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好きと言ってもわからない~精神年齢10歳の次期当主に求婚された件~  作者: ことのはじめ


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第15話 逃げ出す坊主は捕らえられ

 マリアの反対側にはオルヴォが立っており、二人で挟み撃ちをしてきたようだ。ユリウスはまたか、と呆れた様子で肩を落とす。

「味方を呼んだって意味ないのに。俺はアイリと遊びたいの」

「そうはいきませんぞ。今日こそサボっていたツケを払ってもらいます」

「ユリウス様、アイリだって勉強で忙しいんですよ。オルヴォさんだって困ってるんだし、ちゃんとお仕事に戻ってください!」

 オルヴォとマリアに諫められ、ユリウスはしょげるように眉を下げた。

「だってぇ……」

「ユリウス様、お仕事が終わっていないのならちゃんと終わらせた方がいいと思いますが」

 渋るユリウスにアイリが言えば、今度こそ残念そうにユリウスはしょぼくれる。

「ほら、お戻りください」

 オルヴォに促されるままユリウスは頷き。

「……隙ありっ!」

 急に振り返ってマリアの横を通り抜けようとする。しかし。

 動くのはマリアの方が早かった。逃げようと飛び出すユリウスの腕を掴みねじ上げると、そのまま足払いをして床に倒れさせる。

「うわあっ!」

 ユリウスが悲鳴を上げる。あっという間にマリアはユリウスを締め上げてしまい、オルヴォは目を丸くするばかりだ。

「な、なんと……」

「……マリア。オルヴォさんが驚いてるわ」

 アイリがオルヴォの様子を伝えると、マリアはユリウスを締め上げたままはっとして二人に顔を向けた。

「す、すみません。私こういう体術というか、そういうのに心得があって、つい体が動いちゃって……」

「離してよー……」

 ユリウスがマリアに取り押さえられたまま呻く。オルヴォは驚きながらもユリウスに近づき、しっかりと腕を掴んで立ち上がらせた。

「お手柄ですぞ、マリア殿。いや武術の心得もあるとは恐れ入った」

「小さい頃から教会に通うおじいさんに教えてもらってて、体が勝手に動いちゃうんです。でも、ユリウス様には悪いことしてしまって、すみません」

 マリアが眼鏡の奥の瞳を曇らせる。しかしオルヴォはかぶりを振ってユリウスの腕を掴み直した。

「心配は無用です。こうして少しくらい実力行使に出た方がユリウス様も懲りるでしょう。さ、ユリウス様。執務に戻りますぞ」

「えぇ……」

「ユリウス様」

 マリアとオルヴォに連行される姿を、アイリが呼び止める。

「お仕事が一区切りつきましたら、休憩のお時間に庭を案内してくださいますか」

 振り返ったユリウスの瞳がきらきらと光を灯す。その瞳の光に、アイリは釘付けになる。

「うん! アイリが言うなら頑張るよ! すぐに終わらせて戻ってくるから!」

「お待ちしております。では」

 アイリはカーテシーでユリウスを見送り、ユリウスは廊下の角を曲がるまで振り返って手を振り続けていた。

「アイリ様。ユリウス様が失礼いたしました。さ、授業に戻りましょうか」

「はい」

 家庭教師に促されるまま、アイリは勉強部屋に戻る。

「散策のお誘いとは、早速社交的で大変よろしいことです」

「そうでしょうか」

 アイリには社交的であることが何かわからない。こうして誰かを誘うことが社交的なことなのだろうか。ユリウスを誘ったのは、自分の知らないことを知っているから。教えてくれそうな気がしたから。

 この前のような、心臓の脈打ちをまた聞きたかったからだった。

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