君の肖像
96話目です。
「絵……どこやったっけ…………?」
「さ、探しましょう! ポールさんの絵! 心当たりはありますか?!」
「ない……フィンセント君の居場所しかわからない……」
「僕じゃなくて!」
絵を無くしたことに気づき、みるみるうちに青ざめていくポールさんと、叱咤激励するフィンセントさん。この二人、似た者同士なのでは。
「とりあえず、ここに来る前はどこにいたんですか?」
「集会所だよ……そこまでは持ってたはず……」
「じゃあ集会所に……って、この時間、まだ受け付け開いてますかね?」
時間は、空は群青に浸かってすっかり夜だ。町の人がほとんど夜間に外出しないことを考えると、やっていないかも……
「とりあえず向かってみましょう。」
落ち込んでいるポールさんを易々と担ぎ上げ、小走りで集会所に向かう。ポールさんが軽いのか? それとも……まぁ、今はそんな場合ではない。
――――
「はあっ、はぁ……ご、ごめんくださーい……開いてますかー?」
窓からは光の一切も漏れず、中は真っ暗だ。開いてなさそうだが……
「こんな時間にお客なんて珍しいわね?」
一斉に明かりが灯り、扉が開き、受付のルインさんが出てきた。
「すみません、あの、忘れ物とかって届いてませんか……?」
「あぁ、ちょっと待ってね………………この中にある?」
持ってきた大きなはこの中には、いかにも忘れ物らしいハンカチや、何だかよくわからない置物など様々だった。ポールさんの絵は……
「あ、あった!! これだ、私の絵!」
「え? でもこれって……」
「見つかった? 良かったわね、次は失くさないようにね。」
「はい、ありがとう、美しい人!」
ルインさんは謎の呼称に目もくれずにあくびをして中に戻ってしまった。
問題のポールさんの絵だが……
「そ、その絵って……だ、誰、ですか……?」
「誰って……もちろんフィンセント君、君だけど?」
「え、えぇ~?! そ、そんな、僕の絵を描くなんてお、おそれ多い約束しましたっけ……?」
「うん、一方的にね。私が個人的に君の絵を描いてやる! って決めたのさ。」
「ど、どういう……」
「ほら、君ってかなり美丈夫じゃないか。まぁいつもくまがあるけど、画になるなぁと思って。」
「ふぇ………………」
「おや。どうしたんだいフィンセント君。」
石のように固くなってしまったフィンセントさんと、訳を全く理解していないポールさん。この二人、よく今まで共同生活が成り立っていたな……
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