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厄介な気持ち

歌も踊りも完璧なアイドルは星の数ほどいる。

そこに輝くルックスと言う生まれ持った奇跡と演技力と言う天性の才能を持ち合わせていれば華やかな芸能界で生き抜いていく要素は整っている。

だが、如何せんそれだけで生き残れるほど芸能界は甘くない。

甘くは無いが、どこの世界においても圧倒的な運があれば生きてゆける、と、持論だがそう思ってる。

隣人の元アイドルのこの男、早川俊が絶望的に運が無い…。

出演していたCMの飲料水は異物混入事件に巻き込まれ経営悪化の道を辿りその商品自体消えてしまったり、決まっていた主演ドラマはプロデューサーと脚本家の折り合いが合わずお蔵入りになり、挙句の果て、社長が事務所の売り上げ全て持ち逃げしてしまい倒産。ほぼ早川俊だけで何とかなっていた事務所だったので、倒産は仕方のない事だろう。

そのまま芸能界から姿を消してしまった。

持って生まれたオーラだけで言えば芸能界のトップにまで上り詰められたかしれないのに、それに反比例する運の悪さ。

今や早川俊の名前を覚えている人間なんてごく僅かだろう。

今の早川俊は重そうな前髪を鼻の先まで下ろし、分厚いメガネ、若干大きめのサイズのジャケット、これまた少しサイズの違うズボンで、こんなモブに成り下がった彼は1年前何故か私の隣に越してきて何故か私と同じ学校に通っている。

そして、何故か毎日私と通っている。


「あのさー、私なんて待ってなくていいよ、先に行けばいいのに」


っていつも言ってるのに早川俊は首を横に振るだけで何も言わずに私の後ろを歩いている。

ちなみに私が昔、早川俊の熱狂的ファンだったと言う事を彼は知らない。

知ってたら知ってたでかなり過ごしにくくなるので、それはそれで有り難い。

一緒に駅まで歩く、一緒に電車に乗る、一緒に校門を潜る。

完璧にオーラは無くなったものの、長身のため人の目にはつく。

それを気にしてか少し腰を屈めて私の横に立ち、電車に揺られる毎日。

腰を屈めると目の位置が少し近くなってドキドキする。

こんな陰キャになってしまった彼だけど、1年前隣に越してきて初めて目が合った時、私は彼が早川俊である事にすぐに気が付いた。

引退してからも早川俊の行方を探していた私は目の前に現れた推しを見て呼吸をするのを忘れて見惚れてしまった。

そう、厄介な事に私は今でも早川俊が好きなのだ。





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