この世界は
6話目です。
話の展開が急に変わります。
気楽に読んでください
――――瞼を透かして光が入ってくる。眩しさに意識が掬い上げられる。館の中は暗かったのに……?
「おや、目を覚ましたか。」
疑問と共に瞼を開けば私の顔を覗き込む幼女の顔が視界一杯に写し出された。先程の少女とも違う。私はいまどこにいる?
「疑問は多いだろうが、時間がない。ここと俺の話はまた次の機会だ。」
次の機会……次の機会か……いや、それよりも……俺?一人称を否定するわけではないが、この幼い見た目で一人称が俺とは、ギャップというものだろう。
「まず、この世界についての疑問。
この世界は、厳密に言えば「異世界」ではない。」
「は……?」
異世界じゃない?魔法や魔物が?そんなはず無い。少なくとも私が生きていた世界ではそんなものは存在しなかったし、あったとしてもここまで一般的ではないはずだ。
「まぁ、あの時代に生きていた人間からすれば、今のこの世界の有り様は異世界以外の何者でもないのだろうがな。」
「どう言うこと……?」
「この世界は、君が生きていた時代から3000年後の地球そのものだ。」
「3000年……?!」
「そう。君が生きていたのは西暦の何年だったかな。」
「2045年……」
「その通り。2045年のあの日、あの時に、人類は科学の到達しうる限界を迎えた。
要するに、やり終えたんだ。何もかも。」
「何をいってるのかわからない……」
「それはそうだ。仕方ない。先が見えずこれからもずっと進化し続けると思われていた科学が、あるとき突然終わりを迎えた。人間が予想していたよりも何倍も早く、世界は成長しきった。そんなこと、あの時代の誰にいっても信じないだろう。」
「じゃあ、今のこの世界は何なの……?」
「この世界はな、いわゆる「二週目」だ。」
「二週目……?」
「もし、人生が二度あるなら、君は一度目と全く同じ道を往くか?地球は違う道を選んだ。科学ではなく魔法が、世界の基盤を作るようになった。」
「そんなことが可能なの……?」
「君は神を知っているか?あれならあらゆる無理も不可能も押し通せる。」
「神って……実際に存在するの?」
「さてな、それは誰にもわからない。しかし、神は人間に制限を与えた。人間が神を越える可能性が生まれたからだ。科学は人間を神にする。神秘より生まれた魔法は、人間を魔法以上には進ませない。」
「なぜ人間は神になっては行けないの?」
「自分の席に他人が我が物顔で座るのは心地よくはないだろう?」
「じゃああの日に、人間はどうなったの。」
「みんな死んだよ。覚えているだろう?君は……鉄道自殺か。」
嫌な記憶がよみがえる。体がちぎれる感覚が思い出され、気分が悪い。
「すまない、そういうつもりではなかったんだが……
まぁとりあえず、あの日に人間は全員死んだ。そして、魔法の生まれた世界で、再び文明は明かりを湛えた。」
「全然わからない……」
「わからなくていいさ、今はな。もっと時間があるときに、俺が君に教える。
今日君が覚えるべきは、魔法の使い方さ。」
「魔法の使い方……?」
「あぁ、そろそろ時間が来る。目を覚ませば君は魔法を使う必要性に駆られるだろう。だから、今から感じることを大切に覚えなさい。」
「今から……?」
「次はまたすぐにでも会おうじゃないか。
ではな、旅人よ。君が次に目を閉じるときまで、俺も眠っていよう。」
言い終わると同時に、体が目映い光に包まれた。心臓がどくんと脈打つ。血潮にのって、不思議な力が身体中を駆け巡る。しばらくして、その力は私に言葉を告げた。
「――――回復。」
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