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好きと言ってもわからない~精神年齢10歳の次期当主に求婚された件~  作者: ことのはじめ


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第22話 あなたが、嫌いです

「申し訳ありません、準備するにも新しく場所を確保しませんと……」

「じゃあ早くしてよ! ほら!」

 庭師の口ぶりからして花壇の準備はすぐにはできなさそうだ。それでも早くとわめき立てるユリウスにアイリはあまりいい気持ちを抱けなくなる。

「ユリウス様」

 苦い気持ちになりながらも、アイリはしっかりとユリウスを振り向かせる。

「ごめんね、アイリ。レオのせいで花壇用意できてなくて」

「レオさんのせいではありません。あなたはもっと人を思いやるべきです」

「え……」

 ユリウスの紅い瞳が揺れる。こんなことを言うと傷つけてしまうかもしれない。だが、言いたい気持ちの方が強かった。

「そうやってだだをこねて何でも思い通りにしようとするのはよくないです。レオさんに謝ってください」

「どうして、だって聞いてなかったのはレオの方だよ?」

「人のせいにしてはいけないと私は思います。謝るのはユリウス様の方です」

「なんで、なんで?!」

 ユリウスはどうしてかわからず動揺してアイリに訴えかける。しかしアイリはっひょうじょうを曇らせたまま首を振った。

「ちゃんと自分の悪いところを認めてくださらないのでしたら、花壇はいりません」

「どうして? だって花壇作ったらアイリが喜ぶと思ったから、アイリだってその方が嬉しいでしょ?」

 眉を下げ、ユリウスはしょぼくれる。だがアイリはその訴えを素直に受け入れられなかった。

「そんな風に無理矢理花壇を作っていただいても、私は……」

 初めて抱いた気持ちだった。胸の中がもやもやしてとても居心地が悪い。吐き出すように、アイリは言った。

「私は、嫌です。そんなことをされるのも、そんな風に迷惑をかけるあなたも、嫌です」

 はっきりと、言い切る。ショックだったのかユリウスは愕然としている。アイリはその場にいるのがいたたまれなくて、踵を返して屋敷に戻っていってしまった。去り際、執務の時間になって呼びに来たオルヴォとすれ違う。

「アイリ様、どうかなされましたかな?」

「っ……いえ」

 アイリはオルヴォの顔も見ることができずにまっすぐ歩いていってしまう。ずんずんと歩き、屋敷に戻る。

 ひどいことを言ってしまった。また傷つけてしまった。しかも、初めて自分の手を取ってくれた人を、真っ向から否定するような言葉で。

 ユリウスはまだ子供だ。たった十年しか記憶のない、幼子だ。体が、体裁がいくら大人でも、中身は孤児院で世話をしている子供たちとそう変わらない年頃名のだ。

 胸の奥がチリチリする。落ち着かなくて、どんどん体が熱くなって、いても立ってもいられなくなる。

 アイリはどうしていいかわからなくてまっすぐに自室に戻ろうとした。その最中、アイリスの苗をほっぽっていたことに気付く。あのまま廊下に置き去りにしているのはよくないと思い、苗を取りに向かった。

「あら……」

 だが、ユリウスの部屋の前には何もなく、苗はどこにも見当たらなかった。使用人の姿も見当たらないし、どこかに持って行かれたのだろうか。不安になって、アイリは部屋の前で苗を探し回った。

「あれ、アイリ? 何か探してるの?」

 暗い色に沈んだ瞳が、声の主を見やる。

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