優雅?な朝 3
とにかく朝食が食べ終わって、お母さんが骨と皮の手で我が家に唯一有る鍋(油汚れ付き)を洗おうとしたので、少し回復した魔力と現金で食器用洗剤とスポンジを購入して使ってもらった。
「あらー!汚れがするんと落ちるわー!」
ようござんした。
私はお母さんの横で胸を張っていた。
私が褒められたようで嬉しかったのだ。
うむ!文明の力は凄いぞ!
ガタッ。
む?
音の鳴った足元を見てみると、排水箱の中のスライムが動いたようだ。
ーースライム君には食器用洗剤の刺激が強かったかい?
スライムは攻撃されたら酸を吐くと言われているが、攻撃しなければ子供でも捕まえられる魔物で、基本的には無害だ。
まさか、食器用洗剤が攻撃だと思われた?
ジーっと、排水箱を見ていても、あれ以来動いた様子はない。
大丈夫かな?
椅子に座って通販画面を開く。
何故かフェイスタオルと身体を洗うタオルが必要だと感じたのだ。
ついでに豚毛の櫛も買おう。
あれ?通販がレベル2になってる!何か変わった?
ステータスを出して『通販レベル2』を鑑定する。
●通販レベル2
簡素な魔道具が買える。
おお!魔道具!さっそく『魔道具』で検索だ!
どんな物があるのかな〜?
水を出す魔道具。
火を出す魔道具。えっ!コンロに良いじゃん!今、家、薪なんですよ!値段はーー? え?見間違いかな?
上に顔を上げて深呼吸する。
通販画面に視線を戻す。
火を出す魔道具 30000ルビ
ふーっ。
落ち着こうか、ベイビー。
3万ルビって何じゃっ!!
30万円て事だろがおい!?
どこが簡素な魔道具だよ!?
立派な魔道具だよ!!
でも、欲しいよ〜!
何か!何か、金策をせねば!
あ!確か、貧民街市場があったはずだ!え〜と、商業ギルドに登録出来ない人ばかりが集まった市場ーー。通称『闇市』。
名前は物騒だが、貧民街の住民の為の市場で、見習い職人が作った試作品なんかや、日常の食糧品を売っているはず。(普通の平民に売れなかった品)
必ずしも商業ギルドに加入しなければいけないなんて事は無くて(村の内職物や作物を売る人も商業ギルドに入ってないから)、冒険者ギルドから仕入れる肉類には税が加算された値段で貧民街市場に流れてくる。
布や金属製品は贅沢品で値段が高く、フリーマーケットなんかを想像したらいいはず。
基本的に誰でも出品していい。
家で使い物にならなくなった金属鍋などを見習い職人に買ってもらって、その分割引してもらい新しい鍋をそこで買うんだとか。
まぁ、自己責任で買い物してください、って所だ。
商業ギルドに加入していないから、詐欺やぼったくりがあっても商業ギルドが仲裁してくれない。
その代わりに、衛兵さんを呼んできて互いの言い分や目撃者の話を聞いて示談で騒ぎを収めるらしい。
あまりにも悪質なら手配書を作成して人相を詰め所の掲示板に貼り付けて注意喚起する。
あ、もちろん貧民街にも衛兵さんの詰め所はあるよ?
いくら『貧民』だと言っても必要労働者の集まりだから、王都からいなくなられても困るし、不審火や火事なんかが起きたら、真っ先に駆けつけて消火活動や犯人を捕まえなくてはいけないから、貧民街の人は衛兵さんに顔を覚えてもらって、犯罪などから助けてもらう。
まあ、多分、老衛兵さんばかりだから左遷先なんだろうなぁ、とかは思うわけですよ。はい。
その代わり一部の衛兵さん以外は基本的には優しい人ばかりですよ。(独り身の人は貧民街まで通うのが体力的に疲れるから貧民街に住んでいる人もいる)ご近所さんだね。
よし!まずは貧民街市場に行こうかな。
何か金策が見つかるかもしれないし。
それと、普通の店に行って品物の平均価格とか見てみたい。
塩とか胡椒とかって異世界あるあるの金策だよね?相場を知らないと転売とかされたりして私が損しちゃう。
その為に必要なのは。
よし!身なりを整えよう。
服は新品だから良し。平民に見えるはず。
靴も新品だ。
ダメなのは汚れと匂いだ。
私は多分、赤ちゃんの時は身綺麗にしてくれただろうけど、4年くらいの垢はついていると思う。
それと匂いはどうしても感じてしまう。
もう染み付いてるからね。
お母さん用に買ったシャンプーと石鹸とボディタオルだけど、私が先に使わせてもらいます!
それと、気分が乗ってしまって「お母さんと出かけよう!」とか思っちゃったけど、お母さんは2日前に倒れたばかりの病み上がりの衰弱状態!家でお留守番です!
さてさて、現金4000円で購入出来る風呂桶はあるかな?
通販画面を見て『風呂桶』で検索すると、小さい桶ばかりが出てきた。
何となく分かってたよ。
でも!いいんです!私は5歳児!小さい桶でいいんです!
お母さんの風呂桶が遠ざかるけど、金策の為です。
とりあえずの目標は『お母さんを標準体型にすること!』
これが一番です。
標準体型になれば、おのずと元気になるはず。
体力もついて、毛量も増えて、爪も綺麗になるはず!
それには心の余裕として金銭がいります。
前世でもそうでした。
富裕層は何故か雰囲気が違いました。
貧乏はそういう同族意識みたいなのがありました。
はい、そうです。
貧乏はなんとなく分かってしまうのです。
今でも私が身綺麗にして平民と同じかそれ以上に良い匂いをさせていても、薄い髪の毛はすぐに元に戻りません。ガタガタの爪も綺麗にはなりません。
歯も磨いてこなかったから、茶色の色はすぐには取れないです。
でーすーがー!
【通販】!!
チート能力を授かりました!神は貧民を見捨てなかったのです!




