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『収納鞄』を売りましょう

 もう、あと、数日でスイード伯爵家の領地に帰るので、準備が着々と進んでいる。


 あ、私とお母さんの荷物はアイテムボックス内に入れてあるから、準備は万端です。


 と、そんな時に「例のものを買いたい」と、クルガー商会長からの手紙が届き、インベルト商会へと馬車を走らせた。


 インベルト商会の混乱は治ったようで、ケインさんがいつもように案内してくれて、茶葉を渡して商談室に入った。


 商談室に入った瞬間に違和感を感じたチヤは「何だろう?」と不思議に思いながらもソファに座って考えていると、「あっ!」と気がついてセーラに問いかける。


「ねぇ、セーラ。この部屋の中が綺麗になってない?なんだか掃除した後のような匂いがするんだよね」


 セーラはその通りだと説明する。


「私も長年、メイドをしておりましたが、間違いなく前回来た時よりも綺麗になっておりますね。

 ほら、ソファの位置がズレております」


 掃除をしても細かく傷ついた箇所の補修は出来なかったのか、綺麗な床がソファの横に露出していた。


 「へー、セーラは短い時間に部屋の変化に気がついていたんだ」とチヤは感心した。


 床の拭き掃除もしたようだが、細かい傷まではどうにも出来なかったようだ。


 そして、ケインさんが紅茶を持って来てくれて、今日はストレートでは無くミルクティーの気分だったから、通販で紅茶専用のミルクを購入して入れる。


 なんかね、前世に興味があって調べたんだけど、よく飲み放題とかにあるコーヒーフレッシュ?ってやつかな?名前が違ったりするけど、常温で置いてあるコーヒーや紅茶に入れて飲む個包装のやつ。

 あれって、添加物の塊らしい。

 まず、ミルクが常温で腐らないのがおかしいらしいんだよね。

 体に悪いって知ってからは、必ず消費期限が書いてあるミルクを使うようにした。

 家には妹の子供たちがいたからね。

 口に入るものには、特に注意をしたよ。

 そういうところのお金はケチらなかった。


「チヤ様?そのミルクは、安全なのですか?王都で飲まれるミルクは厳しい制限が設けられていますが……」


 おや、セーラが当たり前のようにミルクを飲んでいる私の事を心配してくれたらしい。


「私のスキルで出したものだから大丈夫だよ。セーラもミルクティーにして紅茶を飲んでみる?」


「ミルク、ティー?ですか。それは、安全なのですか?」


 そして「美味しいのか?」と、思っているのが伝わってくる。

 あれ?ミルクティーって、この世界に無いのかな?


「紅茶がね、少しまろやかになって、んー、子供向け?な味になるよ。適量入れてあげようか?」


 紅茶って初心者には扱いづらい飲み物だ。


 いや、味にこだわりが無いなら、好き勝手に飲んでもいいけどさ。


「はい。よろしくお願いします」


 私に紅茶の入ったカップを寄せて来たので、ミルクを適量入れてあげる。


 そして、紅茶に口をつけたら、少し興奮したように言った。


「これはっ!紅茶の革命ですよ!お子様がとても飲みやすいと思いますっ。それに、風味が少し変わって、尖った紅茶が飲みにくい方にも紅茶が飲みやすいと思いますっ」


 ほぇー。

 なんか、私はミルクティーにそこまでの感動は無いな。

 時々、飲みたくなる味というだけで、ストレートの紅茶には勝てないと思っているし。

 でも、夏に冷えたミルクティーは美味しいんだよね。

 香りを楽しむというよりは、味と喉ごしを楽しむものだった気がする。


 それと、話は変わるが『インベルト商会』の後ろ盾が何故か我が家の『スイード伯爵家』がなったと噂されているようだ。


 『スイード伯爵家』が後ろ盾ではなく、『スイード伯爵家の孫娘』が取り引き相手なだけだからね?

 違うからね?みんな、そこのあたりを勘違いしないでよ?おじいちゃん達に迷惑がかかるじゃないか。


 まあ、大っぴらに「わたしがインベルト商会に売り物を卸してまーす!」とかは言わないんだけどね?


 久しぶりのミルクティーを楽しんでいると、クルガー商会長が部屋に入って来て、手に何かを持って来て私の向かいに座った。


「久しぶりだな、と言うほど時間は経っていないか。

 今日は大金を持っているからな。単刀直入に言う。

 これが『収納鞄』を購入する代金の2000万ルビだ。金貨20枚が入っているから確認してほしい」


 いつも取り引きに使うことのない豪華に見えるカルトンの上に金貨が載っていたので数えると、ちょうど金貨20枚があったので、素早く『通販スキル』を開いてお金を投入する。


 あ、この通販画面は誰も見れないようで、私だけに見える。

 そこにカートに入れておいた『収納鞄』を購入すると、机の上にシンプルな無地の少し大きい『収納鞄』が出てきた。


 それをクルガー商会長の前に置く。


「これが『収納鞄』です。お納めください」


 何故か、クルガー商会長が『収納鞄』に触るのを躊躇っている。

 なんだか、大の大人が収納鞄にビビっているようで面白い。


「おおっ!おおっ!これが、幻の『収納鞄』。いや、『国宝級の収納鞄』だ!さ、触るのが、勿体無い……」


 とか何とか言いつつも、私にお礼を言ってから飲み物を飲むでも無く『収納鞄』を持って部屋から素早く出て行った。


 クルガー商会長もミルクティーを飲めばよかったのに。


 

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