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好きと言ってもわからない~精神年齢10歳の次期当主に求婚された件~  作者: ことのはじめ


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第21話 誰のための花

 朝の日課はアイリスの苗に水をやることだ。日当たりのいいテラスに置いていたせいか、今朝見ると鮮やかな青紫の花を咲かせていた。

 アイリはいつもの服に着替えると、鉢を抱えてユリウスの部屋へと赴いた。

「おはようございます、ユリウス様」

 ドアをノックして待てば、ぱたぱたと駆け寄る足音が聞こえた。

「アイリ、おはよう! なになに? 俺を起こしに来てくれたの?」

 もう身支度を終えていたユリウスは嬉しさを滲ませながら笑ってくれる。その顔を見て、アイリはとくん、と心臓が跳ねた。

「見せたいものがあって、……見てくださいますか?」

 もちろん、とユリウスが頷くのを見て、横に置いた鉢手に持って見せた。

「わあ、きれいな花! アイリが持ってきたお花?」

「ええ、この前話したアイリスの苗です。今朝、咲いていたので見せたくて」

 アイリの腕の中で揺れる青紫の花弁に、ユリウスは感嘆の声を上げる。

「すごいね! アイリがちゃんと世話したからこんなにきれいに咲いたんだね」

「そうでしょうか……」

「そうだ、この前散歩した花壇にさ、アイリのための花壇作ろうよ。そこにそのアイリスも植えてさ、もっと色んな花を咲かせるんだ!」

「いいんでしょうか、そんなことをして」

「大丈夫だって、だってここは俺の屋敷だもん」

 嬉しそうに両手を広げるユリウスにアイリはため息をついた。ユリウスは人差し指を立てると軽く動かして言伝の魔法を掛ける。そして花壇のことを話すと言伝の玉にして庭師宛てに玉を飛ばす。

「これで大丈夫!」

 それと同時にアイリの腹がくう、と音を立てた。驚いて目を丸くするアイリにユリウスはくすくすと笑う。

「おなか空いた? 朝ご飯食べに行こ!」

 ユリウスはアイリに鉢を置かせると手を引いて食堂に引っ張っていく。

「ゆ、ユリウス様っ」

 アイリは恥ずかしがりながらもユリウスについて行く。ドアの脇に置かれたアイリスが、ふわりと花びらを揺らしていた。



 相変わらずユリウスは綺麗に食事をする。アイリにはその姿はいつも別人のように見えていたのだが、今日ばかりは少し近しく感じた。

「どうかした?」

 食事の合間微笑んで見せるユリウスに、アイリは思わず手を止めてしまった。

「……いえ」

 覚えて間もない手つきでサラダを口に運ぶ。ユリウスはそれを眩しそうに見つめた後、スープを口にした。

 そんな静かな食事も終わって席を立てばユリウスは十歳の子供に早変わりである。またオルヴォにため息をつかれながらも執務が始まるまでのわずかな時間にアイリを庭の花壇に連れていく。

 だが、花壇についてもそこは前に案内されたときと変わっておらず、庭師が手を入れた様子もない。アイリが不思議がってユリウスの影から花壇を覗くと、庭木の手入れを終えた庭師がやってくるのが見えた。

「おや、ユリウス様。おはようございます」

「ねえ、レオ。アイリの花壇は?」

「花壇? なんのことでしょうか?」

「なんのこと、ってちゃんと言伝したでしょ、アイリの花壇用意してって。なんでできてないの?」

 ユリウスが少し怒りながら聞けば、庭師のレオは困惑した様子で眉を下げる。

「それは、聞いておりませんで……申し訳ありません」

「もう! ちゃんと魔法で伝えたよ! どうして聞いてなかったの!」

 レオに不満をぶつけるユリウスに、アイリはどこか胸のうちが落ち着かなくなってくる。

「ユリウス様、そこまで言わなくても」

「だってアイリと約束したのに、ちゃんとできてないといやなのに……」

 ユリウスは渋い顔でアイリに言う。しかしアイリはレオを困らせていることに居心地が悪くなってしまう。

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