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王族に助力を求めましょう 1

 翌朝、目が覚めて、いつもように準備して、お母さんと食堂に行ったチヤは、どこかピリつく雰囲気に良く無いものを感じておじいちゃんを見た。


「おはようございます。おじいちゃん、おばあちゃん、伯父さん、お姉様。今日は何かあるのですか?」


 おじいちゃんがチヤを見て、でれっとした顔をする。


「チヤちゃ〜ん、おはよう。今日は良い天気だけど『ミゼル服店』が試着に来るからね〜。今日はおばあちゃんとお母さんと屋敷で過ごしてね」


 チヤは年の功か、瞬時に「今日は出かけない方がいいのだな」と理解して了承の返事をした後に、何気なくおじいちゃんに聞いた。


「そんなに外は危険なのですか?」


 幼女、いや、少女が発した言葉に場が固まる。


「どうしてチヤちゃんは、そう思ったのかな?」


 何故かチヤを窺うように、おじいちゃんが言った。


 チヤは重大なことを言った自覚は無く答えた。


「朝から屋敷の空気がおかしいのと、屋敷にいてと言う言葉でしょうか?最近はいろいろありましたから」


 年齢の割に賢い孫におじいちゃんは降参した。


「そうなんだよ。厄介ごとがあってね、解決する為におじいちゃんが王城へ行くんだ。屋敷にいれば護衛がいるから、もしもの時は護衛の指示に従ってね」


「はい」


 そして、ちょっと、ピリついた空気の中での朝食は終わり、部屋に帰り、お母さんに甘えていると、おばあちゃんが呼んでいると呼び出されたチヤとソフィアは、おばあちゃんの着せ替え人形となるのだった。


 ◇◇◇


 さて、おじいちゃんこと『スイード伯爵』が王城へ上がると、緊急のお目通りにも関わらずに国王陛下、自らが要件を聞きにいらして、スイード伯爵は「話が早いな」と、これならば厄介ごとは早く片付きそうだと、ほくそ笑んだ。


「さて、今更だが、この部屋は防音だ。そなたを謀ろうとは思わない。素直に話してくれるかね?」


 素早く、国王陛下の側近達は去り、侍従も去った事で、あらかたの事情はご存知のようだが、スイード伯爵自らが事件のあらましを語った方が良さそうだと話し始めた。


 チヤの能力と『木族』という事実を隠しながら。


「ほう。チェンヤー侯爵が『エルフ』に勘づいたとはねぇ。そして、野心的な性格の為に暴走しようとは……彼も老いたねぇ。

 いいだろう。他家の貴族も気になるが、ここいらで王家の力を見せつける良い機会だ。


 だが、なぁ?分かるだろう?スイード伯爵?」


 事情を話した上での王族からの遠回しのおねだり(・・・・)だ。

 さて、何を言われるのやら。


「孫がねぇ、可愛いのだよ。可愛くてね、仕方なくてね。わかるだろう?最近、孫が増えたスイード伯爵なら」


 スイード伯爵は「確かに」と、同意する。


 本家筋の孫では無いが、この間の『チヤ誘拐事件』でスイード伯爵に庶子の孫がいるのは公然の事実だ。


「でもね、王城にもうるさい虫が飛んでいてね、孫の教育には良く無い環境なんだ。どうやら王太子妃の実家のゴリ押しらしくて、役人が断れないと泣きついて来たのだよ。

 ……時期を見て、王太子妃と親族は処分しようと思うのだけど、王城に入り込んだ害虫が少し多いようなんだ。

 その掃除(・・)を、お願いしたくねぇ?あの方達の協力はいただけるだろうか?」


 国を揺るがす事態の手伝いを『木族』にさせようと言うのか。

 しかも自分の息子の嫁も処分するつもりのようだ。


「確約は出来ませんが、お伺いするのはタダです。……しかし、気分が乗らなければ、協力はしていただけないでしょうが」


 ここで約束してはいけない。

 『木族』は、決して便利な道具などでは無いのだから。


「スイード伯爵は、相変わらずだねぇ。腹を割って話をしようと言うのに、その心はいつも固い。

 じゃあ、そうだねぇ。仕事を早くする為の、ご褒美が欲しいかな?報酬とは別にね?」


 くそっ!今回は王家の助けが無いとスイード伯爵家が動けないと知ってのことだ。

 悔しいが、聞くだけはしよう。


「……お聞きしましょう」


「おお!聞いてくれるかね!最近話題のインベルト商会の新商品を今すぐに(・・・・)欲しいんだ!勿論、最高級品だよ?少し王妃の機嫌を損ねてしまってね、ご機嫌取りをしたいんだ。聞いてくれるかい?」


 ……用意は、出来るだろうが、これは、チヤを、利用したことには、ならないかな?ならないと、いいなぁ……。


「少々、そちらも、問題がありましてなぁ。確約ができ次第にお断りの手紙か、商品を送りましょう」


 国王陛下が子供のように拗ねた真似をする。

 これが、作戦だと気が付かないでか!


「長い付き合いなのに、酷いなぁ。私もあの方々にお目にかかりたいのに……ああ、女神がごときあのお姿が忘れられないーー」


 国王陛下のお顔は……夢見る少年のようだ。


 老年が気持ち悪い。


 だが、その気持ちもわかる話だ。

 あの方々は『人』では無い。

 神の使わした『御使様』だ。


 国王陛下が若かりし頃に王城内は密かに荒れており、私利私欲を満たさんとする者達が増えようとしていた時だ。


 当時の王(もうお亡くなりになられた)が、当時のスイード伯爵に一生のお願いだと申されて、オババ様が作戦を練り、国王と協力して、発覚していない敵の協力者も全て洗い出し、当時は『怪事件』として噂になったが、国王陛下が何の調査もしない為に、国王陛下のお力で悪きものを葬ったと噂になり、そのおかげで王族の敵対者も減り、その治世は磐石のものとなった。


 対価はオババ様がたんまりと受け取っておったが、当時幼かった私は「なんだか凄いぞ」と興奮しておったわ。


 その時に、当時、私同様に幼かった幼少期の国王陛下がこっそりと『エルフ』の真のお姿を目撃なさったとかで、よく聞かされる。

 そう、遠回しに『エルフ』に会いたい、と申されているのだ。


 くそぅ!私は『橋渡し役』に過ぎんのに!皆で言いたいことばかり言いよって!私も報酬が欲しいわい!


 いやいや、一族が病気も怪我もせんで生きていけるのはオババ様達のおかげだからな。

 と、少し感謝をした。

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