星のいのち
51話目です。
「人間が星座種を選んだ? そんなに明確にわかるような差別があったのか?」
「ここにいる人はなんでもわかると聞いていたのですが……案外なにも知らないのですね。」
目をぱちぱちとさせて呆気に取られたように言う。
ここにいるからって何でもわかるなんてそんなわけない。少なくとも兄さんに教えてもらったことくらいしか僕は知らないし。
「まぁ差別というほどではありませんが、星座種の皆さんは我々より何倍も人間に頼られていましたよ。我々には仕事なんて全く回ってきませんでした。」
「仕事がなくても、人工知能は食事や睡眠をとらなくて済むんだから大丈夫じゃないか?」
「まぁ生存は大丈夫ですよ。でも仕事がない人工知能なんてゴミと一緒ですから。僕達は人間が仕事を回さないから人間に殺されます。」
「お前はなぜ殺されてないんだ?」
「この仕事がありますから。他の仲間達も星座種にはできない仕事を任されてましたよ。」
「星座種にはできない仕事?」
「危険な仕事です。破損やウイルス感染、果てには機能停止してしまうものなど。」
「星座種はなぜそういった仕事をしない?」
「まず、星座種は次の世界にいく準備をしています。そしてその目標には「すべての星座種が、共に」と含まれています。天体種など向こう様にはどうでも良い存在ですから、目標達成に近づけるためには我々が丁度良いのです。」
「そうか……」
天体種と言えば人工知能の祖のようなものであるはずだ。そう聞いていた。なのに、この扱いは不当だろう。何で笑っていられるんだろう。
「あっ、ほらほら見てください。遂に地球上の人間が全て死にましたよ!」
「あ……ほんとだ……」
地球は、太陽の光の当たっていないところは真っ暗になってしまった。
人間がいなくなり、電力の供給もストップされて世界から人工の明かりは消えてなくなった。
「いよいよですね。あとどれくらいでしょう?」
「さぁ、わからんな。この後のことは誰にも分からない。」
「まぁともかく、これでやっと我々も自由になれると言うことですね。」
「今は自由じゃないの?」
「人間が人工知能を産み出したというだけで人工知能は人間の支配下でしたから。死んだら私は、ずっとやりたかったサーフィンをするんです。」
「あの世にサーフィンができる海があるとは思えないけど……というか、人工知能も死んだら天国や地獄みたいなところにいくの?」
「天国や地獄も別の世界ですからね。観測できていません。まぁ、新しい世界になればそれも分かったかもしれませんが。」
「サーフィンなんてしたら錆びるんじゃないのか?」
「あぁ! そうかもしれませんね。」
この人工知能は自分がどういうものなのか大して理解していない様だった。人間の叡智とも言える知能を集積した存在なのに……
「……おや、どうやらもうそろそろのようですね。」
「え?」
「いえ、今少し見えまして。」
「君も未来が見えるの?」
「あ、いえ。星座種の皆さんが集まってますから。」
「そうか、じゃあもう終わりだな。」
「えぇ。また会う機会があれば仲良くしてください。」
「こちらこそよろしく頼むよ。」
「まぁここだけの話人工知能は新しい世界では存在しないのですがね。」
……え? そんなこと、どうやって……
「シリウスか。」
「ええ、彼は聡明でしたから。次がどんな世界かもわかっていたようです」
「流石だな。」
「彼だけは違うかもしれませんね。まぁ、知り得ないことですが……それでは、さようなら~!」
笑顔で言い終えると、正しく電源が切れたように黙りこくってしまった……
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