君の心は
90話目です。
「行ってきまーす!」
昨日、無事に結社の家に到着したは良いものの、時刻は既に夜であり、その後は皆旅の疲れを癒すために眠った。
そして今朝、予定通りに朝の支度を済ませ、ちょうど今、図書館に向かうところだ。
昨日の今日で疲れは完全にとれたわけではないが、まぁ図書館で探し物程度なら何の事では無いだろう。
――――
「お邪魔しまーす……」
もう集会所のある町への道のりは慣れたもので、難なく図書館の前へとたどり着いた。
しかし、これほど大きな建物の扉を手で押して開けることは今までに数えるほどしか経験がなく、また公共の建造物でそうである所などほとんど存在しなかった。そのせいか、意気揚々と家を出てきたが、扉の前まで来ると、気まずい相手の家に上がる時のようになってしまった。
何はともあれ、図書館の中まで入ることができれば、あとはこの世界の魔法に関して書いてある本を探すだけだ。
司書さんに挨拶……は一応しておこう。これからも何度かお世話になるだろうし。まぁ居るかどうかが問題だが。
「私に何か用かい?」
「ひえっ?!」
頭上から降り注ぐ声に驚き変な声を上げてしまった。三メートルはあるだろう大きな脚立からストンと床に着地したのは、この図書館の館長であり司書さんであるらしいペトロヴナさんだった。
「あ、えっと……魔術の本を探してて。」
「なるほど! ちょっと待っててね………………これこれ!」
魔法で分厚い本を三冊取り出し、私に渡した。
「赤い表紙は魔法の指南書。青い表紙はこの世界の地理や歴史書。緑の表紙は星の本。君の探しているのはこの辺じゃないかな?」
「そ、そうです。よくわかりますね……」
「長い間こうして図書館にいるとさぁ、皆の探している本はこれだ!! って分かるようになるんだよね~」
「流石ですね。ありがとうございます!」
「ところで、お兄さんは元気かい?」
「え?」
「ん? 君のお兄さんだろ、結社の団長は。」
確かにそうだが、誰にも、本人にすら話していない。なのに何故……
「げ、元気ですけど……多分?」
「ならよかった。じゃ、またのご利用を~」
先日の出来事もあって元気ではあるのだろうが、まぁ気分的に元気じゃないかもしれないということで多分と答えた。そんなところより、なんでお兄ちゃんのことを知っているんだろう。お兄ちゃんもここを頻繁に利用しているとか? ……本人に聞いてみるしかないか……
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