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通販スキルと時間停止アイテムボックスで生活改善!  作者: 春爛漫


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スイード伯爵家領地に帰還中 4

 おじいちゃんとお母さんが協力して、私に腹下しの薬を飲ませてくれる。


 だから、お腹は痛く無いんだってば!

 くそう!口の中に水が溜まって、薬を飲むしかない。


 ゴクリ、とチヤが布団に包まれて腹下しの薬を飲むと、ホッと安心した空気が漂った。


 今のチヤの状態は、無理矢理、上級鑑定を行ったせいで魔力が急激に消費されて、体が驚いてしまった結果である。


 まあ、誰も知らないが、もう少し安静にすれば治まる。


 腹下しの薬を飲んだせいで、大便が出て不調が解消したと誤解されるのだが。


 まあ、大便が出たタイミングと体が治るタイミングが良すぎた。


 チヤが体調を崩したせいで、命を脅かされた今にも出血性ショックで死にそうな騎士がいたのを思い出して、すぐに隊列を出発させたのだが、騎士・ヴェーズの体調は最悪の所まで来ていた。


 ◇◇◇


 おじいちゃんがポツリと呟く。


「……ヴェーズは、助からん、かもな」


 チヤが動けるようになってすぐに馬車は出発したが、ヴェーズの顔は死人のように蒼くなっていて、冷や汗が凄く、体も小刻みに揺れていた。


 意識は、もう、無いようだ。


 その時、チヤは決断を迫られていたが、人命には変えられずに、通販で『最高級再生ポーション・1000万ルビ』を震える手で購入した。

 およそ、日本円で1億円だ。

 そして、お届け先を『チヤのアイテムボックス』にしていたので落ちる事なく収納された。

 体調が復活したばかりで何故か魔力が少なかったせいで、せっかく書いた造血魔法薬のレシピが無駄になり、今あるほとんどのお金を使って『最高級再生ポーション』を購入したチヤは、おじいちゃんの膝の上で布団にぐるぐる巻きにされているので、おばあちゃんに頼んだ。


「おばあちゃん、ポーションを、飲ませて」


「あら!チヤちゃん、まだ、お腹が痛いの?」


 おばあちゃんが旅用の鞄から鎮痛ポーションを取り出した。

 鎮痛ポーションは根本的な体の回復は出来ないが、痛みを無くす事ができる。


「違う、騎士様、に、再生ポーションを」


 チヤはぐるぐる巻きの布団の中で最高級再生ポーションを右手に持った状態で腕をスポンっ!と、出した。


「これ、最高級、再生、ポーション」


 これには、おじいちゃんもおばあちゃんも驚いたが「そういえばチヤちゃんは木族だった」と思い出して、おばあちゃんが大事に『最高級再生ポーション』をチヤの手から受け取って、騎士様・ヴェーズの蒼白な顔を上に向かせてポーションを少しずつ口の中に垂らした。


 ヴェーズは咽せるだけの体力も無いのか、最高級再生ポーションは値段が高いだけあって、直ぐにその効果をしめした。


 見る見る間にヴェーズの血色が良くなり、腕がもくもくと生えてきて、羽織っているだけだった服の隙間から素手を現した。

 荒かった呼吸も普通に戻っている。


 その、奇跡とも言える様子を目撃したウェンズとベティーナは、片腕を出したままの孫を再び布団でくるんで、己の体調が悪いにも関わらずに騎士を助けた心根に愛しさを覚えた。


 そして、外を急ぎで走らせていた馬車にゆっくりと走るように告げてから、今日はこの先にある街に泊まると伝えて、チヤをぎゅっと抱きしめた。


 チヤは布団で暖かいのと、魔力が少なくて眠いのに抗えずに、祖父の腕の中で眠りについた。


 なんだか、大きな誤解をされたまま。


 ◇◇◇


 チヤが目を覚ましたのは、知らない部屋だった。

 匂いも嗅いだ事の無い匂いで、不審に思ったチヤがベッドに起き上がると、侍女のセーラが座っていた椅子から立ち上がってチヤの様子を見てくれた。


「お腹の調子はどうですか?何か体に違和感はありますか?」


 チヤは寝る前を思い出して「お腹が痛いのは誤解なんだ!」と言いたかったが、ぐっと我慢した。


 体調不良の理由がわからなかったので「お腹が痛かった」事にすれば全部解決するかな?と思ってしまったのだ。


「……のどが、かわいた」


 チヤの呟きにも反応したセーラが部屋に置いてあった水差しからコップに水を入れて、チヤに持たせてくれたので、チヤはゆっくりと水を飲んだ。


 腹下しの薬を飲まされて、野外で盛大にぶっぱなしてしまったのが恥ずかしくなってきた。

 いや、出る時に、かなり大きな音がしたので、簡易トイレに張っていた布では音は遮断されなかったはずなのだ。


 それに、もう1人でトイレを出来る歳なのに、心配したお母さんとおじいちゃんが私を支えてくれて、トイレットペーパーで綺麗にお尻を拭き拭きしてくれたのも恥ずかしかった。


 チヤは恥ずかしさで、無言で布団に頭まで潜り込んだが、まだ、陽の射す明かりに気がついて、家族で里帰りをしているセーラが気になった。


 おずおずと布団から頭を出したチヤはセーラに聞いた。


「セーラの家族は?」


 なんでも無いふうにセーラが答えた。


「子供が出かけたいと騒いだので夫が観光に連れ出してくれています」


 チヤは「しまったー!」と思った。

 普段と違う場所での観光は家族の思い出を作るのに適しているのだ。

 何気ない日常よりも旅行先のことを良く覚えているように。


「セーラ、里帰り中は家族の事を優先して」


 こういうのは命令した方が良いのだ。


「それを判断するのは大旦那様です」


 べしっ!と、チヤの発言は無かった事にされた。


 そっちがそのつもりなら考えがあるぞ。

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