表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/110

初めてのお客さん

 それからの4日間は私とお母さんの食材とステラおばさん家の注文のTシャツを通販で購入する日々に費やした。


 なんか、多分、気のせいじゃなく、魔力を使うたびに微々たるものだけど、魔力の総量が増えていっていることに気がついて密かに嬉しがっていた。


 そして、5日目の朝にステラおばさんが朝食を作り終えて帰る時に、ステラおばさん一家の服を渡した。

 1人2枚だから結構嵩張る。


「え……?もう、届いたのかい?」


「うん!在庫はあるからね!在庫が無くなったら入荷まで待たないといけないけど」


 普通の通販ならセール時に売り切れとかあった。

 それからすぐに入荷する物と、入荷せずに売り切りの物もあったのだ。

 私のスキルの『通販』がどうなっているかは知らないが。


「あ、ありがとうね……。嬉しいよ……。あっ、後でお金を持ってくるからね!すぐだからね!」


 と、慌てて家から出て行ったステラおばさんが、お金の入った袋を持ってくるまで、あと少し。


 ◇◇◇


 それから、お母さんの服を通販で購入したり、日用品を購入したりと日々ポイントならぬ魔力を使い切っては爆睡して、あと1日でお母さんの薬が無くなるな。

 お母さんの病気が完治するな、と、嬉しがっていたところに、家に誰かが訪ねてきた。

 あ、一応鍵はあるけど、資産が無い貧民街は鍵をかける人は余りいない。


「すまんねぇ。ゾイだけど入って良いかい?」


「ゾイさん?」


 私はてててっと家の扉を開けると、ステラおばさんのダンナさんのガイおじさんと親しい、私としては顔を見たことがあるだけの人にいくらか不信感が芽生えていた。


 私の顔が不機嫌そうだったからか、ゾイさんは素早く用件を言った。


「ガイに聞いたんだがよ。服の販売を安くしてくれるってのは本当かい?」


 ステラおばさん一家に売ったTシャツの購入希望者だったようだ。

 私はホッとした。

 いつか、未亡人で美人のお母さんを手篭めにしてやろうって男が押し入ってくるんじゃないかと密かに怯えていたのだ。

 女の二人暮らしは怖い。


「ちょっと待っててくださいね。見本を持ってくるので」


 ゾイさんを玄関に待たせて、家の中に有る道具箱の前でアイテムボックスに入れていた見本を取り出して玄関まで持って行く。


 あ!と気がついて服を広げる所が無いので、ゾイさんに机の前まで家に入ってもらった。


「おお!これが例の!」


「しーっ!静かにしてください!病気のお母さんが寝てるんですっ」


 ゾイさんはちょっと気まずそうな顔をしてベッドの方をチラ見した。


「こそっ、で、この服をどうしたらいいんだい?」


「試着してください。サイズと色を決めて注文します」


 私はまた道具箱の方に行って、道具箱から出すフリをしてアイテムボックスから下敷きと紙と鉛筆を出して手に持って机に戻り、ゾイさんの名前を書いてスタンバイした。


 ゾイさんは戸惑っていた。


「えっ?えっ?本当に着て良いのかい?全部買い取りしろとか言わないよな?」


「大丈夫です。それは他の人が着たことのある古着です。実際にお渡しするのは新しい物になりますので時間がかかります。あと、お値段は生地が薄い物が150ルビ、生地の厚い物が200ルビ、色つきは+100ルビです」


 私の怒涛の営業トークに押されたように「お、おう」と答えたゾイさんは服を手に取って確かめた後に試着した。


 貧民街の親父臭にちょっと嫌な顔をしてしまった。


 ゾイさんもガイおじさんと同じく壁の拡張工事をしているらしく、意外と細いのに筋肉のついた体つきをしていた。

 ムダ毛と親父臭はイヤだけど。

 ついでに、砂埃の多い職場だからかボーボーの鼻毛が見える。そして胸毛も嫌だ。


 あー、私はこの時代で結婚出来ないかもしれないなー。と考えていた所に「おお!これを貰うよ!」とゾイさんが服のサイズを決めたようだ。


「一度服を脱いでくださいねー。……ええっと、LLサイズっと、色はどうしますか?」


「うー、ガイの色つきも良かったが、新品でくれるんだろう?」


「そうです。誰も袖を通してない新品ですよ」


「じゃあ、生成りを2着くれ!」


「白を2着っと。厚さはどうします?こっちが生地が厚くて長持ちしますが、こっちは薄くて涼しいですよ。お値段も安いし」


「んー?……服の販売ってずっとしてくれるのか?」


「はい。私がいる限りはするつもりです」


「?そうか。じゃあ薄いのを頼む」


「それじゃあ届いたら家へ……ゾイさんの家ってどこですか?配達しますよ?」


「んー、わかるかなぁ?同じ第3地区なんだが、貧民市場が近いんだ。近所のヤツに聞けば家が分かる」


「必ず家にいるのはどのくらいの時間ですか?夕方ですか?」


「そうだなぁ、カミさんが多分夕食作ってくれているから渡してくれや。お金は今払うのか?」


「品物と交換でお金は貰います。貴族じゃないんだから」


 ゾイさんは豪快に笑った。


「そりゃそうだ!新品の服が買えるんで舞い上がっちまった!それじゃ楽しみにまってるからな!」


「はい。ありがとうございました。近所の人にも宣伝をよろしくお願いします」


「ははっ!しっかりしてんなぁ。きっとカミさんも子供も欲しがるだろうから、また来るよ。ありがとな」


 悪い人じゃ無かったな。


 男の人はTシャツでいいだろうけど、お母さんと同じワンピースを女の人に勧めても良いかもしれない。


 んー、一度服屋で価格調査に行くかな。


 あ、お母さんと私は寝巻きも買ってありますよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ