子供のフリをしましょう 3
孤児院学校の教室の個室で腹ごしらえをした後に、もう一度、復習してから、小さな黒板みたいな物に文字を全部書いてから授業は終了した。
その後に、おっちゃん神官様に貰った紙に何かを書いて渡してもらった。
エルミ様が優しくて、バブみが出るところだった。
本気で幼児帰りしそうになり、危なかった!
エルミ様は癒し系イケメンなお顔で見送ってくれた。
優しい。
「バイバイ、エルミ様!」
「バイバイ、お嬢ちゃん」
満足の孤児院学校だったが、来る時には騒がしかった各教室の扉が閉められていて、自分の足音しか聞こえない。
孤児院学校は不思議な所だった。
孤児達と一緒に勉強するのかと思えば個人授業だったし、どうやって部屋割りをしているのかも不思議だ。
(私の部屋は入った時から静かだったーー何故だ?)
私が初回だったから?人柄を見る時間は無かったはず。
きっと、あのおっちゃん神官に貰った紙に何かが書いてあるはず。
だって、おばあちゃん神官様はその紙を見て木札を渡して部屋を案内したから。
ああ!早く紙を見たい!けど!まだ孤児院内なんだよ!
短い足が憎い!
受付のおばあちゃん神官様は居なくなっている。
出口が近づくと、おっちゃん神官様がいた。
「おお!お嬢ちゃん!初めての学校はどうだった?楽しめたかい?」
「はい!エルミ様がやさしかったです!」
「そうかい。良かったねぇ。次も来るのかい?」
「はい!あしたのつぎのひにきます!」
「じゃあ、おじさんからのアドバイスだよ。お父さんだけに言いなさい。……次も美味しい物を持っておいで」
「わかりました!でも、おとうさんはいないので、おかあさんにいっていいですか?」
「……いいよ。元気でね」
「はい!バイバイ!」
弾むような足取りで外に出た!
きっと「美味しい物」が教室の手がかりだ!
元手はタダだから、通販に美味しい物はいっぱい売っている!そうしたら、また優しい神官様が着いてくれるかもしれない!
駆け足で孤児院の敷地を出て、完璧に孤児院が見えなくなってから、布鞄からおっちゃん神官様に貰った紙を出して、覚えたばかりでうろ覚えな頭を働かせながら文字と数字を読んだ。
え〜と、と、く。
とく?何かの暗号かな?お母さんに教えてもおう。
次は、き、ゃ、ろ、キャロだ!持ってきた品物の名前!その下に数字の3と、つ、と書いてある。
キャロを3つ持ってきた、と書いてあるのか。
もしかして、お母さんの記憶違いでキャロって価値が高いのかな?
そういや、お母さんは元貴族だったから、屋敷で育ててる菜園とかでキャロを見たのかもしれない。
いや、きっとそうだ!
で、個人授業の特別教室。
あっ!とく、って、特別教室の特のことかも!
これも、きっと当たりだ!
次の特別教室には何を待って行こうかな〜。
美味しいもの〜、美味しい物〜。
アレだな、一個10万の実はダメだな。
あっ!受付のおっちゃんに賄賂、じゃなくて、試食を持って行ったらどうだろうか?地球の美味しい物を持って行った時に価値がわからないかもしれないから!
なんか、他の神官様にお布施を渡すような言い方だったから、おっちゃん神官様も食べれたら嬉しいよね?ヒントも貰ったし、恩返しはしておくもんだ。
るんるんるーん!
不思議と長い帰り道は気にならなかった。
◇◇◇
「たっだいまー!」
家の扉を開けたら……半裸の男がいた!
間男だ!
「おかえりー。扉を閉めてくれると嬉しいなー」
扉を開けたまま口を開けてバカ面してたら、お母さんが声をかけてきた!
あ、お母さん、椅子に座ってた!
アレだね!服の注文だね!
てへっ!勘違いしちゃった!
静かに扉を閉めて、手と口を水で洗う。
そして、静かにトイレに行く。
あー、孤独の部屋が安心するー。
臭いけど。
用を済ませて出てきても、男の人が居たのでベッドに乗って、こっそりと通販でみかんを買って食べていると、被っていた布団がめくられた。
上を向くとお母さんが覗き込んでいた。
「あー、美味しい物を1人で食べてー。お母さんにもちょうだい!」
お母さんは可愛いなー。
仕方ない。みかんの皮はむいてしんぜよう。
「はい、あげる」
お母さんは臭いベッドに座ってみかんに齧り付いた。
あっ、あー、みかんを食べた事ない人なら齧っちゃうよなー。
そう考えるとみかんて不思議な食べ物だ。
「教室の孤児院学校はどうだったー?」
お母さん、凄いサラリと聞いてくるな。
日本なら小学校デビューだぞ。
「えーと、神官様が優しかった」
「そうおー、良かったわね。お勉強は?どうだった?」
そうだよね。
親としたらそっちが本命だよね?
「何となく読めるようになった。書くのは練習するしかないけど」
「あらっ!覚えるのが早いわねー。良い先生に当たったのかしら?」
「うん!多分そう!あっ!あのね、受付の神官様がね、次のお布施も美味しい物を持っておいで、って言ってた!」
「……そうーー。あの噂は本当なのね。ぼそっ」
……お母さん、すぐ隣に私がいるんだから、小さな声で言っても聞こえるよ。
でも、やっぱり教室分けの事だよね?噂になってるんだ。
明後日は今日より早く行った方が良いかな?
結構な子供達が私より早く来ていたよね。
うん!やっぱり次回が楽しみ!
あっ!魔力が回復しているから注文のTシャツを買おう!