岩を穿つ
78話目です。
「わぁ~! すごいね、綺麗だね!」
「綺麗……ですけど、普通の洞窟で、こんなに一ヶ所にまとまって鉱石が出来るものなのでしょうか……」
「あっ! みて! 色が変わってるよ!」
ハル君の心配をよそにティロちゃんが指差す方を見ると、確かに青かったはずの宝石が、赤、黄色、緑と様々に変化していった。
色の変化が波のように、私達のいる方から洞窟の奥へ向かって虹を作った。
「明らかに普通じゃない気がするのですが……これ、罠とかじゃありませんか?」
「えー? でも綺麗だよ? 罠じゃないかもしれないよ!」
「まぁ、奥に行きたいのははじめからですし、この通りに行くしかないですね。」
「じゃあれっつごー!」
ティロちゃんは、色が変わってからもチカチカと輝く鉱石に、わー! とか、すごーい! とか言って先にずんずん進んでしまった。
この洞窟は、誰かが作ったものなのだろうか? でも、地図には載っていたし……
「あ、あっち! 明るいですよ!」
「ほんとだ! お部屋の中みたい! いってみる?」
「そうですね。調べてみましょう。」
今までも明るかったが、炎や人工の光に似た輝きが漏れ出す石造りの部屋があった。
その部屋には木の扉があり、ひどく古びてはいたが、中は部屋のようになっていた。
「これ、なんの部屋かな?」
「すごく狭いですし、トイレと布団が一ヶ所にありますよ。衛生的に不味いですよね、これ。」
「この部屋、お城の地下牢に似てる。」
「み、見たことあるんですか、ルーノさん。」
「生きてると色々ある。」
「そ、そうなんですね。でもなんでこんなところに地下牢が、しかも一部屋だけ……?」
「この部屋の壁は扉のところ以外塞がれてるけど、横に部屋があるかもしれない。」
「横に? でも、何もありませんよ?」
「洞窟だから、簡単に埋められる。掘り返せばいい。」
「ということは……」
「壁を壊す。」
……というルーノ先輩の言葉により、牢の中から横の壁を叩き割ったり、外から土を掘り返したりと、工事? が始まった。
外の壁を掘り返していくと、牢と同じ素材の、石畳の壁が出てきた。しかし、この壁がくせ者だ。固すぎて、私が何をしても、うんともすんとも言わない。
「も、もう疲れました……手が痛い。」
「じゃあ最後にいっぱーつ! せ~~の……やぁ!」
かわいらしい掛け声とは裏腹に壁を殴った拳は、ぶつかった壁を粉々に砕いた。恐ろしい。
そしてやっとのことで開けた牢の中には……
「あ、アルスさん!」
探していた、アルスさんが横たわっていた。
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