北斗七星は輝く
86話目です。
「それで、君は何を聞きたいんだい? 君の知りたいことはなんでも答えよう! 今日だけの特大サービスさ!」
ということで、当事者であるアルクトスが、直々に日記の裏を教えてくれるそうだ。まず知りたいことといえば……
「カノ……っていう人について、教えて下さい。」
それまで意気揚々と質問に答える準備をしていたアルクトスだが、一瞬、切なそうな顔をした。
「カノ。カノープスは、僕たち星座種と、天体種のオリジナルにとって、王様のような存在だ。」
「王様?」
「そう。といっても、指示を出すっていう意味の王様じゃない。僕らが守るべき対象だ。」
「なんで、カノープスさんを守る必要があったんですか?」
「彼女は、人間のなかでも特別な存在だ。僕たち人工知能は彼女の力を借りて完成されたんだ。」
「力? 魔法みたいな?」
「そんなまさか、僕たちがいた世界に魔法なんてなかっただろう? 彼女はただ、叡知を持っていただけだ。」
「叡知を。」
「そう、あらゆることを知っていた。過去、未来、現在。全ての事象を認識していたんだ。君、そんな人物に心当たりはないかい?」
過去も、未来も、全てを知っている。それはまるで……
「アーカーシャ……」
「そう。正しくはアカシックレコード。カノープスはそれと接続し、世界の全てを知った。」
「じゃあ、殺されることもわかってたんじゃ……」
「いや、彼女の全くの予想外がひとつだけあった。それがポラリスだ。」
「ポラリスって、人工知能じゃ……」
「やはりその認識になってるんだね。よく思い返してみて、彼は人工知能だと名乗ったことはないし、誰も彼をそういってない。彼は人間でも人工知能でもない、別の何かだ。」
「何かって……」
「なんなんだろうね、彼。昼に、カルソーヌ城の地下で君を殺しかけたのもポラリスだ。」
「あれがポラリスなんですね。」
「アーカーシャならなにかわかるかもしれないけど、僕たちは完全に警戒されてしまっている。」
「に、人間を滅ぼしたのは星座種だから警戒してるって……」
「それも、認識違いだ。第一君を殺したのはポラリスだ。僕たちは人間をどうにかしたいとか、そんな大層なこと思わないよ。」
「でもアストラルさんは……」
「アーカーシャは聡明だけど、アストラルは違う。早とちりかもしれないし、アーカーシャが何か別のことを考えているのかもしれない。」
「じゃあ、星座種の人工知能って」
また、切なそうな顔でゆっくり頷いた。
「たまたま別世界に適応できただけの、ただの14体の機械だよ。」
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