子供のフリをしましょう 1
孤児院の敷地内に入ると、ここが裏側だからなのか畑が広大に広がっていた。
えっ?孤児院が自給自足してんのん?
でも、王都では新鮮な野菜は高かったはず。
えっ!それって……推理しちゃうと、孤児院の食料じゃなくて、孤児院の運営費の為に貴族とかに新鮮野菜を売ってるんじゃない?
……孤児は労働力?
ヤバい。
考えれば考えるほど教会の闇に近づきそうだ。
あっ!第一村人!
じゃない!教会の関係者発見!
「すみませ〜ん!」
ちょっと舌っ足らずな言い方が基本だ。
私は幼児だ。
こっちを向いてくれたおっちゃんは……貧民街の人の格好をしていた。
孤児院に雇われとんかい!
「おー、何だい?」
「はじめての、こじいんがっこうです。ばしょをしってますか?」
ぶりっ子じゃないぞ!
「おー、可愛い子じゃのう。ほら、建物が見えるだろう?入ってすぐ右にいけば教室があるぞ」
「おふせは、どこでわたすんですか?」
「入り口に入って左に受付があるからね?受付って分かるかい?」
「はい!ひとがいるんですね?」
「お〜、偉いねぇ。頑張ってきんしゃい」
「はい!ありがとうございます!」
ふう。
幼児への擬態も楽じゃないぜ。
それにしても、良いおっちゃんで良かった。
孤児が酷使させてる訳でも無さそうだ。
何人か他にも農作業をしている大人がいたからね。
それに、貧民街の人は基本的に酷使されるからね!
多分、夕方まで働くんだろうな〜。
この広い畑を……。
嫌んなっちゃう。
そして、子供の足も嫌んなっちゃう。
家を出てから1時間ぐらい経ってるよ。
きっと。
魔力は〜、はぁ。回復してないね。
あ、いや、回復はしてるけど、上がり幅が少ないね。
仕方ないね。動いてたから。
ずっと、歩いてたから。
何故か休息中は魔力の回復が早いんだけどね?
とか、考えているうちに建物の入り口に着いた。
うーん、古いけど、よく掃除がされている形跡がある。
管理は悪く無い。
「おーい、お嬢ちゃん。孤児院学校かい?お布施はここだよ」
む!やるじゃ無いか!発達不良児を見つけるとは!
「はーい!はじめてなんですぅー」
「おー、初めてかい。お布施は何を持って来たかな?」
「えーっとぉ」
鞄の中に手を突っ込んで。
ジャーン!
「キャロです!」
「おー!キャロかぁ。見せてみなさい。うん、良いキャロだね。ん?まだあるのかい?」
「うん!3こ!」
「そうかい!親御さんが奮発してくれたんだねぇ。大切にされているねぇ、お嬢ちゃん。うん、全部、特だな。香りも良い。きっと、神官様も喜ぶからねぇ。ちょっと待っててね」
何か受付のおっちゃん、じゃない。神官服を着てるけど、簡素な服?に見える。
階級が低い人なのかな?
神官様が喜ぶって言ってたのは……お布施を神官様が、食べる?のか?
「はい!この紙を孤児院学校に来る時に毎回持って来てね。忘れちゃダメだよ?じゃあ、右の通路に歩いていったら教室があるからね」
「ありがとうございます!」
「はい、いってらっしゃい」
なんだか拍子抜けした。
良い神官様だ。
うん「様」付けしても良いくらいの初老のおっちゃんだった。
◇◇◇
おっちゃん神官
んー、可愛い子だったなぁ。
でも、金髪の髪の毛が少なかったなぁ。
貧民街の子だから栄養が足りてないんだろうなぁ。
あれくらいの子なら、貧民街で育つより孤児院に入った方が待遇が良いんだがなぁ。
でも、立派なキャロを3個も持ってくるとは親に愛されてるんだなぁ。
ーー可哀想な事だが、貧民街の子の孤児院学校のお布施は持ってくる物で教室が別れて、良いものを持ってくる子は待遇が良くなるのは公然の秘密だ。
可哀想にのう。
私が少し手心を加えても孤児院の子よりも待遇が悪い。
孤児院の子は『教会が責任を持って教育してます』というちょっとした教会の『顔』だからな。
身綺麗にして栄養を与えて「皆様の寄付で健康に育ってます」と世間に知らしめなければいけない。
ーーまあ、障害を持った子や頭の悪い子は例外だがな。表に出ることは無い。
ん?今の時期に『キャロ』?
キャロは夏の野菜じゃなかったか?人気の高い野菜だし、虫に食べられてしまうから値段も高いはず。
今は『春』だ。
『春取りのキャロ』は珍しくて美味しいから、もっと高値が付くはずーー。
はぁーっ。『特』にしておって良かったわい。
でも、あの子、いや、あの子の親は何者だ?
いや、私も歳を取った。
私が考えるのはそこじゃない。
少しでも子供達が健やかに過ごせる環境を作ることだ。
◇◇◇
右に歩いて少しすると、部屋よりも、また受付があった。
今度はおばあちゃん神官様だ。
やっぱり簡素な服に見える。
「お嬢ちゃん、紙を見せておくれ」
「はい!」
「おお、初めてかのぉ。5歳おめでとうね」
へへっ。
優しいおばあちゃんだ。
【特、キャロ3つ】
〈今の時期にキャロを3つ!?〉
チラッ。
ニコォ!(チヤ)
「お嬢ちゃんはこの木札を持って1番奥の部屋に行くんだよ?わからなくなったら、木札と同じ絵が書いてある部屋を探すんだ。いいね?」
「このしるしね!」
「そうだ、良い子だねぇ」
おばあちゃんにバイバイと手を振る。
スマイル0円!の気分で行きます。
って言うか!どんだけ歩かされるのぉ!