前途は多難
89話目です。
一夜明け、朝になった。昨日はもう列車がなかったので、アルスさんに用意してもらった宿でそれぞれ一泊し、早朝に帰るという考えであった。
「よし、用意はこれで大丈夫ね。じゃあ出発するよ。」
「わかりました、レイ先輩。」
「今度来たら、ちゃんと観光もしようね!」
「次はちゃんと計画立ててから来ような……」
ティロちゃんは城下の繁華街が相当気に入ったようで、また来たいと繰り返した。それとは反対に全く楽しむ余地のなかったお兄ちゃんはかなり疲れたようにティロちゃんをなだめた。
行きよりもひとつ増えた指定席に乗り込み、私は窓際になった。魔法で動く木製の列車。蒸気でも熱でも電気でもない、私にとって真新しい技術。
いや、私達の元いた世界からすれば、遅れているんだろう。しかし、科学ではなく魔法が、世界の基盤であるこの世界なら、昨夜のような星空を眺め続けることも出来る。
人間にとっての利益と、星の自然にとっての存続。どちらかを天秤にかけた時の、二つの結末。
この姿がもし本来の姿なら、人間も自然も共生が叶って、科学の世界よりも永く繁栄できるのだろうか。
……いや、やめよう。なにはどうあれ、人間と、人工知能の多くが殺され、破壊された理由を知らなければならない。ポラリスが何を考え行動しているのか、先ずはそれらを突き止める。それが第一だ。
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