビだったら良かったのに。
ん?なんか少しずつポイントが回復している。
もしかして、呼吸して『魔素』を取り込んで魔力にしてるのかな?
少し調子が良いのか正面に座っているお母さんに聞く。
「お母さん、魔力の回復を早めるにはどうしたらいいの?」
「そうねぇ、寝るのが1番かしらねぇ。何故か熟睡すると魔力の回復が起きているより早いのよ」
「ふおおおお!」
異世界あるあるですな!興奮します!
でも、さっき昼寝したから眠くありません!どうしましょう!
そういや、平民は家名を持っていないんだよね?でも、お母さんは家名を持っている。
これも聞いてみましょう。
「ねぇ、なんでお母さんは家名を持っているの?」