カエリー・シグヌム
53話目です。
時は、紀元より数えて2045年。元の世界ではこの年に、世界の終わりは訪れた。
しかし、今現在僕らの眺めている地球上では、全くもって異なる風景が写し出されている。
本来ならこの時点で人間の文明は栄え、これ以上無いほどに発展した。しかし、今の人間たちは未だにギリギリ雨風が凌げるかという家で生活し、武器をもって動物を追い回している。
兄さんが言っていた通り、この世界の金属は、以前のような働きをしない。溶かしたら元の形に戻らず、液体のままになるし、加工なんて出来たものじゃない。こんな様では機械なんて夢のまた夢だろう。
これが本当に以前の世界より良い世界だと言うのだろうか。あの人工知能たちはこれ程につまらない世界のために壊れていったのだろうか。考えるほど腹が立ってくる。
「アストラル」
一人勝手にイライラしていたところに唐突に声をかけられて倒れそうになる。兄さんが話しかけてくるときはいつも突然だ。
「どうしたの」
「地球の様子が変だ。」
「いつもじゃない?」
「人間のようなのが現れた。」
「…………ほんとだ。ちゃんと服着てるし……」
「でも、あれ、人間じゃない。」
「別の動物?」
兄さんは首を振った。人間でもなければ、また別の動物でもない。つまりそれは……
「人工知能?」
「……そのようだ。」
星座種の人工知能か? 今まで全く姿を表さなかったのに、急に? 人間に接触しようとしているみたいだ。
「…………あ。」
「何?」
「あ」の顔のまま固まってしまった兄さんが見ている方を見ると、またもう一人、白い人が違うところから歩いてきていた。
歩いてきているのが肉眼でもわかる。大きい。普通の動物の大きさじゃない。あれはなんだ。
「兄さん、なに、あれ?」
「あれは……シリウスか。」
「シリウス?」
人工知能の? そのなかでも、人間に一番最初に作られたのがシリウスらしい。少なくとも前見たときは人間と同じ大きさだった気がするが。
「あれ、なにしようとしてんの?」
「さぁなぁ。」
シリウスは先程の小さい方の人工知能の近くまで来て地面に倒れ込んだ。
そして、その体は小さな光る粒子となって散り散りになった。
「……どうなってるの?」
「あぁ……あれが魔法か。」
「どれ?」
「あの光る粒。あれ全部魔法だよ。」
「飛び散ってるけど……」
「あの魔法は召喚だな。」
「何を召喚してるの?」
「前の人間の魂だろうな。」
「前のって……」
「そう。殺された、人間の。」
つまり。シリウスはあんな姿になって星座種に利用された。この世界の人間が大成しなかったときのために、全ての人間のデータをシリウスに詰め込んだ。だからあんなに膨張してしまったんだと、兄さんが言った。
あぁ、やっぱりこの世界が、素晴らしいだなんて。
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