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好きと言ってもわからない~精神年齢10歳の次期当主に求婚された件~  作者: ことのはじめ


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第11話 へたくそワルツも悪くない

 一瞬何が起こったかわからないアイリに、ユリウスはリズムを取ってステップを踏み始める。アイリもそれについて行くようにユリウスに合わせれば、嬉しそうに笑われた。

「楽しいがわからないなら、楽しいことすればいいんだよ!」

「でもあのっ、私ダンスなんてできませんっ……」

「ついてこられるなら大丈夫だよ。ほら、一、二、三っ」

 ユリウスの声に合わせて光の球がいくつも現れる。ユリウスは華麗にステップを踏むが、アイリはたたらを踏んだり早足で近づいたりと散々である。

 光の球は二人の周りをふわふわと飛び回り、さながら動く照明のようだ。光が星のように散る中、二人で形にもならないワルツを踊る。

 ダンスの経験などほとんどないアイリには、ユリウスに引っ付いたままくるくると延々振り回されているようなものだった。

 でもなぜだろうか。

 不思議とアイリはいっぱいいっぱいになりながらも息が弾んでいた。運動をしているからだけではなく、胸の奥がとくとくと温かく脈打つ不思議な感覚だ。見よう見まねでダンスについていき、ターンする度に光が弾けて反省室をきらびやかに照らした。

 ダンスを終えて息を整えながらも、胸は弾み続けている。光の球も消えてしまって反省室は元通りだ。久しぶりにこんな風に体を動かした。そうアイリが思っていれば、ユリウスはにこりと微笑んでアイリを見つめてくる。

「ねえ、楽しかった? ドキドキした?」

「ドキドキすることが、楽しいということ……なんでしょうか」

 うーん、とユリウスは唸ってから答える。

「俺は楽しいときとか、みんなが喜んでくれたときとか、ドキドキして嬉しくなるよ。体がぽかぽかして、いい気持ちになるんだ」

「だったら、私は……」

 とくとくと胸が弾んでいるのは、動いたせいだけではないのだとしたら。

「これが、楽しい……?」

 ユリウスが嬉しそうに頷く。アイリは胸に手を当ててまだ早足のまま収まらない鼓動を感じていた。

「ユリウス様、何やら騒がしいようですが……」

 すると、そこへ物音を聞きつけたのかオルヴォが部屋に入ってくる。オルヴォはアイリを見つけると意外そうな顔をした。

「アイリ様。これは失礼いたしました。ユリウス様、どういうことかご説明願えますかな?」

「俺はちゃんと反省してたもん」

 ぷいとそっぽを向くユリウスにオルヴォは盛大にため息をついた。なんとなく苦労人であることが察せられる。

「あの、ユリウス様は」

「アイリ様、かばい立ては必要ありませんからね。先ほどの物音は何だったのですか」

「ユリウス様が私とダンスを……」

「ほう。反省しながらダンスとはユリウス様、随分とお器用なことで」

「それまではちゃんと反省してたもん」

 オルヴォの言葉にユリウスは口を尖らせるが、オルヴォは笑みを貼り付けた顔で粛々と述べる。

「言い訳になっておりませんぞ。さあ、今度は私が見張っておりますから、もうたっぷり三時間は反省してもらいましょうか」

「え、えー!」

「アイリ様も、ユリウス様が反省なさっているときは立ち入りはご遠慮いただきますよう」

「っ、はい」

 オルヴォに気圧されてアイリは返事をすると、そそくさと反省室を後にする。オルヴォが反省室のドアを内側から閉めたから、たぶん三時間つきっきりで反省させるのだろう。

 アイリは大変そうだな、とわずかばかりに思った。

 その後部屋に戻り、食堂で夕食を出される頃合いになって、へとへとになったユリウスがむすっとした顔のオルヴォと共に現れた。

 あれだけ昼間やんちゃをしたというのに、テーブルに着いた途端完璧なテーブルマナーでユリウスは食事を始める。

 本当に外面的なことは見た目相応にできるのだ、と改めてアイリは思い知らされる。だが、アイリにはそれがなんとなく別人のように見えてしかたなかった。

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