プレリュード
「優真、あんたベース弾けたわよね明後日の学祭でヘルプしてちょうだい」
「は? いきなり何言ってんだよ葵。お前のバンドのベースは・・・五十嵐さんだったか?」
「なんで疑問形なのよ。未来今日の体育で倒れたらしいのよ」
「マジかよ。あーひょっとして今日救急車来てたのそれか?」
「それよ、まあ熱中症で倒れたんだって。大事は無いみたいだけど念のため今日は入院」
葵の話によると、五十嵐が急に体調が悪くなり倒れてしまい救急車を呼んだそうだ。幸い意識もしっかりしているし命にも別状は無いようだと聞きひとまずホッとした。だがそうなると問題が出てくるのは彼女の抜けた穴をどうするかである。
「であんたがベース持ってるのを思い出したのよ。確か弾けるっておばさんに聴いたけど?」
そう言われて優真は困ったように頬をかく。
弾けない訳では無いが人前で演奏した事など全く無い
それを理由に遠回しに断るが
「あ〜もう!仕方ない優真はいコレ‼︎」
そう言って取り出したのは古い紙切れだ。
「なんだよコレ」
受け取りながら尋ねると葵はニヤリと笑って。
「なんでも言う事を聞いてくれるんでしょ?明後日のライブまでしっかりサポートしてよね」
と言った
手元の紙切れに目をやるとそこに書かれていたのは
『なんでもいうことをきくけん きやまゆうま』
と書いてあった
「お前なんでこんなもんいまだに持ってるんだよ・・・」
子供の頃の事を思い出しため息をつく優真。
あれはまだ二人が小学生くらいの頃の話だ 葵からある頼みごとをされ優真はそれを断ったのだが その罰ゲームとして書かされたものだ。
しかもご丁寧にフルネームと印鑑まで押してある始末である。
「いいじゃない別に。そう言う事だからお願いね」
「あ〜もうしかたねぇ。俺は素人だからな!どんな事になっても知らねえぞ‼︎そんでやる予定の曲の楽譜と音源無いのか?」
そう言いつつも引き受けてしまう自分に内心ため息が出る。
「安心して私達も素人よ。楽譜は・・・はいコレ。それで部活レベルで音源なんて出せる訳ないでしょ、確か練習を撮った動画があるはずだから後で送るわ」
「りょ〜かい」
「じゃあ頼んだわよ。あ、明日の放課後リハするからちゃんと来なさいよ」