星と月の夜
98話目です。
「………………で、出来た……! 完成しました!」
「本当かい?! おめでとう、フィンセント君!!」
「や、やっとですか…………」
時刻はもう夜中の3時。私も完成を喜びたいのだが、睡魔が勝ってそれどころじゃない。
十二時を過ぎた頃、私はもう寝て明日にしたらどうかと提案をした。のだが、フィンセントさんは「あと少し、ここのところだけ」と言って譲らなかった。最終的に終わりのある作業で助かったのだが……ただ座っているだけよりも数倍疲れた気がする。というのも、昼間の時と同じようにフィンセントさんは作業中何度も急に叫びだし、「描けない!!!!!!」と言って部屋を出ていこうとする。それをポールさんが大慌てで止め、説得→作業再開のルーティーンだった。私は右手がこうだの左足がどうだのとあれこれ言われてポーズ(座っているだけ)を決めているので、ただ石像のようにそれを見ていつ終わるのかと憂いているだけだった。
「ほら、私たちにも出来た絵を見せてくれよ!」
「……はい、こちらです。」
キャンバスをくるりと返し、完成した絵を見せてくれた。
その絵に描かれていたのは、私。いや、それよりも……
「フィンセント君、これは……」
開かれた窓の向こうに広がる空。星と星とが渦を巻き、月が煌々と輝いている。
先程、ポールさんの描いた絵を見たときも感じたことだが、私の知っている絵と、二人の描く絵は少し違っている。
私の知っている絵は、色の配置がぱっきりとわかれていて、絵と絵の間は区切られている。でも、この絵は違う。たくさんの色が混ざっている。それでいて、別れている。星、月と空が決して同じものではない。
筆で力強く塗られた世界は、写真やなんかと比べては話にならないほど現実とはかけ離れたものだが、比べる次元が違う。この絵は美しい。この世界の人々の知る星の姿を、フィンセントさん自信の世界に映している。
「どう……ですかね、ちゃんと。描けてますか?」
そういうことに全く明るくないし、こんな描き方の絵を今までに見たことがない。でも確信を持って言える。
「「……最高だよ!!」」
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