事件の終わりはあっけなく
昨日のおじいちゃんは、私から『高級トリートメント』を受け取ったら、すぐに部屋を出てお出かけしてしまった。
私は服のお直しが終わったら『ミゼル服店』の皆さんにお礼の挨拶をして帰るのを見送り、インベルト商会の倉庫が襲われない為の対策をいろいろと考えて、通販で1つの商品にたどりついた。
めっちゃ高っ!インベルト商会に買えるかな?
と、疑問に思いながらも、おじいちゃんからは明日のお出かけは、ダメだと言われていないのでインベルト商会に行くのをセーラに伝えておく。
セーラに伝えると、護衛2人に御者さんにも上手く話が通るので重宝している。
アレで、ある。
貴族生活が便利すぎて、今更庶民に戻るって地獄かよ。
と、思う、アレである。
地球に例えたら、車に乗って出かけるのに慣れると、バスや電車の公共交通機関に乗るのが苦痛になるアレだ。
「私はもう、時間に縛られたくないの!」
って奴になる。
人間、楽な方へ、楽な方へと流されていくのさ。
と、夕方にはおばあちゃんとお母さんとお姉様とお風呂に入って『美肌の湯』に浸かって、お肌つるつるのうるるんになって、夕食に間に合ったおじいちゃんも一緒にごはんを食べて、家族の団欒をしてから、お母さんの部屋でおやすみになった。
おじいちゃんが、凄いウキウキだったのは、何故なんだろうか?
◇◇◇
「緊急任務!早朝の決行だ!目標!『チェンヤー侯爵!』。屋敷の使用人も全員捕らえよ!
罪はほぼ確定だが、まだ犯罪者ではないことを念頭において、無傷で捕縛せよ!これは命令だ!」
『はっ!』
まだ夜中の3時頃に、王城の訓練場にて決起集会が行われていた。
参加者は王城警備を除く、王族の騎士団3部隊だ。
第1部隊は『人戦闘専門』部隊であり、今回の作戦の主部隊になる。
第2部隊は『魔物盗伐専門』部隊であり、後方支援と、逃げた者の捕縛である。
第3部隊は『遠征専門』部隊であり、いわゆる騎士の中でも万能型だ。
この部隊が1番の花形部隊かもしれない。
そして『チェンヤー侯爵』を捕らえた後に、捕縛者を連行するのは第2部隊であり、第1部隊と第3部隊は屋敷内で犯罪の証拠を全て探した後には『パーベル商会』の制圧という任務があるので、内政向きの騎士とはココで別れて『パーベル商会』へと速やかに移動をする。
この時点で街の商店は営業時間になっている予定なので、従業員の捕縛をミスする心配は無いだろう。
王城騎士団は、全ての騎士が『チルビット王国立学校』の最高学附の卒業者達なので、王族の『強行任務』と呼ばれる、騎士達には何故捕縛しなければいけないのか「分からない」任務が数年に一度は課せられるのは知っているし、捕まえた後に犯罪の証拠が必ず見つかっている事実に胸を張って仕事を完遂できる。
『これも、歴史書に記載されるのか』と思えば、歴史の証人として任務にも思わず力が入る。
元々、王城騎士団は王族に忠誠を誓っている騎士の集まりなので、自分で考えを放棄するのは駄目だが『何故、王族がこの任務を出したのか』を考えるのは王族の意図を汲み取る役割に繋がり、己を成長させるので歓迎されている。
今回の目標は王城のすぐ側の『チェンヤー侯爵家』であり、決起集会が終われば、各自体調管理を行なった上で、部隊ごとに移動となる。
その間に「何故この捕縛が行われるか」を推測し「正義は我にあり」と納得して、任務が行われるのである。
人の「やる気」は大事だ。
時に上が無能だと「何のための任務か?」分からずに、後に犯罪者になってしまうこともある。
今回は『チェンヤー侯爵家』に雇われそうになった騎士は安堵しただろう。
「王城勤務にして良かった」と。
運命とは「起きるべくして起きた」のだ。
そこには、後から考えれば「理由」があるし、必ず通る道だと分かるものもある。
今の王族は「無知」では無く「賢君」だ。
いや、『国王陛下』並びに『現国王陛下』が有能であり、王太子殿下の評価は別れるところだ。
王城勤務の騎士としては、今からの時代の国王陛下に頂く『王太子殿下』には有能であってほしいところだ。
そして『緊急、大捕縛』は、早朝早くに行われ、その後『パーベル商会』の従業員並びに商会長を捕縛成功し、王城に連行したのであった。
これを知った頭の良い貴族はこの事件に納得し、情報収集能力に劣っている者は「何事か?」と推測し、王都には大々的に噂が広がり始めていた。
チェンヤー侯爵家の退職した元執事や元使用人達も取り調べを行われて、解放された。
「犯罪に関わっていない」と判断されたのだ。
元執事の実家の『チェンヤー侯爵派閥』だった『スイニル子爵家』は、これを機に無実を証明する為に『王族派』に移動し、権力争いは御免だと言うように『王族派』でも『中立』を維持していくことになる。
そして、朝食が終わってのんびりとしているところに、おじいちゃんからの呼び出しがかかったチヤは、談話室に集まった家族に驚きながら、事件の顛末を教えられて、さらに驚くのだった。
スイード伯爵と国王陛下が企んだのは内緒にして。