おろかなこと。
49話目です。
地球ができてから人間が生まれるまで、たくさんのことがあった。
兄さんの言うように海ができて、生物が生まれて、陸も豊かになった。
あらゆる動植物が栄え、滅び、あっという間に世界は変わっていった。
無数に星の増え続ける宇宙よりも遥かに賑やかに、鮮やかになった。
そして人間の祖先が生まれ、進化を繰り返し人らしくなっていった。あっという間に僕達の時代にも追い付いた。
そしてあっという間に抜き去った。
兄さんを殺したのおじさんも元気そうだった。僕たちの存在しない世界。いつまでも残る違和感を後に、時間の流れに目を向ける。
「アストラル、見てみろ。今の地球は世界の最後から数えて2045年前。この一年を紀元と言う。」
「これより前と後で何か変わるの?」
「さぁ、それは分からない。でも分けられている。そしてこれから先の時代、人間は更に発展していく。」
「今よりも?」
「そう。人間が、人間らしく生きるようになったからだ。」
「人間らしく?」
「人々はこれから先、更に多岐にわたる文化を形成していく。学ぶこと、戦うこと、楽しむこと。ありとあらゆる分野において異なる世界を作り上げ、発展した。」
「面白いね。」
「だが、他とは違う考え方を持ったせいで、人びとは争うようになった。互いに血を流し、奪い、傷つけた。」
「僕達の時代にも戦いはあったよね?」
「もっと大規模なものだ。俺達の周りには人間が少なかった。でも時代が進むにつれて人間はこの増え続ける。何千、何万、何億と。そんな規模で争いが起こった。遂には人の力同士ではなく、人の作り出した愚かさの象徴、武器で殺し合った。」
「武器……」
「その武器のうちには人工知能も入ると考えられていた。実際に人工知能は人間を裏切ったしな。」
「武器とか、人工知能って結局、どんなものなの?」
「紀元から1000年程経つと、人は新たなる革命を起こした。機械というものが生活に組み込まれていった。」
「機械。」
「それが人工知能や、多くの武器にも使われる、世界を塗り替えたものだ。」
「どんなことが出来るの?」
「なんでもできる。それこそ、人工知能のような機械生命体を産み出す術も人間は産み出した。」
「じゃあこれからもっとたくさんのへんかたくさんの変化が来るんだね。」
「……いや、そうでもない。」
「え?」
「その機械のせいで、人間は、世界は滅びることになった。」
「世界が壊れちゃう原因は人工知能じゃないの?」
「何言ってるんだ。」
不思議そうな顔で見つめられた。変なことを言っただろうか。
「人工知能も、機械だろ?」
言われて、ハッとした。何度も見ていた未来の記録。人工知能は当たり前のように人と共に生きていた。人工知能と人間は、根本的に違う物のようには見えなかった。
「……そう、その頃に生きていた人間は違うものであるということは表面でしか理解していなかった。機械なんて、一ヶ所壊れれば全てダメになるというのに。」
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