商業ギルドに行きましょう
昨日の夜に悩んで購入した日本でもロングセラーの固形石鹸を購入して、残りのポイントをバナナの購入で使いきった翌朝。
朝食の後のお母さんにバナナの食べ方を伝授しております。
「やだー!すっごい甘くて、ねっとりしていて、おいしー!」
すっごく、お気に召してくれたようです。
「やだー!こんなの初めて!チヤちゃん!お母さんに何個かちょうだい?」
若ママの美人ママにきゅるん!と言われたら敵わなねぇぜ。
昨晩、購入したバナナをどっさりと机の上に置いた。
お母さんは目を輝かせている。
ヨシッ!狙い通りだ!
お母さんを元気にさせようぜ!作戦成功だ!
私は朝の魔力満タンのポイントを使って、変装用の服と髪飾りを購入した。
うん。豪華に見える。
アイテムボックスにしまって、水分補給をしてからお母さんのお昼の食材だけ机の上に出して「いってきまーす」と元気に出かける。
お母さんは部屋の中でリハビリという使命があるので、1人で商業ギルドまで行くのだ。
平民街まで行ったら、そこら辺の人を見つけて商業ギルドの場所を聞こう。
◇◇◇
ふふっ。
今が春で良かったぜ。
ほぼ1時間かかって教会の前に来たぜぃ。
キョロっと、周りを見回して、ターゲットをロックオンする。
露天市場のおばちゃん発見だぜ!
商業ギルドで販売許可証を発行されていると見た!(想像)
「きゅるん!おーばちゃん!」
「おや、どうしたんだい?可愛い子だねー」
「あのね、しょうぎょうぎるどの、ばしょを、おしえてほしいの」
きゅるん!きゅるん!
幼女の可愛さでおばちゃんの胸をキュンとさせちゃうぜ!
「ああ、商業ギルドだね。お父さんとでも待ち合わせかい?」
「そうなの!じかんをあけて、いえをでたから、わからないの」
おばちゃんが顔をでれっとさせた。
「あのね、ちょっとわかりづらいかもしれないけど、この大通りをずっと真っ直ぐに行くんだよ。お嬢ちゃんの足だとすっごい遠いと思うけど、道に迷ったら大人に聞きなさい。白くて大きくて人通りの多い建物だからね」
「ありがとう!おばちゃん!ばいばい!」
おばちゃんも「ばいばい」と手を振ってくれた。
遠いのか。
王都がデカいのか。
私の足が短いのか。
うん、わからん。
子供スケールは、全てのものが大きく見えるので、私は小人の気分です。
まぁ、朝早くに出て来たので観光がてら歩きますか。
◇◇◇
と、まぁ、初めは気軽に歩き始めましたよ?
しかし!
「これは、いくらなんでも遠すぎる。通り過ぎたのでは?」と、通行人に聞いてみたところ「ああ、ここを真っ直ぐに行った馬車が多い建物だよ」と教えてもらった。
馬車が多くて白くてデカい建物。
馬車が多くて白くてデカい建物。
頭で唱えてないと自信を無くす遠さです。
ヒィィ。
あれ?今、動物の鳴き声が聞こえたような?
多分、近い!
きっと、商業ギルドまですぐです!
なんだか、教会並みに大きな建物が見えて来ました。
いや、うそ? え?え?え?ええーっ!?
でっかい!
教会より大きい!
馬車が職員の誘導で動いていて、人が入っては出てくる。
いや、吐き出されてくるように、満員なのが想像できます。
あれですね。
凄い混んでいる役所を想像したらいいですね。
もしくは人の多い普通診療をしている大病院ですね!
ふっ、日本の現代日本に生きて来た私には慣れた人混みですね!
いざ、行きましょう!
歩いて入り口に入ろうとして……商業ギルドの職員らしき男性に止められました。
「お嬢さん、誰かと待ち合わせかい?」
幼女に擬態するのは辞めます。
ここでは、利発なお子様を演じるのが良いでしょう。
「トイレを借りに来ました」
「そうかい。ここを入ってすぐ右にトイレがあるからね?男と女が別れてるから、間違わないでね?」
「ありがとうございます」
ふぅ、止められた時は焦りましたが、スムーズにトイレの場所を教えてもらえました。
やりましたよ!
ふむ、右に通路があります。
すぐに看板が有り、トイレが複数有り、聞いていた通りに男女でわかれています。
扉を開けると、そこは……!
◇◇◇
ふう、なかなか良いトイレでした。
ドレスの女性でも使用できる大きさのトイレでしたね。
現代日本には負けますけどね!
そして!富裕層の幼女に擬態完成!です!
可愛い花が織り込まれたふんわりとしたワンピースに、色ガラスがキラキラとしたバレッタで髪を纏めて。
何処からどう見てもお嬢様ですね!
髪の毛が少ないですが。
受付はどこでしょうか?
人の流れに身を任せると、人が並んでいる列を発見しました。
すかさず最後尾に並びます。
日本人のサガなのか、行列ができていると並びたくなってしまいます。
そして、大人ばかりだから子供の私は埋もれそうです。
それに『圧倒的!男!』が多いです。
いえ、女の人もいますが、少数派です。
それと、ほとんどの人がガリガリ族では無いです。
むしろ、ちょっと肥満体型です。
お金持ちなのでしょうか?
それよりも情報収集です。
私は、くるりと後ろを振り返り、驚いている標準体型の男性に質問します。
「不躾に申し訳ありません。貴族の方が使われている固形石鹸のお値段を知っておられますか?」
少し若い男性は驚いていたが、真面目に答えてくれた。
「あっ、ああ、貴族様が使っている固形石鹸は取り扱っているから分かるよ。1つあたり1000ルビから1万ルビくらいの値段かな?」
私は誠実に答えてくれた男性の全身を素早く見た。
言葉は誠実。
商人としては若いけれど、顔も雰囲気も誠実そう。
何より身なりが良いし、太ってない!(これ重要!自己管理が出来ているって事だからね!)
「仕入れ値はいくらですか?」
若い男性は苦笑した。
「それは、いろいろかな?品質で買取価格が変わるから。それに、製造者が違うと同じ石鹸でも等級が変わってきてしまうからね。時には買取を断る品質もあるくらいだ。どうしてそんな事を?」
「いえ、今後の情報収集に。
もし、私が大量に固形石鹸を売りたいと言えば、あなたは取り引きしてくれますか?」
若い男性は驚いた表情をした。
「君にそんなツテがあるとでも?」
「実は内緒なんですが、母が元貴族令嬢なのです。ツテだらけですよ」
嘘ですが、金持ちの娘を装おうのは大事です。
足下を見られませんからね。
またまた若い男性は驚いた顔をした後に、私をジロジロと見てきた。
すっごい!見ています。
と、視線を悟られるようでは、まだ、若いですね。
「……いいだろう。まずは商品を見せてもらおうか?話はそれからだ」
「このまま並んでいてもいいのですか?」
「受付はこの列だ。商談部屋を借りよう」
「あなたのご用事はいいのですか?」
若い男性は肩をすくめた。
「定期的に商業ギルドを訪れて、遠方からの珍しい商品が入ってないか、確認するだけだ。
君という商材に出会えたから、目的としては達成しているかな?」
「そうですか。いろいろ教えていただきありがとうございます。順番を変わりましょうか?」
「いや、一緒に並んでいる事にしよう」
「分かりました」
よっしゃ!
交渉は初めてだけど、商業ギルドに中抜きされない値段で交渉してやるぜ!(意味の無い自信)