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好きと言ってもわからない~精神年齢10歳の次期当主に求婚された件~  作者: ことのはじめ


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最終話 アイリの答え

 ユリウスも頷いて、負けないほどの笑みを見せる。

「うん。きっと、きっとそうだよ」

 ユリウスはアイリの笑顔を通して、その光を、魂の形を見ていた。削げて痛々しい姿をしていた、空っぽの光。

 きらきら眩しくて氷の結晶のように光り輝いていた魂だった。自分の欠けた魂に添う、滑らかな光には、今ぬくもりが宿っている。

「アイリ。改めて、なんだけど」

「はい」

 ユリウスは少し緊張しながら膝をつくとアイリの手を取り直し、述べる。

「結婚、してくれる?」

 あたたかな光をした彼女は、その手を握り返して、穏やかに笑う。

「ダメです」

「えっ」

 ユリウスは驚いて声が出なくなる。アイリは握られた土まみれの手をやんわりと握ったまま答える。

「私はまだあなたのことを、本当に好きになれたか、わからないんです。あなたは私に楽しさを教えてくれました。嬉しさを教えてくれました。でも、私はまだわからないことがたくさんある。そんな状態であなたが本当に好きかどうかなんてまだ答えられません」

 それに、とアイリは続ける。

「そういう話はあなたがもっと大人になってから、聞かせてください」

「俺が子供って言いたいの?」

 アイリはしかたなさそうに眉を下げ、かぶりを振る。

「あなたも私も、まだ子供です。だから、もっと二人で色んなことを勉強して、もっと大人になってから、一緒に決めましょう? だから、それまでは」

 恋人未満の友達で。

 アイリはそう言ってユリウスの手を撫でる。納得したようで納得しないユリウスは頬を膨らませてむくれている。そんなところが十歳の子供相応で、可愛らしくアイリには思えた。

「ユリウス様」

 ユリウスが答えるよりも早く、アイリはそっとユリウスの額に口づけた。軽く触れる程度の子供じみた所作だったが、今の自分たちにはこれでちょうどいいのだろう。そうアイリは思った。

「植え替えも終わりましたし、昼食に行かないと。先に行ってお待ちしておりますね」

 アイリはユリウスの手をすり抜けて屋敷へ続く道を歩いて行く。

 一方ユリウスはといえば目を丸くしたままほんのりと頬を赤らめていた。だがそれも束の間、すぐに立ち上がると、アイリの後を追って駆け出していく。さながら少年のように。

 二人の植え替えたアイリスは、青紫の花弁を揺らし、笑うように咲いていた。

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