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ファン

それから、撮影現場で何度か白石海斗を見つけた。

何故か白石海斗は私を見付ける度に、嫌味を言ってきた。

しかも、ギャラリーが誰もいないのを見計らって、近付いてきた。


「今日もいるのか?本当暇だよなー」


まぁ、そりゃーそうだよね、今をときめくスーパーアイドルの白石海斗がこんなスーパー一般ピープルの私に対してこんな粗野な一面を他の誰かに見られたくなんて無いはず。

だけど、問題はそこじゃない。

何でわざわざこんな事を言ってくるのか初めのうちは分からなかったけど、何でそこまで私に固執してくるのかが、ある日分かった。


「なぁ。いつも付けてるそのマスコット俺に譲ってくれない?」


その日のエキストラの休憩時間、自販機でドリンクを買いに行った私の横に当然のように白石海斗が立っていた。

白石海斗の視線の先にあるのは、私のバッグにつけている、男の子のぬいぐるみチャーム。


「え?」


フェルト生地で作られているこのぬいぐるみは、早川俊が出演しているお菓子CMの当選品なのである。

一見全然似てないように見えるがクセになる容貌で、愛嬌の無い顔が早川俊に見えてくる。

この当選品が決まってから毎日欠かさずに対象のお菓子を買いまくり、友達にも数え切れないぐらい頭を下げて、見事にゲットした、私の大切な宝物なのだ。

だが、この白石海斗にとっては何の価値も無いものではないか?

これが早川俊だと分かっていないのでは無いだろうか?

不審気に見上げると、バツの悪そうな顔でモゴモゴと続けた。


「それ、早川俊だろう?オレ当たらなかったんだけど。それ…」


「は?」


これが早川俊だと分かってる!

待て待て待て、どう言う事だ?何で白石海斗が早川俊のぬいを欲しがる?

頭の中がハテナマークで埋め尽くされる。


「あなた大丈夫?」


「何が?」


「だって、何であなたが早川俊のぬいマスコットを欲しがるか意味分からないんだけど」


早川俊のライバルとも言われている白石海斗が何故?

まさか良からぬ事に使うのでは?


「まさか…まさかだけど、このぬいに呪いとかかけないよね?」


「は?そんな事する訳ないだろう!」


「じゃあ何で?」


「それは…」


更に口をモゴモゴして視線を下にやり、意味も無く足を動かしていた。


「それは?」


「だからー!それが欲しいから」


「だから、何で?」


「お、お、オレが早川俊のファンじゃ悪いのかよ?」


「…」


その瞬間白石海斗の立てた砂埃を突風が更に上へと舞わせた。

ゴホゴホと咳こんでいる白石海斗の顔は真っ赤になっていた。




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