重大発表! 2
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作者の「サランラップの心臓」が壊れそうになるので、強い批判や注意はしないようにお願いします。
チヤのテレビショッピングも真っ青な『原価での販売』発言に、いや、他の内容にも固まっていたクルガー商会長の
目に涙が浮かび、つつーっと、流れ落ちた。
まさか、チヤは『異世界あるある』の『収納鞄』に、涙を流されるほど感激されるとは思わなかったので、ギョッとしてクルガー商会長を見た。
成人男性の泣き顔は珍しいだろう。
クルガー商会長は、チヤの好みから外れているが、誠実さが顔にまで出ている男だ。
なかなか高評価の顔つきである。
その男が、泣き、何故か、天を仰いだ。
「噂は、噂は、本当だったんだ!朝から、朝から、朝から!ずっと、ずっと、ずっと、否定していたのに!
チヤ君が『エルフ』と繋がってるなんて!」
これを聞いたチヤが、今度はギョッとした!
えっえっ?えっ?
秘密が何処からか、漏れた?
私が『エルフ』なのは、バレて、ない?
いや、楽観的かな?
今すぐ、逃げる?
見た目に分かる程に狼狽え出した主人に、殺気立ったのは護衛2人だ。
筆頭護衛官のシャルフが殺気立ち、それを見た、まだ経験の浅い護衛のエルシーナが臨戦体制をとった!
エルシーナは、シャルフをチラチラと見て「ヤルのか?殺るのか!?」と緊張を漲らせていた。
エルシーナは、ココが王都だと、忘れているらしい。
こんなところで『インベルト商会長』を殺害したら、大問題である。
エルシーナが極刑!で、主人のチヤにも殺害指示をした疑いが浮上してしまう!
それを静かに止めたのが、侍女のセーラだ。
小声でエルシーナに「落ち着け!」と現実を突きつけている。
この件で、エルシーナが『脳筋』だと判明した。
誰か、いや、セーラが頑張って教育してくれ。
そして、セーラは、今1番狼狽えているチヤの肩に手を置いて冷静に告げた。
「チヤ様は『エルフ』と関係無いはずです。はっきりとした態度をなさいませ!」
今の混乱していたチヤに、その言葉は染み入る雨のようだった。
ワタシエルフトカンケイナイ。
「ワタシエルフトカンケイナイ」
棒読みのその言葉は、説得力皆無であった。
これには進言したセーラも「あー」と、声を出してしまった。
何も知らなかった侍女のセーラと筆頭護衛官のシャルフが呆れるやら、驚いていいのやら、困ったような顔をした。
クルガー商会長は別だが、誰もチヤが『エルフ』と関係有るとは考えてもいなかったのに、チヤの「ワタシエルフトカンケイナイ」で、悟ってしまった2人だった。
大旦那様になんと報告すればーー。
と、悩んだ2人とは反対に、エルシーナはソレを信じた。
真っ直ぐな女だ。
そして、侍女セーラと筆頭護衛官シャルフは瞬時に視線を交わした。
「コイツ、理解している」と、お互いに確信した後に、エルシーナを見ると「理解していない」と見てとったシャルフがエルシーナに命令した。
「エルシーナ、命令だ。扉の外に行き、許可するまで誰も部屋に入れるな。わかったか?」
能力はあるからチヤの身に近い場所での護衛を任されているエルシーナは、シャルフに聞き返す事なく「了解」と言った後に扉の外に出ていった。
無能では無いだが、真っ直ぐな性格で、「今から殺る」ことを疑っていなかったエルシーナは、殺意を抑えて扉の前に陣取った。
戦う女、エルシーナである。
◇◇◇
天を仰いでいた、クルガー商会長が、ピリッとした空気を感じて、少し正気になったのは、良かったのか?悪かったのか?
クルガー商会長が今後、どうしようかチヤに相談しようとして、険のあるセーラとシャルフの視線に気がついた。
途端に『チルビット王国立学校』で聞いた『貴族』の噂話が頭をよぎる。
1つは『エルフを手に入れる者は全てを手に入れる』と言った話だ。
だが、しかし、これには不穏な歴史の影があるとされている。
2つ目はこれに関連する『エルフに手を出すな。破滅するぞ。助けてもらいたくば対価を捧げよ』と言うものだ。
どこに対価を捧げるのか?
昔から密かに言われている貴族家があるが『エルフ』との関係を暴こうと動いた貴族には、何かしらの制裁が王族から行われている。
どこの、貴族家か?
それを思い出したクルガー商会長は、ドッと全身から汗が吹き出して、震えが止まらなくなった。
ーー自分は、何を言った?
ーータブーに触れたか?
答えは、目の前で、狼狽えている幼女が持っている気がした。
誰もが発言しない中で、チヤだけが壊れたラジオのように呟いた。
「ワタシエルフトカンケイナイ」
部屋の中の3人の意見が心の中で合った。
『嘘だ』
「チヤ様、正気に戻ってください。今日は、お屋敷に帰りますか?」
「ヤシキニカエル?」
「大旦那様に指示を仰ぎませんと」
セーラがこの場から離れようとチヤに言い聞かせる。
いやいやいややめて!
と、思ったのはクルガー商会長だった。
「だってそれって僕の処分の話だよね?」と。
「ち!チヤ君!」
いきなり大声を出したクルガー商会長にチヤは正気に返った。
「ぼ!僕は!何も知らなかった!言わなかった!いいね!知らなかったんだ!」
チヤは無言で、こくこくと頷いた。
そうした方がいい気がしたのだ。
それに、クルガー商会長を信用していた。
お母さんほどでは無かったが。