仮初め
『Doowsの作者さまからファンレターの返信貰えたー、まさか返信!ちょう嬉しい!』
呟きと一緒にアップされている作者が特別に描いたと思われるサイン色紙。
SNSに上がっている呟き、こう言うの見たくなくても流れてくると目に入っちゃうのよね。
これは一体誰に向かって呟いているのだろう?
ただ聞いて欲しいだけなら友達にでも言えばいいだろう。
世界発信の場を使ってまで発信した内容は無意識に誰かを傷つけると考えたりしないのだろうか?
それを理解した上での発信だとしたら、SNSが無かった時代、そう言う人達はどのようにして自分と言う存在をアピールしていたのだろうか?
誰かと繋がっていたい、誰かに自分の存在を知らせたい、こんな嘘だらけの世界で仮初めの言葉を並べているだけでこの人達は幸せなのだろうか?
うん、きっと話ができる友人がいないのだろう。
まぁ、そう言ってスマホを手放せない私が言えたギリじゃないんだけど。
作者さまがその人のためだけに描いてくれた作品をみんなに見せたくて、顔も見た事のない人達に見せたくて見せたくて仕方の無い人達の思考を理解しようとは思わない。
ただ、今私が何が言いたいかと言うと…。
「わ、これ苦い…、望愛残り飲んで」
駅近くの自動販売機で買ったカフェラテが自分の想像していた味じゃなかったのか、早川俊は目を細めて飲みかけの缶を私の手に握らせた。
「は??は?い、いらない」
すっかり雰囲気の変わった早川俊の言動に私の頭は追いつかない。
何で急に呼び捨て?で、何でこんな簡単に間接キスを誘導するの?
「オレが飲んだ後は飲みたくない?」
意地悪っぽく言ってきて強引に視線を合わせてくる。
「……、急に変わりすぎ!」
視線を動かし、電車を待っている学生達を見た。
「…変わってないよ、むしろこれが本当のオレだってこと何で分からない?オレの事ずっと見てきてくれたんでしょ?応援してくれてたんでしょ?」
「…そうだよ!ずっと好きだった、瞬きするのも勿体ないぐらいずっと応援してた!……それなのに…」
急に芸能界から消えてしまって、全てのアカウントも削除されて。
何かを追いかけていないと生きるのが辛い私は早川俊がいたから、それまで頑張れた。
虚無だった私の前に1年前突然現れた、輝きの欠片もない早川俊を見て私はどうしていいか分からなかった。
早川俊である事に間違い無いけど、私の好きだった早川俊はそこにはいない。
冒頭に話しは戻る。
私も結局SNSの世界にいるつまらない人達と同じなのかもしれない。
仮初めの早川俊の事を私は好きだったのかもしれない…。
嘘だらけの世界で輝いていた早川俊の事を好きだったのかもしれない…。




