今はまだ昇るだけ
59話目です。
……もはや嵐のようだった、あのズートリヘスとか言う人工知能に渡された封筒の中身を覗いてみると、一枚の手紙のようなものと一枚の画用紙に描かれた絵が入っていた。
手紙らしきものの内容はというと……
『はじめまして。僕はアルクトス。人工知能の星座種のリーダーです。
あなたの集めた本や包帯は今、僕が預かっています。
もしこれが必要なのであれば、僕の元へ来てください。
僕達人工知能はあなた方と対立したいわけではありません。
護衛は何人連れてきて頂いても構いません。おもてなしもささやかですが用意して待っています。
場所は』
…………と、言うところで終わっている。これではどこにいけば良いのかすら分からない。というか、護衛だのおもてなしだの、お茶会でも開くつもりなのか、この送り主は。
でも、アルクトスというのはたしか、アストラルさんの話に出てきていたはず。人間を裏切った星座種達のリーダーらしい。対立するつもりはないと書いてはいるが、本当だろうか。さっきのズートリヘスの、態度はそう見えたが行動はそう見えなかった。
「何書いてあったの? こっちの紙は?」
「あ、まだ見てないです……絵ですよね?」
「うん。絵だけど。」
「けど……?」
「みて。」
そういって見せられたその絵には、色鉛筆で書かれた一人の人物が描かれていた。
「これは……」
「うん。」
その絵に描かれていた人物は。
「団長だね。」
団長。つまり、私のお兄ちゃんである。
「な、何でこんな絵が?」
「わからないけど、団長、こんな服持ってたっけ」
「こんな服」とはどんな服かというと。真っ白な白衣を上に羽織っているのだった。たしかに、白衣なんて持ってないと思うし、実際先輩も言うように着たこともないんだろう。
「裏になんか描いてあるよ。」
「ほ、ほんとだ。なに……?」
画用紙の裏面に隠すように書かれた小さな文字。もうひとつの手紙の伝えたいことは、
『この世界には写真がないから、記憶で描いたよ。僕達の産みの親である人なんだ。』
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