表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/108

問題解決?いや、警戒! 2

 孤児院学校の帰りに貧民街のステラおばさんのところへ行き、夏服の予約を受け取ると、ステラおばさんと息子のダンにパンをご馳走して、まったりと英気を養ってからインベルト商会へと行った。


 ただの、ご機嫌伺いとは違い、商会員の無事の確認だ。


 ケインさんに茶葉を渡した後は商談室でクルガー商会長を持っていると、扉がすぐに開いて、何故かクルガー商会長に私の全身をガン見された後に、私のソファの向かいに座った。


「チヤ君に、怪我が無さそうでよかった。うちの商会が狙われそうなので、衛兵から連絡を貰ったところだ。

 パーベル商会の後ろには『チェンヤー侯爵』がいるので、今回の指示は『チェンヤー侯爵』の指示で行われた可能性が高いが、相手は貴族なのでこちらの分が悪い。

 急ぎ、倉庫の警備員を雇ったが、どこまで信用できるかは未知数だ。

 チヤ君も今後は身の安全を気にしてくれ」


 ぺぺぺぺー、っと一気に言われたので、聞きたいことがどこかに飛んでいきそうになったが、大丈夫だろうと思いつつも聞いてみた。


「昨日、インベルト商会員は大丈夫でしたか?」


 私が持ち込んだ「有機緑茶」をちびちびと飲んでいたクルガー商会長が顔を上げた。


「ああ、一応無事だ。チヤ君が不審者に追いかけられていると一報が入ったところで、商会周りに不審者がいないか見たが、とくにそれらしい者は見つけられなかったようだ。

 今回の狙いは、初めからチヤ君という事になるな。

 仕入れには今まで行以上に注意するように」


 チヤの方が危険?


「なんで、商会ではなくて私が狙われるのですか?」


 クルガー商会長は至極真面目に私の問いに答えた。


「インベルト商会の石鹸の卸し元だからだ。

 あのな、輸入石鹸事業は貴族の後ろ盾がある商会の3店が行われていた。

 これは結構異例なことでな?『輸入石鹸事業は儲かる』のだが、貴族の後ろ盾が無い商会は多くが大きな負債を抱えてしまい、石鹸事業からの撤退をしている。

 僕はこの後ろ盾の貴族が何かやらかしたと見ているが、大きな証拠は無く、ほぼ独占市場と化していたんだ。

 そこに現れたのが我らが『インベルト商会』!未知の石鹸を大量に仕入れて、他店の石鹸取り扱い商会の売り上げを大いに落として、多分だが『恨みを買っている』。

 そのインベルト商会に『石鹸』を卸している『卸し元』を特定して製造元を押さえる気満々だな。

 なんせ『インベルト商会』は『チェンヤー侯爵』の商会である『パーベル商会』の売り上げを多いに落としたはずだからな。

 それで、今まで、チヤ君の正体がバレないように動いていたが、どこから話しが漏れたのか「インベルト商会が貸し倉庫を借りた」という情報が相手の商会にバレて、チヤ君が危険にさらされたというのが真相だ」


 チヤは完全に理解した。


 良い物を売れば『簡単に儲かる』と考えていたが、既存の販売店に恨まれる事態になった訳だ。

 そして、その後ろには貴族がいると。


 我が家も貴族だが、伯爵だ。

 侯爵には敵うまい。

 しかし、王家とのパイプが厚いのは『エルフ』という共通の秘密を抱えている我が伯爵家であるので、何かが起こった時には王家の助けが期待できる。

 王族の後ろ盾があれば、この国では最強なのだ。


 ここは、おばあちゃんに頑張ってもらって『トリートメント』を融通する代わりに、我が家を守ってくれないだろうか?

 と、そこで気がついた。


 私の正体はバレているのか?


「相手の、あー?パーベル?商会でしたっけ?私の正体はバレているんですか?」


「いや、今朝の衛兵の話だと『スイード伯爵家の馬車が狙われた』と言う話だったが、あー……、これは、相手の侯爵にはバレたかもなー?」


 悩んでいる顔でクルガー商会長が言った。


「何でですか?」


「侯爵級の貴族の情報収集能力を侮るなよ?衛兵だけの秘密が貴族に漏れるのは、当たり前だからな?

 チェンヤー侯爵には、インベルト商会に石鹸を卸している者の素性がわかれば、尾行が成功しても失敗しても卸し元はわかった訳だ。

 あー、やられた……。

 チヤ君、身の回りには、いつも以上に注意しなさい」


 クルガー商会長は1人で考察した後に不穏なことを言った。

 私の正体が相手に「貴族の侯爵」にバレているだと?


 ヤバいじゃん!今すぐ王都から逃げないと!


 私は、スッとソファから立ち上がり、クルガー商会長に言う。


「ご無事の経営を応援しております。しばらくはインベルト商会には来ないので、よろしくお願いします。では、失礼します」


 さっさとインベルト商会を出て行き、スイード伯爵家の屋敷に素早く戻った。

 ふぅー。

 これで、しばらくは私の身は安全だ。

 あと、半月経てば王都を後にするし、次は領地で2ヶ月はお邪魔になる。 

 夏休みの旅行の始まりだね!


 とか、不穏な事には関わらないでおきましょう。

 と、考えていられたのも今日までだった。


 『インベルト商会』が狙われていると、衛兵に報告してもらったその夜に、大胆にも『インベルト商会の貸し倉庫』が狙われたのだから。


 その知らせを受けたのは、翌日の昼間頃だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ