星月夜
94話目です。
「……どうしよう、これ。」
何か訳ありげな人物に関わってしまったが、置いてけぼりにされた道具達をそのまんま私も去るわけにはいかず、立ち尽くしていた。
フィンセントさんを追った方がいいのだろうか。でも、もうずいぶん遠くに行ってしまっただろう。今からでは追い付けないかもしれない。
そんなこんなで悩んでいると、今いる路地の向こうから声が聞こえてきた。
「はぁ、はぁ……こ、ここにもいない……隣は……」
さっきの、ポールさんという人の声だ。ここまで追ってきたのだろうか。
「あ、あの……あなたはさっきの……?」
「あ! きみ、フィンセント君と一緒にいた人かい? フィンセントさんはどこに……」
「道具をおいて、どこかへ……」
「なんてこった! また別の場所に行ってしまったっていうのかい? 探さないと……」
「あ、あの、ポールさんですよね、なんでそんなにフィンセントさんを追っているんですか?」
「それはもちろん、フィンセント君との約束を守るためさ。」
「あの……でも、フィンセントさんは今、スランプだそうで、絵がかけないって言ってましたけど……」
「おや、そうなのかい? でもそれとこれとは別問題だろう?」
「え? でも、フィンセントさんはそれのせいで探されてるって……」
「そうだよ? ……まぁとにかく追おう!」
「で、でも、どこにいるか分かるんですか?」
「着いてきてくれ、宛はある。彼は昔この近くに住んでいたんだよ。」
「じゃあここら辺のどこかに?」
「あぁ、この通りを少しいったところに、橋があるんだ。そこへ向かおう。君も来るだろう?」
「私もですか?」
「だって、フィンセント君は君の絵を描いていたんだ。絵を完成させないと、ダメだよ。」
もうずいぶん日も傾き、時間もないのだが、まぁどうやらこの世界には不審者などの心配はなさそうだった。というのも、夜になれば電灯なんてものはないので、みんな家にこもる。外出している人なんてごくわずかだそうだ。
といっても、あまり遅くなるわけにもいかないので、時間を気にしながらフィンセントさんを探すことになった。
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