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君と夏の色

93話目です。

…………夜に、なってしまった。

日が傾きはじめてもいっこうに終わる気配など見られず、フィンセントさんは度々筆をおいて考えだしては、また書くというのの繰り返しだ。


「あ、あの……そろそろ私、帰……」

「あーーー! やっっっと、見つけましたよ!!」


言いかけて、後方からものすごい大声で遮られた。

流石にびっくりしたのかフィンセントさんも顔をあげる。と思ったら、みるみるうちに顔が青ざめていく……


「私をおいてどこに行っていたんだよフィンセント君! 探したじゃないか!」

「ぽ、ポポポポポポールさん? あの、こ、これはですね……」

「って、そこの女性は誰だい? まさか君、私との約束を破って別の絵を……」

「い、いきましょう……!」

「えっ?!」


フィンセントさんはいきなり私の手を掴み、走り出した。


「はぁ、はぁ……こ、ここまで来れば……」

「あ、あの人、知り合いですか? なんでいきなり逃げるんですか……」

「そ、それは……ポールさんは……」

「ずいぶん探されてた見たいですけど、何をしたんですか?」

「僕……スランプなんです。全くこれといった絵が描けなくて。ポールさんと一緒に画家同士で暮らしてたんですけど、絵がかけなくなって、一緒にいるのが辛くなって……」

「それで、逃げてきたんですか?」

「と、とりあえず身近なものよりも見たこともないものを書いてみようと思って、ここの他にも色んなところを巡ってきました。でも、やっぱり思うように絵はかけないし……」

「約束がどうとか言ってましたけど、それは?」

「僕は昔、ポールさんにある絵を描くとお約束しました。でも、友に生活をはじめてまもなく僕は絵が描けなくなりました。だから、今もずっと約束を果たせないままなんです。ポールさんはそれを怒ってるんです。」


……そうだろうか? どちらかといえば、いなくなったフィンセントさんを気にしているという気持ちの方が強いようにも見えたが。しかし、画家なのに絵がかけないなんて状況のフィンセントさんから見れば、そう思えてしまうのだろうか。


「フィンセントさんはこれからどうするんですか?」

「僕……もう、絵は描きません……頑張って、ポールさんの真似していろんな人に話しかけて、モデルをやってもらっても、一枚も描けなかった……もう僕に、絵は描けないんです……!」

「あっ……」


そういうと、走ってどこかへいってしまった。

なるほど、人格が変わったように内気な話し方をし出したのも、人の真似をしていたから。モデルをやってもらえなかったのではなく、描けなかったから……

フィンセントさんが置いていった使い古された絵の具のパレットはたくさんの色が染み付いていた。

最後まで読んで頂いた方、誠にありがとうございます。

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