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重大発表! 1

 と、まあ、今朝の回想はいいのです。


 目の前で、緊張の糸が切れたようなクルガー商会長が気になるのです。


「インベルト商会倉庫襲撃事件は、解決したのですか?」


 ちょっとボケた顔でこっちを見るクルガー商会長です。


「あ、ああ。朝から忙しくて忘れていた。なんだか、衛兵が言ってたな。『チェンヤー侯爵』の家から盗まれた積荷が見つかったと。商品の見聞をケインに任せたから、大丈夫じゃないか?」


 腑抜けです。

 完全に力が抜けているクルガー商会長です。


 ははーん。

 完全に見切りましたよ。

 「朝から忙しかった」「ごった返す店内」「だらけたクルガー商会長」

 そして、商談室に連行された私。


 クルガー商会長、あなた、私を盾に、サボりたかったのですね?


 私は、そんなクルガー商会長に、声を高らかに上げて教えてあげます!


「クルガー商会長!そんなにダラけていいのですか?私が、商談を持って来たのですよ!」


 ビシィ!とした声でクルガー商会長に告げます!


 はたから見たら、幼女が可愛いポーズをとっているだけ。


「んあ、なんだあ?野次馬じゃなかったのか?」


「酷い!私は真面目にあなたの事を考えていたのに!」(塚風に)


 チヤが何処かの劇団の真似をしていたおかげか、クルガー商会長の頭が正常に回り始めたようだ。


「このお茶はリラックスできるな。おかわりをもらおう」


 ローズヒップティーを大変にお気に召したクルガー商会長だ。


 くっ!屈辱!ベル薔薇風に落ち込みたい!

 とか、やってる幼児がいるわけで、商談室には、これっぽっちもチヤが持って来た真剣な商談の雰囲気はなかった。


 あ、さりげなくも、セーラも護衛2人もいるよ!

 なんだか楽しそうなので放置されているチヤだ。


「ふっふっふっ。クルガー商会長、そんな腑抜けた空気で私に『3000万ルビ』を出せるのですか?」


 さらりと、クルガー商会長がチヤに大金を払うような言葉を言われる。


 クルガー商会長は、あまりの現実感の無い金額にティーカップを落としそうになってしまった。


「だ!誰が!3000万ルビも、払えるか!冗談だよな?」


 なんとかティーカップを机に置いたクルガー商会長が叫んだ。

 完璧に正気に戻ったようだ。


 チヤは不敵に笑う。


「クルガー商会長が、私に、3000万ルビを、支払う、の、ですよ?」


 チヤは、とっても間を取って話した。

 その顔は自慢げだ。

 チヤ的には良い商談を持って来たのだから!


「じょ、冗談じゃ、無いんだな?」


 再度、確認するクルガー商会長だ。


「くどい!男は早めに決断するのですよ!」


「何を売るかを知らないのだが?」


「あ」


「言ったつもりだったな?」


 クルガー商会長の鋭い指摘にチヤは機嫌を落とした。


 私は、頭の良い、薬剤師、でーー。


 はいはい、前世はね。


 と、聞こえてきそうな強がりだった。


 しかし!貧民街の逆境に慣れたチヤの立ち直りは早い!


「収納鞄です!」


 いきなりチヤが叫んだ!

 伝えたいことは伝えた!と、思い切りの良い声だ!


「収納鞄だと!?」


 クルガー商会長もノリが良く付き合ってくれた。


 いや、クルガー商会長は、本気で驚いたのかもしれない。


「まさか!本当に、売ってくれるのか!?」


 チヤが、ちょっと、いじけたように問いかける。


「3000万ルビですよ?」


「なっ!なんとか用意を! ……できる、かなぁ?」


 勢い込んだクルガー商会長だが、「欲しい!」気持ちとは裏腹に、資金が無い。

 遂に、クルガー商会長は考え込んで、借金を模索し始めた。


 実はこの世界での『収納鞄』の位置付けは「借金してでも欲しい」ほどの逸品だ。

 まず、『収納鞄』は、容量が大きければ大きいほど【国宝】に指定される品物である。

 手に入れる為には『運』も『つて』も必要だが『資金力』が最終的にモノを言う。


 だから『運』が巡ってきた、クルガー商会長が「借金をしてでも欲しい!」と悩んでいるのだ。


「よ、容量、は?」


 苦しい言葉を絞り出したクルガー商会長。


「ななな!なんと!インベルト商会が借りた倉庫3つと同じくらいの容量を探しました!」


 じゃーん!と、効果音が出そうな声でチヤは発表した。


 それに驚いたのはクルガー商会長だ!

 チヤが今言った容量は完全に【国宝級】である!


「あー!借金だ!借金をするから売ってくれ!」


 家族も商会運営もしている男から出ていい言葉ではないが、今、チヤが告げた【国宝級収納鞄】には、それだけの価値があった。

 いや、どう考えても『破格』な値段だ!


「本当に!本当に!3000万ルビでいいのか!?」


 クルガー商会長は、最終確認をする。

 間違えていたら大変な大金だからだ。


 日本円で『3億円』と言ったらわかりやすいだろうか?


「ふっふっふっ。私も女です。嘘は言いませんよ」


 なんとも信用ならない言葉である。

 女も男も関係無く、嘘をつく時はつくのである。


 しかし、チヤはテレビショッピングをしているかのように重大事を発表する!


「容量、倉庫3棟分!時間停止!不壊!新品!さーらーにー!今だけのご奉仕価格!原価で!お譲りしまっす!」


 重大発言に、クルガー商会長が、固まった。

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「インベルト商会が借りた倉庫と同じくらいの容量を探しました」 ↑ この言い方だと倉庫一つ分と受け取る クルガー商会長の知識だと国宝級になるらしい そしてチヤが持ってきたのは倉庫3棟分&時間停止機能付…
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